スキルの樹形図

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PN:ケイガ Lv.9

所持金:835ガル

ジョブ:音楽士/適正:打

パラメーターポイント:0

スキルポイント:50

【パラメーター】

HP(体力):30(0)

MP(魔力):15(0)

STR(筋力):10(+4)

VIT(頑丈):10(+5)

INT(知力):10(+3)

RES(抵抗):10(0)

DEX(器用):150(0)

AGI(敏捷):10(0)

LUK(幸運):5(0)

【装備】

武器(左右):入門用のバチ

武器:装備不可

頭:-

胸:村人の服

腕:-

腰:村人のズボン

脚:村人の靴

アクセサリ:-

【スキル】

・対魔の調べ【打】

・渾身一打


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「——全っ然、金が貯まらねえじゃねえか……!!」


 レベリング兼雑魚狩りを始めて早二時間。

 あまりの金の貯まらなさに俺は堪らず頭を抱えた。


 途中、少しだけ休憩を挟んだけど、ほぼノンストップで戦い続けてこの成果かよ。

 一応、モンスターを倒した際に獲得した金の半分は、自動で餓狼丸の元へ振り込まれているから実質的にはこれの倍は稼いでいるが、それでもまだ千ガルちょっとしか稼げていない。


「ケイ〜、疲れた〜。そろそろ休憩にしよ〜」

「……だな。またジャイスラみたいなのが出てきても困るし——な!!」


 最後に茂みから飛び出してきた角兎アルミラージを返り討ちにして、戦闘を切り上げることにした。


「お、ラッキー。レベルが10に上がった」




 森を抜け出したところで、ようやく俺とコトは地面に腰を降ろす。


「ん〜、やっと一息つけるー!」

「意外と森の中のエンカ率高かったもんな」


 わざわざ見晴らしの良いところまで場所を移したのは、想像以上にモンスターが襲撃を仕掛けて来たからだ。

 注意を払っておけば対処できなくもないが、それじゃ気が休まるものも休まらないので、ガラッと場所を変えることにした。


「なあ、コト。休憩終わったらどうする?」

「うーん、そうだなあ……もうちょっと強い敵がいそうな所に行ってみるのはどう?  例えばダンジョンみたいなさ。レベルも上がったし、このゲームの戦闘にも慣れてきたからイケると思うんだ」

「確かに、それはアリだな。……けど、武器の耐久値持つか」

「……あ、そうだった」


 装備一覧から入門用のバチの詳細を確認する。

 装備の耐久値はゲージで可視化されているのだが、もう既に一割を切って赤く表示されていた。


 このままだと、あと数戦もすれば確実に破損するコトだろう。

 それはコトも同様だったようで、装備の詳細を確認した瞬間、ウゲッと顔を引き攣らせていた。


「一旦、グラシアに戻るか。強い敵に挑むなら武器もそれなりに強くしときたいし」

「そだねー。じゃあ、ガロちゃんのお店に行こっか」

「お前、よく店長のことガロちゃんって呼べるな」

「そう? だって、カワイイじゃん」

「まあ、分からんくはないが……」


 あの風貌のプレイヤー相手にガロちゃん呼びは相当勇気がいるぞ。

 多分、餓狼丸の性格なら許してくれるどころか歓迎してくれるとは思うが、だからと言って実行に移せるかどうかは別問題だ。


 ある意味でコトの胆力に感心していると、


「——あ、そうだ。今の内にスキルツリーっていうの確かめてみようよ」


 コトがパンと手を叩いて言う。


「ケイもさっきレベル10に上がって解放されてたでしょ?」

「ん……ああ、そうだったな」


 狩りの終わり間際、アルミラージを倒して表示されたバトルリザルトに[スキルツリー機能が解放されました]なんて一文が書かれていたのを思い出す。

 メニューからスキルツリーを選択すると、真ん中に円形のアイコンが光る画面が表示された。


 真ん中の光るアイコンからは三方向に線が伸びていて、その先にはまた別の円形のアイコンがある。

 これらのアイコンは光ってないが、真ん中のアイコンを弄れば光るようになりそうだな。


「へえ、これがスキルツリーか」

「なんか樹形図みたいだね。とりあえず真ん中の触ってみよっか」


 光るアイコンをタップすれば、また別の画面が表示される。

 画面の上部には[獲得するスキルを選択してください]とメッセージがあり、その下にはスキル名らしきものがズラッと並んでいた。


「わっ、すご! これ全部スキルなの!?」

「そうっぽいな。にしても……多すぎだろ、これ」


 ザザーッと十秒近くスクロールしてようやく一番下までこれたぞ。


 全ジョブ共通スキルとのことだが、だとしてもあまりに量が膨大過ぎる。

 カテゴリを切り替えれば音楽士専用のスキル一覧が表示されたが、それでも全ジョブ共通の三分の一くらいの数があった。


「これだけ多いと何から手をつければ良いのか分からなくなるね」

「ああ、マジでそれな。でもまあ、試しに適当に一個つけてみようぜ」


 言って、俺は音楽士カテゴリにあるスキルの詳細を確認していく。


(ふーん……現時点だと習得できるスキルは限られてるのか)


 スキルポイントの要求値だったり、それ以外に条件があったりとで、全部が全部最初から習得可能というわけではないみたいだ。


「んー……どーれーにーしーよーかーなー。ケイ、どれにするか決めた?」

「まだ。そういうコトはどうなんだ?」

「アタシもまだ……あっ、いいの見つけた! これとかどうかな!?」


 コトが見せたスキルは『魔復の旋律』——自身を含めた範囲内の味方のMP回復速度を高めるというものだった。


「うん、良いんじゃねえか。俺もコトもどっちもガッツリMP使うしな」

「でしょ! じゃあ、これで決定〜!」


 確定させると、まっさらだったアイコンに八分音符のマークが刻まれる。

 同時に真ん中のアイコンと繋がっていた三つのアイコンが光を帯びた。


「おおっ! 頭の中にメロディが流れた。しかもスキルの説明文に楽譜が表示もされてる! ふんふん、なるほど〜」


 言いながら、コトはインベントリからギターを取り出し、楽譜の通りのメロディーを鳴らしてみた。


 ギター経験者であれば即席で弾けるであろう簡単なアルペジオ。

 どこか幻想的なフレーズの最後の一音が響いた瞬間、HPバーの真下に栄養ドリンクみたいなアイコンが現れた。


「……なるほど、これがMP回復速度アップかあ。この感じだとケイにも効果が適用されたっぽいね」

「みたいだな。折角だ、街に戻るまでにどれくらい早くなったか検証してみるか?」

「うん、そうしよ! じゃあ、ケイも早いとこ何のスキルを取るか決めてね!」

「ああ、すぐ決めるからもう少し待っててくれ」


 そして、暫しの間、画面と睨めっこした末に俺も習得するスキルを選んでみせた。

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