008.罠と宝箱のロマン

「罠といえばどんなのがいいかな」


ということでルビィと罠をDIYすることに。


「まずはやっぱり落とし穴かなー」


「落とし穴ですか?」


まだ一階層しかないから下の階層には落とせないけど、それでも便利なことには間違いない。


「ということで、人が乗ったらパカッと開くような仕組みって作れる?」


「そうですわね、自動式と手動式が考えられますけど、どちらがよろしいでしょうか?」


「手動式なんてあるんだ」


「はい、主様が魔力を流すと仕掛けが作動して穴が開く仕様ですわね。こちらは遠隔からでも起動できますわ」


「それは便利だね。でも複数管理するには手間がかかりすぎるかな」


「そうですわね、冒険者を落とすのでしたら自動式の方が手間がかからないかと思われますわ」


「それじゃあ、自動式の方も教えてくれる?」


「はい、自動式は魔力で冒険者を感知する仕掛けですわね。主に魔力反応を感知する方法になるかと思われますわ」


「そんなことできるんだ」


「具体的には冒険者が一定の位置を越えると発動する、といった形ですわね」


「それなら色々悪さできそうでいいね。なにか気を付けた方がいいこととかある?」


「どちらの方式でも、あまり規模を大きくなさいますと、仕掛けの耐久度が問題になるかと思われますわ」


まあ、数人まとめて落としたいならその分の負荷を支えた上で動作する仕掛けを考えなきゃいけないしね。


「それなら落とし穴よりも宝箱に罠仕掛けるとかの方が実装は楽そうかな」


宝箱に罠はダンジョンの基本だよね。


「宝箱……、ですか?」


「えっ、もしかしてこの世界だと宝箱って通じないん?」


でも冷静に考えてみれば、ダンジョンの中にお宝が入った箱があって罠が仕掛けられてるのは不自然か。


「んじゃあまずこっちの世界の人に宝箱のシステムを理解してもらわないとだなあ。ルビィ、宝箱っていうのはお宝が貰えるけど罠にかかるかもしれないっていうドキドキワクワクシステムね」


あっちの世界じゃゲームでテレポーター食らってもそういうもんだって納得されるけど、こっちの世界でいきなりそれやったらマジギレされそうだ。


あとは壁から槍が飛び出してくる罠とか坂道の上から岩がゴロゴロ転がってくる罠とか乗ったら自動で移動させられる床とか作りたいけど、一先ずはルビィと一緒に試行錯誤かな。宝箱はそもそも箱を作ってからだね。


「んじゃ最初は自動式で落とし穴作ってみようか」


「かしこまりましたわ、主様」


ということで、目の前に四角い穴を生成してその上に蓋を被せてみたんだけど、足を乗せた時点で踏み抜いてしまった。


「おわっと」


そのままバランスを崩しそうになった俺をルビィが支えてくれる。


どうやら壁や床から分割すると結界の適応外になり強度を保てないらしい。


よく考えたら床は土だから同じ素材で薄い板を成形したら強度はお察しなのか。


「一応これでも落とし穴としての機能は果たせそうですわね」


「たしかに。でも利便性を考えたら遠隔で再利用できるようにしたいね」


理想はパカッと開いて自動でまた戻ってくれる感じ。


なんだけどこれが結構難しい。


とりあえず、魔力探知で蝶番の留め金を外してパカッと開く仕掛けと、そのまま魔力駆動で元に戻す仕掛けまではできたんだけど、まだ実用には問題があった。


「まずはやっぱり天板の強度だね」


床がローラーで整地した土のような見た目だから、そこに馴染ませようとすると必然的に同じような土で成形することになって強度に問題が残る。


一応厚めに成形して固めると強度問題はクリアできたが、今度は床と天板の見た目に差が生じてしまった。


「これ、バレるかなぁ」


「どうでしょうか、ここに罠があると知っていなければ気付かれないかもしれませんが」


まあ暗いし、視界の高さからならワンチャン気付かれないかもしれない。


「逆に考えて、ある意味これくらいの仕掛けの方が冒険者向けの罠にはいいのかもしれないかな」


あんまり巧妙すぎて毎回引っ掛かるような落とし穴は冒険者視点だと嫌すぎるし、基本油断していなければ回避できるくらいで丁度良いのかも。


「視認性の他に、大掛かりにするとその分の魔力が消費されるという問題もありますわね」


天板が厚くなると必然的に元に戻す仕掛けの魔力も大きくなるっていう問題。


まあこっちはあんまり落とし穴多用しなければ負担になるほどじゃないだろうけど。


「いっそ通路を全面石造りに改装できたら視認性と強度の問題両方解決できそうだけど、大規模改装にはまた魔力かかりそうだから今はダメだね。とりあえずこれで冒険者の様子を見てみようか」


「はい、主様」


というわけで、そのあともルビィと暫くの間DIYを楽しんだ。







ダンジョンから一歩出ると、その先には街道が左右に伸びているのが見えた。


そのままバサリと羽ばたくと、すぐ近くにあった地面がぐんぐんと離れて遠くなっていく。


ちなみにこれは俺の姿ではなく、使い魔として召喚した梟の目を通して見ている光景だ。


今は夜だけれど、夜行性の目はライトを焚いているかのように自由に見える。


俺もダンジョン内なら暗くても見えるというか何がどうなってるか把握できるんだけど、梟の目は直接明るく見えるのでまた別の感覚だ。


ということで羽ばたく夜の景色を望んでいると、木々の間を抜けて平原の向こうに壁が見えた。


左右に続く壁。


高度を上げてそれを上空から眺めると、その先には街があり、奥にはかなりの大きさの城が見えた。


なんか、めっちゃ立派なんだが?


そもそも城下町がある時点で防衛のための拠点としての城というわけじゃないだろう。


つーかあれだね。


普通に王城ってやつなんじゃないのあれ。


お城の方は夜なのに普通に明かりが灯っているし。


なんかすげえ王城!って感じだもん。


うーん、うん。


少なくとも、この場所でダンジョン運営するのが滅茶苦茶めんどくさそうってことはわかった。


どうしてこうなった! なんかめっちゃ近いし!




それから何度か観察してみたんだけど、とりあえず王都(仮)に入るには1人につき銀貨1枚あればいいらしい。


ちなみに積み荷がある場合は通行料の他に別途関税がかかるっぽい。


城門が開くのは朝から昼過ぎまで。


それより遅くなったら城門の外で一泊野宿。


ただし身分証?があれば夜まで通れるっぽいかな。


とりあえず、最初の侵入者の所持品で銀貨が数枚あったから中に入ることは出来ると思う。


問題は、ダンジョンマスターになった自分が入ってもバレないかってことなんだけど、これは謎。


そもそも分類が謎な生命のダンジョンマスター以上に、使い魔のルビィを連れていけるかっていうのも謎なんだけど。


それからしばらくダンジョンの周囲を観察する。


ダンジョンの真上は山になっていて、結構な広さの森が広がっている。赤マナと緑マナ両方出そう。


とりあえず外に出れば木材には困らないかな。運搬方法はなんかいい感じに考えないとだけど。


その森の中で、魔物を狩っている冒険者らしきパーティー一行を見つける。


第一被害者、君に決めた!




次回、可哀想な冒険者たち。

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