【05】鈍色の祭典(電咲響子) 総評


【05】鈍色の祭典(電咲響子)

https://kakuyomu.jp/works/16818093075459841661


⬜️全体の感想


・タイトルについて


>鈍色の祭典

鈍色のチョイスはいいとして、祭典は違和感。

本編を読んだ後も「どこに祭典の要素が……?」と首を捻ります。

屋上バトルだとしても、バトルシーンはカットされてるし。


・サブタイトルについて


>完璧な人形の空虚な感情。

本編読了後見ても、さっぱり意味が分かりません。

今作のカオスぶりを象徴してるとは言えます。


・あらすじについて

>修理者の皮を被った殺し屋は排敵に奔走する。


間違ってはいないが、本筋でもない感。

まあ本筋が意味不明なので、一周してこれでいい気もします。


・文章について


とりあえずカッコだけつけている、いわゆる中二文章ですね。

最初は真面目に読んでいましたが、内容の薄さとあいまって、途中からはネタとして読んでいました。


学生さんならこういう時期もあるよね、という感じですが、そうでないと聞いていますから、がっつり説教しておきましょう。


小説というものは、まずもって読者に物語を伝え、楽しませるために存在します。そのための手段が文章であり文章力。最優先されるべきはスムーズな情報の伝達です。小説はラジオのようなもので、作者の脳内で生まれた物語を、文章を媒介して読者の脳内で再構成します。表現方法は様々ですが、大前提はそれです。


しかるにこの小説は、作者の自慰的な描写ばかりが先に立ち、肝心の世界観や主人公を取り巻く説明に欠けます。描写をあえて削り、読者の想像に委ねるという手法は確かにありますが、それは確固たる作者の世界観が存在し、文章的に高度な計算をした上で成立するもの。

今作ではどちらもなく、むしろ読者の想像していたハードボイルド世界を、幼稚な展開や台詞がブチ壊しに来る最悪のパターンです。とくに中盤以降の文章の乱れ、チープ化は目を覆わんばかりでした。


「オレの考えた最強の造語」の前に、まず読みやすい文章の書き方、言葉の選び方を考えてください。その手のお遊びは、それをクリアしてからです。文章は正直なので、背伸びはすぐ見抜かれます。


・内容について


ながら感想で突っ込み飽きたので多くは語りませんが、物語の体を成してません。


主人公は「修理屋を装った殺し屋」という設定ですが、


・金がないので家の鍵を売る

・自身を金の亡者と言いながら悪党だけ選んで殺す

・地上から逃げて来たのにビル屋上を選んで大立ち回り

・人並みに会話する自立型ロボに口頭指示

・実は魂を持つアンドロイドを作るのが最終目標


などなど。穴が多すぎてスポンジボブ状態です。


他にも「奴ら」って結局何だったのかとか、たまに思い出されるだけの友人とか、説明不足というより何も考えてないとしか思えないような部分が目白押し。かっこいい要素を適当に詰め合わせた世界観という疑いが濃厚です。


・ストーリーについて


こういうのはストーリーとは言いません。

思いついたカッコイイ場面を並べて、小説ぽく繋ぎ合わせただけです。

テーマもへったくれもありません。


・アドバイス回答について


>特に意見が聞きたい部分は、戦闘描写のカットについてです。この作品のテーマにおいて不必要なものだと判断し捨てた箇所。

>"「梶野ならこう書く」"としての具体例、すなわちそれを記すのか記さないのか、に関しての意見を聞きたい。


必要かどうかについては、そりゃあ必要でしょう。

「実は殺し屋だった」と明かされるのに、殺したり戦ったりする場面がなければ、口で言ってるだけに見えますから。

私なら間違いなく書きます。短編に収めるなら、他の不要な要素を削ってでも。


ですが、電咲さんの場合は、書かない方が正解です。

あえて断言しますが、貴方にバトル描写はまだ無理です。

ビームをぶっ放したり弾をばら撒くだけなら別ですが、私はそういうのはバトルと呼びません。


ちゃんとしたバトルを描くには、アクションシーンなど難しい描写をカッコよく、かつわかりやすく読者に伝える文章力が必要です。ここまで読んで、貴方にそれが足りていないのは自明の理ですから。



⬜️総評

・ズバ抜けた中二性。後半はもはやギャグの域。

・「好きなシチュ」のパッチワークで、一貫性皆無。

・ハードボイルドの皮を被った三文アニメ


読む前の印象からは、はっきりと予想外でした。

ここまで読んだ中では、ダントツのワーストですね。これを(下に)越えて来る作品が、この先現れるか不安になるレベルです。


多くを語っても響かない気もしますが、あえて言うとすれば、

「何を一番描きたいのか」という大元から見直されるべきではと。

それが「かっこいい場面」なら、何が「かっこいい」のか、改めて再考されるべきだと思います。


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