【05】鈍色の祭典(電咲響子) 読みながら感想
【05】鈍色の祭典(電咲響子)
https://kakuyomu.jp/works/16818093075459841661
第五回となりました「じっくり感想」。これで六分の一ですよ。
早起きして出勤前に可能なだけ進めるスタイルも取り戻しました。
やはり修羅場は人を活性化させます。
後の反動は怖いですが、まずもってゴールが最優先。
今回の参加者は電咲響子さん。
作品は「鈍色の祭典」ですね。
ジャンルはSF短編。長編が続いたので、ちょっと気持ちが楽です。
物語が終わらない状態だと、どうしても感想も歯切れが悪くなるので。
まずは、電咲さんの参加時コメントを確認しましょう。
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この度は「本音感想」ということで、自身の最新作を応募させていただきました。
:作品名『鈍色の祭典』
特に意見が聞きたい部分は、戦闘描写のカットについてです。この作品のテーマにおいて不必要なものだと判断し捨てた箇所。
"「梶野ならこう書く」"としての具体例、すなわちそれを記すのか記さないのか、に関しての意見を聞きたい。
学生だったのは遠い昔なので、どのような辛辣な感想でも大丈夫です。よろしくお願いいたします。
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ふむふむ。言葉遣いからも感じ取れましたが、かなりベテランのご様子。
「戦闘描写のカットについて」とは、「削ってよかったのか否か」の判断ということでしょうかね。それとも「戦闘描写を加えるならどう書くか」?
カット=映像の一部の意味なら後者かもですが、まあ両方書きますか。
ぶっちゃけ梶野はSFの評価は苦手です。
SF畑の先輩がいたわりにはハマらなかったんですよね。基本的な名作程度は数作読んでいますが、どうにも周囲のSF好きと意見が食い違うことが多くて。
最近の自己分析では、これは評価基準の違いだろうと結論しています。
SF好きのそれは設定や用語のSFらしさ、いわゆる「センスオブワンダー」であるのに対し、梶野はあくまで物語性に重きを置いているのではないかと。「SFらしさ」が
メインかサイドかという話ですね。
要するに梶野は「面白いSF」を評価するということです。重厚なダークファンタジーや文学にも共通するところですが、その部分に偏りが出る可能性があることは感想の前に触れておきます。SFファンならぬ門外漢の意見だと考えてお読みください。
それではヘビィメタルをBGMに、「じっくり感想」開始します。
⬜️読みながら感想
二読後の感想を、読みながら書きます。
>△▼1△▼
短編で話数は一話ですが、細かにカットを分ける方式ですかね。
悪くないと思います。
>こいつからは嫌厭いやな臭いがする。だが、地上うえの捜査を逃れ地下街アンダグラウンドに潜む私に、それを咎とがめる権利はない。
ルビを多用するスタイル。
SFだとよく見られる奴ですね。雰囲気があってよいかと。
>「へえ! 機械音痴の俺からすりゃ、なんもわからん。が、まさか殺戮型奉仕機械スレイロイドを直せるとはな」
どうもこなれない台詞。
私なら
「まさか殺戮型奉仕機械スレイロイドを直せるとはな。機械音痴の俺からすりゃ信じられねえ話だ」
>私は客の要望に応こたえ、客はそれに対価を払う。商売相手を選ぶ必要はない。理由もない。この掃き溜めに存在するのはカネのやり取りのみ。
ぶっちゃけ資本主義の国ならどこでも似たようなものなので、不要な説明。それより「アングラ」がどの程度の環境なのか、貨幣は地上と同じなのか、流通は成立しているのか、地上相手に商売をしているのか、などが気になります。
>ここ地下街がそんなに魅力的か?
何度か出てきますが、どう考えても[ルビは
>真上うえに立ってるビルのほうが、よっぽど店を構えるのに相応ふさわしいとは思わないのか?」
これもらしからぬ台詞。地下の住人とは思えません。
詮索ならわかりますが、これは気遣いに見えます。
主人公の方がよほど荒んでいます。
>
どうも漢字ルビが気になりますね。
私なら「やつ」「ヤツ」と開きますが。
>互いに目を合わせることもなく、取り引きは終わった。
やり取りを読むに、目を合わさなかったのは主人公だけという感じがします。
>△▼2△▼
>椅子に腰かけ、瞳を閉じ、ゆっくりと思考を巡らせる。
短編なら削っていい文章です。
>
超高層ビルは現代でもあるので、未来の話で「技術の粋」と言われると違和感があります。これが「成層圏まで届く高層ビル」とか「軌道エレベーター」ならわかるんですが。
逆にビルが舞台装置必要なら、「過去文明の遺物」的な説明の方がよい気がします。政治の停滞や腐敗も匂わせられますし。
>汚濁おだくにまみれた地下街アンダグラウンドが存在するとは奴らも知るまい。
世界観が共有されていないのでよくわかりませんが、流通が存在する規模のアングラ世界が「知られざる」とはちょっと考えにくいです。もしくはその「奴ら」のアンテナがよほど低いのか。誰か知りませんが。
>研究者としての立場を明確に築いていた。
明確に、が謎。
[研究者としての立場を築いていた。]
>私、いや、私たちが抱いだいている野望。
研究チーム的な?
>それが権力者どもには気に入らなかったのだろう。謀略の髄政府の意地を駆使して社会から追放された私たちに選択肢はなかった。ただひとつ、地下街に逃げ込む以外には。
この権力者=奴らなら、それこそルビを振るべき。
権力者なら、ますますアングラの存在を知らないはずがないと見ます。
>
うーん、ここまで捻ると、逆にかっこよさを失いますね。
過ぎたるは及ばざるがごとし。
>されど私の目的を果たすにおいて歪いびつながら整った環境だ。
「整った」より「十分な」の方が適切。
>志半こころざしなかば散った友あいつのために。
あれ、研究チームじゃなく友人のためでしたか。
いや、共同開発していた友人的な関係なのかも?
>突然の来客に対する備えは充分にしているが、あまりにもタイミングが悪すぎた。
いや、してないと思う。
>「鍵がかかってなかったんで、つい入っちまった。だが解げせん。あんたが棲家ねぐらの鍵すら売り払うほどカネに困っているとは到底考えられん。……何かあったのか?」
>「こいつを創るためだ」
意味がわかりません。
察するにアングラって相当治安悪い場所なんですよね?
腐臭が当たり前で殺戮機械が出回ってるような。
自衛は当然ですし、家の鍵より前に売るものがあるのでは?
そのくせ、「備えは充分にしているが」とか、考えが足りない以上の推察が出来ません。
>私の指が示した先には
そんなルビはいりません。はっきりと邪魔です。
ここまでそんな名前は出てきてないんですから。
>「新作だ。が、新作じゃない、とも言える」
>「そうかい。よくわからんが、
本当によくわからん。
科学者にあるまじき歯切れの悪さ。
>俺がこんな僻地まで足を運んだのは、当然ながら商売のためだ
「政府の見栄で作られた超高層ビル」の真下なのに、僻地?
>また
熟語を見ても、何を意味するのかよくわかりません。
「理」とは何の理なのか。人間なのかマシンなのか。
造語なら想像可能な文字にするか、説明を加えてください。
>「いや、今回は違う。こないだまでここ地下街のあちこちで廃理者どもが暴れまわっていたのは事実。あんたがあらかた片付けちまったのも事実。ただ、最近そんな話はとんと聞かねえ」
台詞が冗長。
「地下街で暴れてた廃理者どもは、あんたが片付けちまったろ。別件だ」
>「ふう。あんたの働きっぷりからして、たんまりカネ持ってるもんだと思ってたんだがなあ。ま、ちょっとばかりサービスしてやるさ。いつもの半値でどうだ」
なんでみんな、異常に人がいいんですかね?
私なら「借金してでも買う価値があると思うぜ」くらい言わせますが。
そもそも情報屋が、彼の言う僻地まで情報を売り込みに来る時点で道理に合わない展開です。
情報は欲しい側が求めに行くもので、売りに行く場合はよほど上得意の相手でしょう。彼の口ぶりからそうは見えません。というか情報屋なのに、そんなことも知らんのかと。
>△▼3△▼
>その紙に書かれていた文言は断片的なものだった。
「文言」より「情報」が適切。
>かつて私に
どれもイマイチなルビですねえ。
SFなのに任侠ものみたい。
>奴らの異常異様行為なしごとは総じて惨澹さんさんたるものだった。
「なしごと」なる言葉は調べてもみつかりません。
言わんとするところはわかりますが、「しごと」でいいかと。
「惨憺」は「さんたん」です。
意味合いも微妙に違うと感じます。
辞書で引くと、
[いたましく、見るに忍びないほどであるさま。「―たる成績」]
なので「仕事がへたくそ」のように読めてしまいます。
この場合は「凄惨」が適切かと。
>だから私は依頼を受けたのだ。
>効率よくカネを稼ぐためには、すべての依頼を満遍まんべんなく受け入れることが最善ベストなのかもしれない。だが、それは――
この人、冒頭で「商売相手を選ぶ必要はない。」とか言ってた気が……
>「ただのケチな情報屋だ。気にするな」
割引してくれる相手に、なんてことを!
むしろケチなのは主人公の方です。鍵くらい買え。
>「私はあの方に善よきものを感じません」
アンドロイド?が善悪を語る違和感がすごい。
>「当然だ。彼奴きゃつの頭にはカネしかないからな」
前半は地下街に染まった感出してたのに、途中から「オレだけは正義」みたいなこと言い始めた。
>「ご主人様。あなたは私を創るために多額の金銭を用いたと、先ほど聞きました。それはいったい」
>なるほど。起動前知能記入インストールから漏れていたのか。
いる? その情報。
>……同類だよ。あいつも私も。しょせん自分自身の目的のためには手段を選ばないカネの亡者ということだ
カッコつけて自虐してる風にしか見えません。
>私はリクドに連絡し、情報ネタを買った。
すぐに呼び戻されたリクドに同情。
即決する決断力もないのか、この主人公。
>△▼4△▼
>私は神為的完全殺戮型奉仕機械エクストラスレイロイドを起動する。それは地下街アンダグラウンドの闇市場マーケットで流通している殺戮型奉仕機械スレイロイドの最上位互換。おそらく私だけにしか創れないであろうその殺人機械
お、おう。
>今回は『アヤ』と名付けた。なぜなら命令する際に便利だから、だ。
これも意味不明です。
戦場で消耗する兵器に名前をつけるメリットは、普通に考えれば薄いです。次々名前を考えないとですし。研究段階で愛称で呼ぶとかならまだわかりますが。
>「いつにも増して厳しい仕事となるだろう。敵の数は膨大だ。基部を担になう作戦は私が考える。まずはその作戦を実行しつつ、戦況の変化に伴ともない追加で指示を出す。万が一にも聴き逃さぬよう、音声感知に焦点リソースを割さいておけ」
敵の数が膨大とわかってるのに、各個撃破は考えないんですかね?とかも思いますが、それ以前に。
まさかと思いますが、主人公が指示を出すんですか?
自立して会話するAI乗っけた、最高のスレイロイドなのに?
音声感知って、いちいち口で言うんですか?
主人公も戦場に行くってことですか?
現代でさえドローン戦とかになりつつあるのに?
何だかもう、突っ込みどころ満載で開いた口が塞がりません。
> その直後、激しくひび割れた言げんが飛んできた。
>「私も往いかせてください!」
> E-0614の言が飛んできた。
「
「飛んできた」も繰り返してるし、ここに来て文章が一気に雑に。
>「お前は私の日常生活をサポートする存在だ。そのために創った」
鍵売るくらい金ないのに?
>「さあ。往こうか、アヤ」
>「はい。ご主人様」
ハードボイルドぽく始まったのに、いきなり三文アニメ感。
>△▼5△▼
>私の棲家ねぐらの真上うえに立っているビルの屋上。それこそが、今この刹那を奏でる戦地であり戦場であり戦域だった。
はあ────っ!?
主人公、地上政府の追跡を逃れて地下に来たんですよね?
相手はよくわかりませんが、ヤクザ的なアウトローなんですよね?
双方とも、そんな場所で戦う理由が皆無と言うか、そこだけは絶対選ばない場所なんですが。
警視庁や国会議事堂の前でドンパチやるくらいあり得ないんですけど。
>「貴様がどれだけ地下街アンダグラウンドで嫌悪されていると思う? この俺への不意打ちが成功したのも、どこぞの情報屋にもらった情報ネタが真性ほんものだったため、だろう? ふん。そいつの腕の良さだけは認めよう」
台詞が無茶苦茶です。
なんか北斗の拳に出てきそうな頭の悪さ。
いや失礼でした。北斗の拳に。謹んで謝罪します。
>かつて、私とリタに組織の頭を殺トられ、その死体の前で泣いていた男、キグスがしゃべる。
泣いてたて。
そもそも現場にいた関係者を、なんで生かして返してるんですかね。
>「それがどうした。わざわざ地上うえに逃げてまで集めた烏合の衆に怯える馬鹿がどこにいる」
超高層ビルの屋上まで追いかけて来た馬鹿ならここにいる。
>「地下街において、殺し屋の命はとても軽い。使い捨てありきの存在だ。それゆえ、長らく生き残っている奴らは全員例外なく擬態している。そう。貴様のようにな」
殺戮マシン売ってるのに、擬態も何もないでしょ。
言われて驚かない程度に似たようなもんです。
>「それがどうした。数分も経たたないうち、お前らはこの世から消える」
口を開くほどにキャラが陳腐になるので黙っててほしい。
>私がそう言い終わるや否や、眼前に展開されていた予想内の戦力に加え、新たな予想外の戦力がぞろぞろと姿を現した。
>「ふん。こればかりは例の情報屋も知らなかったらしい」
>「だが。そいつらは全部旧型スレイロイドだ。私の新型エクストラスレイロイドに勝てるとでも?」
>「ほう。ならば物量で圧おし潰すまでのこと!」
>「さあ。往ゆくぞ、アヤ」
……もう読むのやめていいですかね?
>△▼6△▼
>それは他の誰でもない、私とアヤが完遂せし為業しわざの成果。
ここに来て物凄い中二感。もちろん誉めてません。
>「はい。そして私が負った傷は修復不可能。そういうことですね」
>「その通り。そして私は次のきみを創る。何か不満が?」
>「ありません、ご主人様」
うおお、寒イボが……!
>△▼XX△▼
>そして今、地獄に堕ちる瞬間ときが近づいていた。
「奴ら」とか友人とか、どこいったんですかね?
>△▼7△▼
> !!ガガンッ!!
ついに擬音がそのまま出て来た。
ハードボイルド終了のお知らせ。
>
お願いですから、「!!ガガンッ!!」とか書いた直後に、そんな表現しないでください。お腹痛い。
>「おおおお…… てめえの言動、ずっと気に食わなかったァ! そんでもって、てめえのその容姿ルックスはずっと気に入ってたんだよォ! だからよ、俺様の殺戮型奉仕機械スレイロイドにその生皮、張りつけちゃうよォ!」
パトラッシュ、ぼくもう(突っ込むのに)疲れたよ……
> 例の常連客奴がのたまう。
> 例の常連客兇がのたまう。
なぜ繰り返す。
>「――なるほど。お前は私の偽業なりわいにかこつけて、私の命タマを狙っていた、というわけか」
なるほどとか言われても、こちらはワケワカメです。
>そもそも鍵などなく常時開いている扉を壊す行動自体が異常だ。
そもそも鍵などなく常時開いてるのが異常だ。
>「ご主人様!」
> E-0614が私と奴の間に飛び込んできた。
陳腐ここに極まれり、ですね。
>△▼8△▼
>E-0614の腕から迸ほとばしる紅重奏衝撃波ブラッディショックウェーブを
ここ、最高に笑えました。
ギャグとして書いてるなら、今作で唯一評価できる部分。
> だが、それが訪れる前に友あいつとの約束を果たすことができた。
お、友人忘れられてなかった。
伏線の開陳ぽいですが、もはや耳に入って来ません。
>△▼9△▼
>愛用の安楽椅子に横たわり、瞼まぶたを閉じる。
鍵の前に椅子を売れ!
>「き、機械に…… 魂ココロを…… 宿すことに」
ううん?
主人公、研究者を装った殺し屋って設定ですよね?
なんで最終目的がこれなんです?
>「E-0614は、製造番号などでは、ない…… 私の、私の大切な――」
知らんがな。
>「カエデ様!!」
知らんがな。
>△▼△▼
>ああ。
>頬を伝う水滴が、ぽとり。
なんというか、ナルシストの極みと言うか。
5000字がこんなに長く感じたのは久しぶりです。
ちょっと言葉がありませんね……もちろん感動とかではなく。
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