【04】魔導古書店店主の偏愛と憂鬱(ヨシコ) 総評
【04】魔導古書店店主の偏愛と憂鬱(ヨシコ)
https://kakuyomu.jp/works/16817330653896544936
⬜️全体の感想
・タイトルについて
タイトルはいいと思います。
読む前には、かなり期待していました。
ぶっちゃけ、タイトルが一番よかったくらいです。
ただ、読み終えた後に見直すと、偏愛はともかく憂鬱は作中になかった気が。
陰鬱ってのも外見の話ですし。憂鬱な要素ありました?
・文章について
短編でなく長編向けの書き方をされているという印象です。
説明が過剰で、全体的に不必要な情報が多いと思いました。
長編ならよいですが、短編はストーリーの鋭い切り口が勝負どころです。
四コマ漫画が簡素であるように、短編は出来るだけシンプルに書くことを心掛けるべきかと。
例えば、冒頭の店の描写は、私は必要だと思います。舞台説明と雰囲気作りに必要ですから。
ですが店主の描写は正直くどいと感じましたし、アクションや外見を逐一行を設けて説明する必要もないと考えます。
連想できる描写は削り、読者の想像に委ねる。委ねるのに必要な情報のみ、厳選の上で提供する。
これが短編の文章のコツです。長編の冗長化を防ぐテクでもあるのでお勧めです。
後は、描写が多い割には必要な情報が抜けていたり、何が伝えたいのかわからないという場面が何度かあったのが気になります。
難しく書こうとして、かえって意味不明になっている感じがします。
まずは読者に伝えることだけを考えてシンプルに書き、それを邪魔しない範囲で装飾を肉付けしてみてはいかがでしょうか。
いずれにせよ、読者視点は徹底して意識すべきです。
読んでいて、かなり置いてけぼりを喰らわされたので。
・内容について
ぶっちゃけ、評価はよろしくないです。
・文章のテンポと内容が釣り合っていない
序盤である程度想像していましたが、文章が重い反面、内容が薄いので、打ち切り漫画のようです。
これが長編の外伝短編とか、漫画の単行本巻末の2Pおまけ漫画なら理解できますが、単体の作品としてはいただけません。なまじ描写が多いので、余計にボリューム不足に感じます。
・オチがギャグ
意外性を狙ったのかもですが、むしろ肩透かしになっています。
完全にシリアスで通すか、ギャグに転調するにせよもっと序盤(男が登場時)からにした方がスムーズに読めるかと。店主のやりとりにユーモアを持たせるのも手です。
洗濯物乾燥魔法が、何のオチにもなっていないのもマイナス。
ここでどっかんと炸裂していれば多少取り返せたと思いますが、全然でした。
そもそもこのオチ、偏愛とも憂鬱ともまるで無関係です。
ギャグオチにせよ、偏愛がエスカレートした上で客が逃げ出す展開は死守すべきかと。テーマから逸脱しているので、投げやりなオチに感じるのです。
・偏愛というテーマ
このテーマそのものは悪くない。むしろ面白そうです。
ですが、テーマに対する深掘りが足りていない印象。
この店主は魔導書に何を思い、何を大切にしているのか。
普段から魔導書にどう接し、魔導書の何に価値を見出しているのか。
ここら辺を煮詰めないまま、「時間を対価」という話が出てくるので、「なるほど偏愛だ」と飲み込めきれない自分がいます。
ちなみに「時間を対価」というアイデア自体は悪くないと思います。
もらった時間をどう使うのかを煮詰めれば、面白い話が書けそうです。というか思いつきました。
ただ現状では、偏愛との相関性が薄い気がします。何を考えてこの条件をつけたのか見えないというか。
著者がそんなこと望むとは到底思えませんし、ましてや武器的な魔導書という設定なんですよね? いわば実用書で、その目的で本単体で起動できるようにされてるわけで。制作意図を店主が完全無視してるとしか思えません。
まあこれも偏愛かもですが、私的には共感できないので、「売りたくないのでハードル上げてるだけでは?」と勘繰りたくもなります。
これが「本来、魔導書は研究書だが軍事転用もできる。だがそれは著者の望む形ではない。それを汲んで店主は安易な武器扱いではなく、本としての理解を客に求める」とかなら、大いに共感するんですが。おっとついアドバイスが。
・店主のキャラ
ホラーなら、この「とにかく正体不明」という設定でいいですが、ギャグとか会話にノリを入れるタッチで話をまとめるなら、読者が外見を想像できる特徴的なキャラの方が合ってる気がします。現状、イメージが固まらないキャラなので。
わりとファンタジー作品なら登場させやすい設定ですし、シンボリックなキャラにもしやすいですしね。ファイヤーエムブレム(ゲーム)のアンナみたいな感じです。
⬜️総評
・タイトルはいいが、内容と矛盾。
・装飾過剰な文章。短編には重い。
・ギャグオチで拍子抜け。テーマの一貫性を。
長編が得意で、短編は不慣れという印象を持ちましたが、どうでしょう。
アドバイスしないと突き放してるようで逆に不安ですが、ご希望とあらば千尋の谷に突き落とすのもやむなしです。(なんだかんだアドバイスしてる気もしますが)
「対価は時間」は面白いアイデアなので、再利用もありだと思います。
いつかこのネタで私が小説を書いたら、「この野郎パクりやがって」と笑ってください。まあファンタジーじゃないので、似ても似つかないとは思いますけど。
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