第17話 猫娘VSホーガン(その1)
最初から戦う参加者はハオランと戦うまでに二戦することになるので、タイムスケジュールはゆったりしていた。同じ人間の試合ごとの間隔は1時間程度はあけるとのことで、待ち時間に観客はカジノでも金を巻き上げられることになる。
しばらくして、係員の誘導でトキネさんはリング際まで降りていく。赤い柔道着にネコマスクはかなり悪目立ちしている。大体にして初の女性参加者だ。VIP席には出場者の簡単な紹介が書かれた紙が配られた。内容は簡素に名前とキャッチフレーズだけだ。トキネさんは今日の今日出場を決めて、会場に来る途中の車の中でリングネームを適当に決めて、ダニエルがメールで主催者に送っていた。紙には…
『猫娘:17歳のピチピチガール』と書かれていた。…移動の最中からあれだけマスクの文句を言っていたくせにノリノリだ。しかも年齢をサバ読んでいる。もちろん一桁サバを読む人を彼女以外に僕は知らない。しかも小数点以下は切り捨てだ。
他の三名は…
『ホーガン:元モンゴル相撲チャンピオン(予選トーナメント勝者)』
『マーリン:元中国海軍特殊部隊“蛟龍(こうりゅう)”隊長(ゲスト枠)』
『カズマ:喧嘩上等極龍幹部(予選トーナメント勝者))』
組織の幹部は置いておいて、一体どこから集めてきたんだというメンバーが揃っていた。
「ホーガンと言エバ総合格闘技のトーナメントにも出てイル結構メジャーな格闘家ですよ。何度か大会で優勝もしている。こんな大会にも出てイルんですネ」イリヤが言う。
「マーリンも聞いた名だな」ダニエルも言う。そういえば、彼は元アメリカの特殊部隊所属だった。ゲスト枠という事は彼が香港四合会からの参加なのだろう。
最初に始まったのはトキネさんとホーガンの戦いだった。
初めての女性参加者という事で、入場した時から会場は大盛り上がりだ。但し場所が場所なだけに戦いの勝敗結果は当然賭けの対象になっている。入場と参加者の紹介が終わってリング上の大型モニターにはオッズが表示された。216倍になっている。
「あれってトキネさんが勝った時は216倍って事ですよね?」僕は思わず他の三人に聞いてしまった。
「相手する方は気の毒だと思うけど、ファイトマネーはオッズとは逆の倍率で増額されるらしいからそこはせめてもの救いですね」ダニエルはそう言った。
開始の合図はブザー音だった。レフェリーの姿は特に見当たらない。戦闘不能になったかどうかは誰が判断するのかがやや心配だ。リングに降りていく前に全員一致で『あまり目立たないようにお願いします』とは言ったものの無理だろうなとは感じていた。
戦いが始まってしばらくは、トキネさんとホーガンは向き合って両腕を前に出して構えている。プロレスであればここから二人は両手を握り合って力比べを始めるところだろう。しかしホーガンがトキネさんの手を握ろうとしたところで、トキネさんは手をひっこめた。そうしてくるりと回れ右してホーガンには背を向けた。そのままリング際まで進んで立ち止まり、両腕を使って見物客に投げキッスをしている。リングは円形なので、移動しては3か所で同じことを繰り返した。ホーガンは笑いながらそれを見ている。
最後にはカメラに向かって敬礼のポーズをした。中央のモニターにはそれが大写しとなる。何してるんですかトキネさん。でも猫耳マスクで敬礼をするトキネさんも素敵です。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます