エデンズバレット

亜未田久志

楽園の弾丸


 白磁の肌、白色の髪、紅い瞳、アルビノ種の特徴。与えられた名前はW2ホワイトツー、私の相棒の名前はR4レッドフォー、名前の通りの赤髪に褐色の肌、私と彼女は一つだった。いつもいつまでも。

 ベッドの上、起き上がる、横にはR4が気持ちよさそうに眠っていた。私はその頬にキスをする。寝ぼけ眼をこするR4。

「もうやめてよW2、勝手にキスされたら仕返せないじゃない」

「ありがと、だけど仕事の時間に遅れるわ」

 私達の仕事はメタバース内部の反抗AIの討伐である。

 私達、エデンズチルドレンはエデンによって造られたクローン人間。母体と呼ばれる優秀な個体を管理AIが培養し増産した形が私達だ。

 黙示録の四騎士になぞらえて名付けられた私達。

 あと二人、B6ブラックシックスP8ペイルエイトは別行動中だ。

 四人全員が女性別で構築され、肉体を与えられる。

 わざわざメタバース内にアクセスするのに肉体を与えるのには意味がある。

 AIがメタバース内で破壊された時、外部装置にバックアップを取っている事が多々あるからだ。

 その本体を叩くのも我々黙示録の四騎士エデンズチルドレンの仕事である。

 起き抜けに着替えた二人は身支度を整え、外へ出る。メタバース内での移動は一瞬で行われる。

 コンマ数秒で現場に着くと、アサルトウェポンを取り出す。

 銃器に見えるそれは対AI用のウイルス注射装置である。

 現場には無惨に散らばったデータ群とそれを貪る反抗型AI。

「イナゴ型か」

「らっくしょう~」

『あなたがたがきょうみをしめすのはりょうりのかていについてですか?』

 AIの意味不明な問いを無視してアサルトウェポンをぶっ放す。

 ここからが本番の仕事だ。

 私達は肉体へと精神をインストールして起動する。

 敵AIの所在はレインシティG地区。

 車を飛ばさなければいけない距離だ。

 仕方なくタクシーを拾い、現場へ向かう。

 運転は出来ない。

 私達は見た目はただの女子に過ぎないのだから。

 法整備の進みは遅い。

 AI対策法だけが可決され非人道倫理帰還エデンが結成された。

 しかし私はそのことをなんとも思わない。

 R4と出会えたことを感謝しているくらいだ。

「今日はサブマシンガンにしようか?」

「コルト・パイソンこそ至高」

 私は好んでリボルバーを使っていた。

 AIによる自動運転で進む景色。

 反抗AIを折っているとも知らずに。

 気楽な音楽が流れている。

「終わったらカフェにでも行こうか」

「いいね」

 すると――轟音。

 巨大な重機が現れる。

 タクシーを降りる私達。

 オペレーターが告げる。

『目標を発見、ただちに対処せよ』

「「火力不足だっての!!」」

『目標地点にロケットランチャーを投下、回収の後、目標のコアユニットを破壊されたし』

「無茶苦茶言いやがって」

「やりゃあいいんでしょ、やりますよ!」

 ヤケクソ極まりない私達だったが、衛星から投下されたロケランの入ったコンテナが重機のコアユニットを貫いた時は爆笑のあまり、しばらく地べたで笑い転げていた。

『任務完了を確認帰投を許可します』

 オペレーターの言葉に笑いは加速した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る