笑顔の行方①

「痛ててて……」



見知った天井が目に入る。


まごう事無き、スマイル団アジトの俺の部屋だ。


俺は、ベッドの上に横たわっていた。


(あぁ、モモに攻撃呪文、掛けられたんだっけ……)


体がまだ、ひりひりする。


窓の外が明るい。


どうやら、一晩、気絶していたらしい。


ニコニコ


ニコニコ


ニコニコ


ニコニコ


ニコニコ


ニコニコ


ニコニコ……


壁に掛かったニコニコ時計が、7回笑った。


「……ず、動ける様にならんと」


両手で、いんを組む。


「……ナーロッパにわす、八百万やおよろずの神々よ……。我は、僧侶・クーヤなり!我の願いを聞こし召せ、奇跡を授け賜え……!」


周囲の気が、てのひらに集まって来る。


全身を、金色の光が包む。


体が、フッと軽くなる。


「よし!」


体の痛みが取れると、途端に、腹が猛烈に減っている事に気付いた。


安心すると、減ってる事に気付くよな。


「モモ、何か作ってくれ」


――へんじがない。ただのs(略


(居ないのか)


何だか、拍子抜けしてしまう。


いつも当たり前に、空気の様にとなりに居たのに。


(怒ってたもんな……)


真逆まさか、あのニコニコしたモモが、あんなに逆上するとは思わなかった。


女性は分からない。


(何か作るか……)


そう思って辺りを見回すと、視界の隅に、白いふっくらした物を発見した。


ベッドサイドのテーブルに、肉まんが置いてある。


「……モモ」


目を覚ましたら食べる様に、早起きして蒸しておいてくれたのだろう。


(怒ってる訳じゃ無かったのか)


面と向かって謝れないなんて素直じゃ無いな、などと考え乍ら、俺は肉まんにかぶりつく。


(美味い。やっぱりモモの料理が一番だな)



(⌒ω⌒)ニコニコ




(・ω・)ムムッ?




(@д@)グォエエェエエ!



具の真ん中まで到達した所で、俺は肉まんを吐き出した。


何っっじゃこの味は。


急いでキッチンに行ってみると、缶切りと、シュールストレミングの空き缶が放ったらかしになっていた。


缶から、生ゴミを直射日光に一ヵ月晒した様な異臭が漂っている。


「…………(TωT)ナニユエ?」


涙目で、空き缶だけは急いで厚手のビニール袋できつくきつく封をする俺。


冷蔵庫の側面に貼ったホワイトボードに、赤いマジックで、見慣れた女性の文字があった。


『 バ カ ♡ 』


……怒ってる、らしい。

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