第2話 事実確認してみた

僕は学校に向かう道中も本当にタイムリープしたのか確認しながら歩いた。


あ、ここで確か黒猫出てくるはず……


実際に黒猫は木の影から現れて僕の方を真っ直ぐ見つめた。


どうやら僕は過去に「死に戻り」したようだ。


ラノベでもよくあるがこの手の話は死に戻り系と言ってけっこう人気のジャンルの話だ。


そして、次に健太が後ろからやって来て、漫画の話をしてくるはずだ。


「おはよう!おい、タカ!今週のジャンポ読んだか!?」


ほら、来た。


僕は自分が「死に戻り」をしたこと確信した。


「まだ読んでないよ。てか、お前は本当に朝からテンションが高いな」


「マジかよー今日はジャンポの発売日だぞ。朝イチで読まないといけないだろ!」


健太と僕は小学校からの友達でお互い漫画やラノベ好きのオタク少年だ(もちろん僕と同じくスクールカーストの下の下)。


彼は週刊少年ジャンポの発売日を誰よりも楽しみに生きている。


もちろん、僕も楽しみだ。


だか、健太ほどではないが……


昔、健太は虐められてもジャンポにある漫画の続きが楽しみだから生きていけると言っていたので、本当に好きなんだと思う。


僕はその気持ちはすごくわかる。


楽しみなアニメや漫画がある時は、多少日々嫌なことがあっても「続きを観るまでは生きないと!」と思う。


そう思うと、アニメ、漫画、ラノベは僕らの希望なんだ。


「そういえば、グリーン戦記のエミリーは死んだんだろ?」


「おい、ちゃんと読んでたのかよ!」


「いや、読んでないよ。今日の帰り道に買って読もうかと思ってた」


「じゃあ、なんでエミリー死ぬの知ってんだよ!あんなの予想出来ないだろ!」


「まあ、別の世界線で見て来たんだよ」


僕はあながち嘘でもない返答をした。


実は、前回の人生でヤンキーから階段に落とされる前にコンビニで週刊ジャンポを少し立ち読みしてたのだ。


「はぁ、何言ってんだよ。漫画じゃあるまいし。第一お前が別の平行世界行って何するんだよ」


「姫を救うとかかな?」


「お前、センスないよ。そんなありがちなシナリオ誰が喜ぶんだよ」


健太は呆れながら言った。


でも、姫を助けるのもあながち嘘ではないんだ。


今日、僕はヤンキーと戦って姫を救う。


そう決めているんだ。


僕はこうやって、前回と今回で一致する点やしない点を確認していった。


死に戻りした今回の人生と前回の人生では僕のやることや言動が微妙に違うせいか、結果が変わることが確認出来た。


例えば、数学の時間も問題を解くように先生に当てられたが、前回では解けなかったが今回は未来の情報を知っていた為、簡単に解くことが出来た。


これが意味するのは、未来の情報を知っていれば未来を変えることは可能と言うことだ。


つまり、僕は今日の放課後、ヤンキーに絡まれてもケンカに勝てるかもしれないということだ。


「おい、なんでさっきの数学の問題解けたんだよ!」


昼休みの部室で健太が僕に聞いた。


僕らは今ラノベ研究会の部室にいる。


教室はどうも僕らみたいなスクールカースト下位の人間には居心地が悪いため、ここに逃げ込んでいるのだ。


「だから、別の世界線で知っていたからだよ。朝言ったろ?」


僕はパラパラとラノベを読みながら答えた。


「なんか怪しいな。今日のタカは鋭すぎる」


いや、鋭いのは健太お前の方だよと言いたい気持ちを堪えながら、「まあ、細かいことは気にするな」と僕は応えた。


こうやって、僕が行動や言動を変える未来での出来事が変わるようだ。


健太がここまで勘が鋭くて絡んでくるとは思いもしてなかった。


ヤンキーを倒すのも思ったよりも単純じゃないかも知れないな……


「細いことじゃないぞ!絶対何かある!」


キーンコーンカーンコーン


昼休み終了のチャイムが、健太からの質問から解放してくれた。 


「さぁ、授業だ。行くぞ」


僕はサッと立ち上がり、部室を出た。


「おい、待てよ!タカ!」


僕はこうして午後からの授業では前回と極力同じように振る舞った。


そして、遂に来た。放課後だ。


僕は前回と同様にコンビニで寄り道をして家に帰る。


「やめてください」


あの子の声が聞こえた。


あの声、前回と同じだ。彼女が助けを求めている。


前回同様、彼女はヤンキーに絡まれて困っているようだった。


一回、僕はここで死んでいることもあり少し武者震いをした。


いや、でも戦わないと……


僕は自分自身に喝を入れた。


「おい、お前ら何をしている」


僕は堂々とヤンキー達に言った。


「はぁ、お前誰だよ」とヤンキーAが言った。


他のヤンキーBもCも「あん」だの「うん」だの言って僕に威嚇してきた。


「その子が困ってるだろ!離してやれ!」と僕が威勢よく言った瞬間、ヤンキーAが「うっせえ!」と言い、僕に拳を向けた。


「痛っ!」


僕は見事顔面から喰らってしまった。


くそっ、僕は馬鹿だ。


強気でヤンキーにケンカを売ってしまったせいで、前回よりも早いパンチが飛んできた。


極力、前回と同じ行動をとるべきだったのについ調子に乗ってしまったのだ。


しかし、今回の僕はメンタルが違う。


僕は、ヤンキーAを睨み、思いっきり殴りかかった。


最初の一撃はよけられたので、もう一回僕は殴りかかった。


かわされてもかわされても僕は殴りかかった。


そして、遂に一撃をお見舞いすることが出来た。


「調子乗んなよ!!」


僕の攻撃を喰らったヤンキーが雄叫びをあげ、飛び蹴りをした。


「くっそー!!」


僕は、この展開は予測出来ていたのでヤンキーAの飛び蹴りは避けることができた。


前回はこの蹴りを喰らって階段から落ちたのだ。


ヤンキーAは飛び蹴りを僕にかわされたせいで、危なく階段の近くまで滑ったが、前回の僕みたいに階段から落ちることはなかった(運動神経はやはり僕よりも良いようだ)。


「あーマジでうぜぇ」


ヤンキーAがロン毛をかき上げた。


その様子を見てたヤンキーBとCが「怒らせてやんの」と僕の方を見て笑った。


これ、ヤバいやつかな……


僕は少し、いやけっこう不安になった。


というのもヤンキーAが小型のナイフを取り出したからだ。


「あいつ、頭に血が上ると何するかわからないからなー」


ヤンキーBが頭をぽりぽりと掻きながら言った。


あーこれはちょっとまずいやつかも知れない。


そんなことを考えながらも僕はヤンキーAの動きから目を離さないようにしていた。


「クソ野郎が!」


ヤンキーAが僕に向かってくる。


やばい、やられる。


ヤンキーAがナイフを振り回す。


それをなんとか避ける僕。


くそ、間に合わない。


そう思った時には既に遅かった。


次の瞬間、僕の腹にナイフが刺さっていたのだ。


「キャー!」


ナンパされていた女の子が叫んだ。


僕の腹から温かな血が流れ出るのが見えた。


僕は地べたに倒れ込み、少しずつ意識が遠のくを感じた。


「やべぇ、行くぞ」


ヤンキー達が足早に立ち去る気配を感じた。


くそっ、また死ぬのかよ……


てか、けっこう痛いなこれ……


「死なないで!」


彼女の声がした。


そして、僕は彼女の願いも虚しく、呆気なく死んでしまった。

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