第67話 魔女の家3


「あんた、まさかこの世界の人間じゃないのか……!?」


 俺はそんな疑問を抱いた。

 ダンカメの機能を魔女が知っているなんて……。


「いや、僕は正真正銘、この世界で生まれたものだよ。で、なんでそんなこというのかな? それじゃあ、自分が異世界から来たって白状しているようなもんだよ」

「あ…………」


 そうだ、異世界の人は、別に異世界の存在なんか知らないわけだ。

 これじゃあ墓穴を掘ったようなもんだ。


「まあ、君らの事情はおおむねわかってはいるんだけどね。君ら、異世界から来たんだろ?」

「な、なんでそれを……」


 そういえば、獣人たちが、魔女はなんでも知っていると言ってたな。

 なんでもってことは、マジでなんでもってことなのか。

 

「そのダンカメとやらで、ずっと見てたからね」

「え……!? ど、どういうことだ……!?」

「そのダンカメとやら、ぼくの分析した限りだと、雷の力で動いてるみたいだね。そのダンカメの動力が切れなかったことに、なにか疑問は持たなかった?」

「あ…………」


 そういえば、こっちの世界に来てからずっとダンカメのバッテリー交換をしていない。

 それなのに、ダンカメもスマホもずっと、そのまま動いていた。

 異世界に来たことが衝撃的すぎて、あまり気にしてなかったけど、よく考えたらおかしいな。

 まさか、魔女が電力を遠隔で供給してたってことなのか……!?


「ほら、ここにぼくの用意した水晶がある。これとダンカメをつないで、君らの動きを勝手に見てたんだよね。まあ、ぼくの魔法を使えばこのくらいはお手の物さ」

「まさか……ずっと監視されていたなんて……」

「この世界に新しいエネルギー体が入ってきたのに気付いてね、興味があったから見させてもらっていたんだよ。動力が切れると見れなくなるから、勝手にこっちで補給してたよ」

「そうだったのか……」


 てことは、魔女は俺たちがこの世界にきたときから、俺たちに気づいてたってことか……!?

 魔女ってやつはいったいどこまでの魔法の能力を持っているんだ……!?


「それに、このインターネットってやつ。面白いね」

「は…………?」


 すると魔女は、スマホによく似た、なにやら板のような端末を取り出した。

 そこにはなんと、ホームページが映っている。


「ああ、これ? これは君のもってたそのスマホを参考に、自分で創ったんだよ。こっちの魔道具で応用してね。君たちの世界のインターネットにつなぐための魔法回路も自分でつくったんだよ。ダンカメの配信がとぎれなかったのも、僕のおかげってこと」

「な……!? そんなことまで……!? 規格外すぎる……!」


 これじゃあ、魔女っていうより、神かなにかだ。


「で、でも……いくら魔法でも、そこまでのことはできないはずですよね……!?」


 ひかるんがそう言った。

 そうだ、ひかるんの言う通りだ。

 いくら魔法といっても、本来そんなことは不可能だ。

 俺にできる魔法といえば、せいぜい火を出したり、回復したりだ。

 こんな、でたらめなことができる魔法はきいたこともない。


「ああ、君らの言ってる魔法はあくまで『魔法』だからね」

「どういうことですか……?」

「ぼくのような高位の魔女が使うのは『魔導』。まあ、いわば魔法の応用のようなものだね。魔法は火を出したり、回復したり、そういった単一の現象を起こすのに使うものなんだ。それを応用して、例えば転移魔法だったり、空中浮遊だったり、さっきのようなでたらめな現象を可能にするのが『魔導』」

「そんな話きいたこともない……」


 俺たちのいた地球では、あくまで知られていたのは魔法だけだった。

 魔導なんてはなし、きいたこともなかった。


「どうやら君たちのいた世界では、まだ魔導の研究はすすんでないみたいだね。さっきインターネットでいろいろ調べてたから、だいたい君たちの世界の事情は把握できたよ」

「そういうことなのか……」


 じゃあ、俺たちが今まで魔法と信じていたものは、単なる基礎でしかなかったというわけか……。

 そこで、俺はある疑問を思いついた。

 

「ていうか、異世界から来たって、すぐに信じるんだな? それに、俺たちがこっちにきたときから監視してたって……。もしかして、俺たちがこっちにくるのもわかっていたのか……? 未来予知の魔導とか……?」


 すると、魔女はもっととんでもないことを言い出した。


「ははは、さすがに未来予知はできないよ。えーっとね。君らの世界にダンジョンが現れたのって、そもそもぼくのせいかもしれないんだよね……」

「えぇ……!? は……!?」

「いやぁ、ちょうど数十年前にね。こっちでとんでもない研究をしてたんだよね。そのときに失敗しちゃって、異世界への門がひらいちゃった……みたいな……? それで一応、該当するダンジョンをいつも見張ってはいたんだけどね。いやぁ、まさかほんとうに異世界から人が来るなんてねぇ……」

「えぇ……そんな……笑い事じゃないだろう……」


 じゃあ、こいつのせいで、地球はあんなことになったってことなのか……!?

 そのせいで、ひかるんは亜人症に苦しんでいるっていうのに。


「あんたのせいでなぁ、この子は苦しんできたんだぞ……!」


 俺は思わず、アツくなってしまう。

 だが魔女はまったく悪びれもせず。

 

「あ、そういえば、君たちがこっちに来た目的って、亜人症とやらを解決するためだったよね」

「そ、そうだけど……」

「それならぼく、なんとかできるよ」

「え…………!?」



===========

あとがき


みなさんねぎらいのお言葉ありがとうございます

ゆっくりがんばります

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