第36話 なんでお嫁さんなんですか……


 俺は小さな狐モンスターに回復魔法を放った。

 すると、すぐに狐モンスターは元気になった。


「キュルキュル!」


 狐は俺のもとにすり寄ってきて、感謝を伝える。

 もふもふしていて、黄金の毛並みが気持ちいい。


『おおおー!』

『さすがは辻おじ』

『やさしい』

『またもふもふ拾ったね』


 狐を抱っこして、抱え上げる。

 しかしそうこうしているうちに、オークが目の前までやってきた。

 オークは狐をにらみつけると、こちらに向かってくる。


「サリナさん……!」

「ええ、ハヤテくん。倒しましょう!」


 俺たちは狐をかばい、オークと対峙する。

 俺がオークを敵と認めると、だいふくとおもちが大きく進化した。


「きゅいきゅいー!」

「がるるるる……!」


 オークが俺たちを敵と認識し、攻撃してくる。

 オークは手に持った木の武器で、こちらを攻撃してくる。

 それを、おもちがぷるぷるのスライムボディで受け止める。

 オークの武器はおもちの身体に吸い込まれていった。


「グモ……!?」


 オークがひるんだすきに、だいふくが噛みつく!


「がるるるる……!」

「グモオオオオオ!!!!」


 だいふくがオークを捕らえたその直後、サリナさんが剣でオークの心臓を貫いた!


「てい!」

「グモオオオオオ!」


 オークは断末魔の悲鳴をあげ、その場に倒れた。


『おおおおおお!』

『倒した!』

『オークを瞬殺、やるな!』

『さすがはさりーにゃ!』

『ナイスコンボ!』


 俺はサリナさんとハイタッチ。


「やったね、サリナさん。さすがだ」

「そうね。なんとかなったわね……。とりあえず、その子どうする?」


 サリナさんは俺の腕に抱かれている狐を撫でながら、言う。


「そうだな……。この子拾っちゃったし、一回帰ろうか」

「そうね。またイレギュラーにでも襲われたらたまらないし……」


 狐をその場に離しても、どこにもいく気配がなく、そのままおもちとだいふくについてきたので、俺は狐を連れて帰ることにした。

 狐には、とりあえずいなりと名付けておいた。

 さすがに安直すぎただろうか。



 ◇



 家に戻ってきた。

 なんか流れでサリナさんを家にあげてしまった。


「お腹空いたね……」

「そう……ね」


 俺もサリナさんも、身体を動かして、お腹が空いていた。

 ということで、ご飯を食べることに。

 俺の家の冷蔵庫から、適当に俺が料理する。


 いや、普段はひとりだから料理をしないけど、一応できるんだ。

 サリナさんがいるから、変なものを出すわけにはいかない。

 俺は腕によりをかけて、とびきりの料理を作った。


「できた……! オムライスです……!」

「おいしそう……! ハヤテくん、料理もできるんだねぇ」

「ま、まあね……」

「これはいいお嫁さんになれるねぇ」

「なんでお嫁さんなんですか……」


 サリナさんはよくわからないことを言う。

 とろとろのオムライスを、サリナさんはスプーンで口に運ぶ。

 

「うーんおいしい、うちにお嫁にこない?」

「えぇ…………だからなんでお嫁さんなの……」


 サリナさん、もしかしてそれはプロポーズ!?

 俺は少し動揺するが、とりあえず冗談だろうと流す。


「私、けっこう本気で言ってるかもよ? ハヤテくんのこと、嫌いじゃないし……」

「じょ、冗談でしょ……さすがに……。いや、俺もサリナさんのことは好きですけど……」

「ふふ……、まあ、そのうち考えといてよ」


 もしかして、これ告白とかすれば付き合えたりするのだろうか。

 なんて邪なことを考える。

 でも、俺にそんな勇気はなかった。

 なんだろう……どうしたらいいんだ。

 この歳で、全然異性への耐性がないから、こんなことを言われてもどうすればいいかわからない。


「と、とりあえず……食べましょう……」


 俺は急いでオムライスをかきこんだ。


 俺たちのご飯が済んで、次はおもちたちのごはんだ。

 おもちにはいつも通り、俺と同じオムライスを食べさせる。

 おもちはスライムだから、なんでも食べる。

 だからいつも同じものをあげている。


 いや、スライムに味覚があるのかはよくわからない。

 でも、基本なにを食べさせてもおもちはきゅいきゅい言ってよろこんでいるので、よしとしている。


 だいふくには、肉料理とドッグフードだ。

 だいふくはお肉がとにかく好きだった。

 ドッグフードも高級なやつを与えている。


 そして、問題は新しいメンバーの狐ちゃんだ。

 いなり、こいつはなにを食べるんだろうか……?


「とりあえず、これ食うか?」


 俺は冷蔵庫から、いなり揚げを取り出した。

 狐だからいなり揚げが好物ってのは、少し安直だろうか?

 しかし、俺がいなり揚げを見せると、

 その瞬間、いなりはいなり揚げに飛びついた。


「キュルキュルー!!!!」


「お……!」


 いなりは夢中でいなり揚げをほおばった。

 やはり、狐だからいなり揚げで正解だったようだ。

 これからいなり揚げを常備しておこう。


「いなりちゃん、可愛いねぇ……」


 サリナさんはいなりを撫でながら、言う。


「これで3匹目かぁ……大丈夫かなぁ……」

「なにが……?」

「いや、モンスター飼ってるなんてただでさえ珍しいのに、3匹もなんて……俺、面倒みれるかなぁと思ってさ」

「ハヤテくんなら大丈夫。みんなハヤテくんが大好きで、こんなに懐いているんだから。いっしょにいてあげて。ハヤテくんは優しいから、そのままでいいんだよ」

「そっかなぁ……。ありがとう、サリナさん」


 なんだかそう言われると照れるな。

 はじめて人にこんなふうに認められたかもしれない。

 サリナさんは本当に、いい友達だ。


「それで……今日は私、泊っていってもいいのかな?」


 サリナさんはまた冗談ぽくそんなことを言う。


「な……!? い、いいいいいわけないじゃない……!」

「あはは……そんな驚かなくても。冗談だって。いなりちゃんたちもいるしね」


 俺は、からかわれているのだろうか……?

 ていうかたしかに、おもちたちがいるから、俺の部屋に誰かを泊めたりできないな。

 俺、女の子連れ込んだりできないじゃん……!?

 もしかしてこのまま、俺はずっと一人なのかぁ……!?


 まあいいか。

 おもちにだいふくに、いなりまでいるんだからな。

 俺の毎日は、幸せでいっぱいだ。

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