第19話 めちゃくちゃバズってるじゃないか……


 雑談配信を終えたあと、サリナさんからLINEでメッセージがきていた。


【配信お疲れさまでした! なかなか盛況でしたね!】

【いやぁ、おかげさまで】


 配信の詳しいやり方なども、サリナさんからアドバイスを受けていた。

 サリナさんはもうすっかり俺のダンチューバーとしての師匠だった。


【そういえば、Twitterはやらないんですか?】

【Twitter……ですか……】


 そういえば、俺はまだTwitterのアカウントを持っていない。

 でも、やはり今後ダンチューバーとしてやっていくのなら、必須なのだろうか。


【絶対作ったほうがいいですよ! 配信の宣伝にもなりますし、他のダンチューバーさんとも交流できますしね】

【そうですねぇ、ちょっと作ってみます! アドバイスありがとうございます!】


 ということで、俺はサリナさんのアドバイスを受けて、Twitterアカウントを作ることにした。


「えーっと、どうしようかな」


 まずは、アカウント名が悩ましいところだ。

 本名の辻風ハヤテにするか……?

 いちおう、ダンチューブのチャンネル名は【おもちとだいふくチャンネル】だからなぁ。

 ダンチューブのコミュニティ機能を使って、ファンにきいてみるか。

 俺はダンチューブのコミュニティに、以下の文を投稿した。


【Twitterアカウントを作ろうと思います。アカウント名ってなにがいいですかね?】


 すると、すぐにいくつかのコメントがついた。


『辻ヒールおじさん一択だろ』

『辻おじ』

『辻ヒールおじさんでFA』


 ということで、ほぼ満場一致で辻ヒールおじさんに決定した。


「やっぱりそれか……」


 個人的には、あまり気に入っている名前ではないんだけどな。

 だって、おじさんだぞ……。

 いやまあ、俺はおじさんなんだけども……。

 自分でおじさんと名乗るのは、ちょっとまだ抵抗があるのだ。

 これでも気持ちだけは若いつもりなのだ。

 すっかりネット上では、俺は辻ヒールのおじさんとして定着したようだった。

 なんか切り抜き画像とかがミームとして使われてたりもするようだ。

 もう勝手にしてくれ……。


「よし、辻ヒールおじさん……っと……」


 俺はアカウント名に辻ヒールおじさんと入れて、Twitterアカウントを開設した。

 まず最初のつぶやきはどうするかな。


【どうもこんにちは。辻ヒールおじさんです。Twitterアカウントを作りました。ぜひフォローお願いします】


 っと……これでいいだろう。

 とりあえず、それをつぶやいて。

 あとはダンチューブのコミュニティにも、TwitterアカウントのURLを張り付ける。

 すると、すぐさまTwitterにフォローがどんどん飛んできた。

 あっというまに、フォロワーが200人になる。


「おお……すさまじいな」


 ダンチューブのコミュニティから、チャンネル登録者たちがフォローしにきてくれたみたいだ。

 もうすっかり何割かは固定ファンとして根付いたな。

 次はどうしようか、なにかつぶやいてみようか。

 俺はおもちとだいふくの写真を撮ってみることにした。

 撮った写真を、Twitterにあげる。

 だいふくの上におもちが乗っている画像だ。

 二匹とも、幸せそうにカメラ目線を送っている。


【今日のおもちとだいふくです】


 すると、すぐさまリツイートがついた。

 リプライもたくさんきている。


『かわいい!』

『写真の供給たすかる!』

『これはリツイートするしかない!』

『保存した』

『毎日あげてくれ!』


「まあ、とりあえずこんなもんか……」


 ちょっと眠たくなってきたので、俺は昼寝することにした。

 だいふくのもふもふボディに顔をうずめながら、布団に潜り込む。

 ふぅ……おやすみ……。



 ◆



 あれから何時間寝ただろうか。

 スマホの通知がぶるぶる震えている。

 あ、ちなみにスマホは新しいのに買い替えた。

 スマホがさっきからぶるぶる震えている。

 うるさい。

 ここでうるさい!とスマホをぶん投げたりしたら、また前みたいに紛失したりしかねないからな。

 俺は冷静に起き上がり、スマホを確認する。


「って……なんじゃこりゃああああああああ……!?」


 通知はどうやら、俺がフォローされたという、Twitterからの通知だった。

 あわててTwitterを開いてみると……。

 なんと、フォロワー数が5万人になっていた。

 しかも、おもちとだいふくの画像が2万リツイートを超えている。


「めちゃくちゃバズってるじゃないか……」


 なんか、トレンドに『おもちとだいふく』とか『辻ヒールおじさん』とか入ってるんだが、気のせいか?

 しかも『辻ヒールおじさん、ついにTwitterを開設!』とかいうネットニュースまで流れてくる。

 俺がTwitterを作ったのがそんなに珍しいのか……?

 まあ、とにかくこれで一応は安泰だ。

 Twitterをつくっても誰にも見られないような心配はなくなった。


「お、DMも来ている……」


 いくつかDMが来ていたので、開いてみる。

 ひとつは、サリナさん、もといさりーにゃさんからだった。


【さりーにゃ:辻風さん! フォローしました! よろしくお願いします!】


「お、さりーにゃさんからだ。こっちからもフォローしておこう」


 そういえばまだ誰もフォローしていなかったなと思い、さりーにゃさんをフォローしてみる。

 これでさりーにゃとはFF関係だ。

 他のDMも開いてみることにする。

 いくつかは、辻ヒールをしてもらったことに対するお礼のメッセージだった。

 そして何件か、広告案件の依頼もきていた。

 これはあとで確認しよう。

 そしてなんと、最新のDMは、なんとあの人物からだった。


「ひかるん……」


 そう、なんとひかるんからDMがきていたのである。

 俺はおそるおそる、それを開く。


【ひかる:辻風さん、この前は本当にありがとうございました。配信でもお礼を言わせてもらったんですけど、あらためてDMでも失礼します。フォローしました!ぜひよろしくお願いします】


 ほんとうに、律儀で丁寧な子だなと思う。

 わざわざDMまでしてきてくれるなんて。

 俺のようなおっさん、もう放っておいてもいいだろうに。

 俺も、ひかるんのアカウントをフォローバックし、こちらも誠意を込めて返信する。


【いえいえ、こちらこそ配信にきてくれてありがとうございました。フォローありがとうございます。こちらもフォローしました。よろしくお願いします!】


 俺がメッセージを返すと、ひかるんはさらにメッセージを返してきた。


【ひかる:今度ぜひ会ってお礼がしたいです。迷惑ですか?】


 俺は卒倒するかと思った。

 飲んでいたお茶を噴き出す。


「ぶふぉー!!!!」


 俺に、会いたいだと……!?

 現役JK人気ダンチューバーのひかるんが……!?

 いや、ただお礼がしたいってだけだろうけど……。

 いやでも、おかしいだろ。

 美人局か……?

 落ち着け……。


【迷惑じゃないですけど……。いいんですか?逆に……】

【ひかる:もちろんです!ぜひ会ってお礼させてください!】


 ということで、ひかるんと会うことになってしまった。

 どうなるんだ……俺。


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