第14話 それって、プロポーズですか……!?
会社を辞めて、数日がたった。
クララがたった。
現在は有給休暇を消化ちゅうだ。
今日は、後輩の
――ぴんぽーん。
きた。
だいふくがガウガウと吠える。
「先輩、遊びにきました!」
「おう、入ってくれ」
カレンは私服のワンピース姿で、手荷物を持っていた。
「わぁ……! これがおもちちゃんとだいふくちゃんですね! かわいーー!!!!」
「きゅいきゅい!」「がう?」
二匹とも、初めて見る客人に、興味津々だ。
カレンはしゃがみこんで、二匹を撫でる。
カレンも小さい合法ロリだから、なんだかこうしていると三匹目のペットのようだ。
「それで、その手荷物はなんだ?」
カレンの大荷物に、俺は言及する。
「ああ、これですか? これは食材です」
「食材?」
「どうせ先輩のことだし、ろくな料理もしていないんだと思って」
「ぎく……ま、まあそうだけど……」
俺は一人ぐらしが長いけど、正直いって料理はあんまりしない。
うん、できないというわけではないんだよ。
ほんとだよ。
ただあのうんざりするような仕事で疲れて、いつもやる気が起きなかっただけだよ。
仕事やめたから、今後は料理もやっていこうとちょうど思っていたところなんだよ。
ほんとだよ。
「仕事もやめたし、食堂も使えないから、どうしてるのかなと思って。どうせ、ろくなもの食べてないから、栄養不足になってるんじゃないかなと。だから、今日は私が作ってあげます」
「それは、助かるけど……」
「コラボしてくれるお礼です。それに、おもちちゃんとだいふくちゃんにも美味しいもの食べさせてあげたいですしね」
そう、今日カレンがやってきたのは、カレンとコラボをするためだった。
カレンは底辺ダンチューバーだから、俺とのコラボでなんとか売れっ子になりたいのだ。
俺もまあ別に、普段からカレンにはお世話になってたから、このくらいいいだろうと思ったのだ。
「じゃあ、キッチン借りますね」
「ああ、うん」
カレンは食材を取り出すと、料理をし始めた。
キッチンから、料理をする音が聞こえる。
こういう生活音っていいよな。
なんだか実家にいたころを思い出す。
結婚したら、こんな感じなのかな。
しばらくして、料理が完成した。
「はい、肉じゃがと、野菜炒めと、スープです。めしあがれ!」
「おう、ありがとうな」
俺はさっそくいただくことにする。
「うまい……! これめちゃくちゃ美味いぞ!」
「ふふ、ありがとうございます。これでも、料理には自信があるんですよ」
ロリっ子なのに料理ができてすごいなと思うけど、口には出さない。
カレンはロリっ子だって言われるのを嫌う。
「お前らも食べろ!」
「きゅい!」「がう!」
俺はおもちとだいふくにも料理を分ける。
「きゅいきゅいー!」
「あうあうー!」
どうやら二匹とも、気に入ったようだ。
とても美味しそうに食べている。
「はは、気に入ったか」
そうやって俺たちが食べていると……。
カレンが俺たちにカメラを向けていた。
「……で、なにを撮ってるんだ……?」
「なにって、せっかくなのでこれも動画にしようかと」
「ああ、なるほど……って、思い切り俺の顔映ってるんだけど……」
「いいじゃないですか。もうすでに、顔バレしてるんですし」
「ああ、まあそうか……今更か……」
ひかるんの配信に映ってしまっていたのと、おもちの身体に反射して映っていたのとのせいで、いまやインターネット上には俺の顔が思い切り残ってしまっている。
今更顔が映るのを気にしたところで意味はないな。
もうこうなったら、配信者として思い切り顔を出していったほうがいいな。
ということで、そのまま撮影会になった。
カレンも顔出しでダンチューバーやってるので、問題はない。
カレンが俺たちに飯を作って、それを食べるという、シンプルな動画だ。
これをコラボ動画として投稿することにした。
「それにしても、めちゃくちゃ美味いよ。ほんと。毎食作ってほしいくらいだわ……」
俺はなにげなくそう口にしていた。
すると、カレンは顔を真っ赤にしてわなわなと震え出した。
「な……!? せ、せせせ先輩……それって、プロポーズですか……!? そ、その……私はまだ……」
「か、かかかか勘違いするな……! プロポーズじゃない……!」
俺も言っている意味に気づいて、顔を赤くしてしまう。
俺はなんちゅーこと言ってんだ……。
「ま、まあ……先輩ならいいですけどね……」
「え……?」
「な、なんでもないです……!」
なんだか決まずくなってしまい、動画撮影を終えたあと、カレンはいそいそと帰ってしまった。
それから、
カレンは、【今話題の辻ヒーラーおじさんとペットに、手料理ふるまってみた】というタイトルで動画を投稿した。
俺は、【ダンチューバーのカレンさんに料理をいただいた!】ていう動画だ。
二本のコラボ動画は、またたくまに再生された。
『なにこの女の子……!?』
『辻ヒーラーおじさん、無名のダンチューバーとコラボしてる』
『この女の子めちゃ可愛いじゃん』
『え? 子供?』
『概要欄見たけど、元同僚らしい』
『じゃあ大人なの? 合法ロリかよ』
『可愛い。この子もチャンネル登録しよう』
『美味しそう!』
『俺もたべたい!』
『カレンちゃん可愛い!』
『おもち可愛い!』
『だいふくはおいしそうに食べるなー』
『美少女×もふもふ×スライム=至高』
『モンスターって普通になんでも食べるんだな』
今回のコラボで、カレンのチャンネル登録者もかなり増えたようだ。
もともとカレンは見た目もいいし、探索者としての腕もたしかだ。
きっかけさえあれば、十分に人気になるポテンシャルはあったのだ。
カレンはそのあと、俺にめちゃくちゃお礼を言ってきた。
人気のダンチューバーになることが夢だとよく語っていたから、ほんとうによかったなと思う。
俺のほうも、新しく動画をあげたことで、さらなる人気につながった。
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