第7話 あ、これTwitterで流れてたやつだ!


 家に帰ってきた。

 さっそく撮影をしてみよう。

 鉄は熱いうちに打てともいうしな。

 さっきの女性も、宣伝してくれるとか言ってたからな。

 はやく動画をあげてしまいたい。


「えーっと、どういうところを撮ろうかな」


 ここはまあ、まずはベタに食事風景でもとるかな。

 

「ふたりとも、今から動画にとらせてもらうけどいいかな?」


 俺は念のため、二匹に確認をとる。

 二匹とも、機嫌よさげに鳴き声で応える。


「きゅ♪」「がぅ♪」


「よし」


 俺はカメラをオンにした。

 まずはおもちに、お水をあげてみる。


「ほらおもち、お水だぞー!」

「きゅう」


 おもちは水を飲んで、どんどん大きくなる。


「ははは……! すごいな」


 スライムが水を飲んで大きくなっていくようすは、なかなか面白いと思うぞ。

 これってたぶん誰もみたことないから、バズるんじゃないかな。

 学術的にも貴重な映像になりそうだ。

 次に、俺はお酒を与えてみる。


「ほら、昨日とおんなじ、ビールだぞ」

「きゅいー!」


 どうやら昨日のあれで、おもちはお酒が気に入ったようだった。

 おもちはビールに飛びついた。


「はは! 酔っ払いスライムだ! これは貴重な映像だぞ! かわいい……!」


 酔っ払って独特な踊りを披露するおもち。

 そのすがたは、なんとも愛嬌があって、おもしろかった。


「よし、じゃあ次はだいふく!」

「がう!」


 だいふくには、ドッグフードを与えてみる。

 さっきヨドバシカメラで買っておいたのだ。


「よしだいふく、待て!」

「がう!」


 だいふくは、ちゃんと俺のいうことをきく。

 かしこい子だなぁ。


「よし、お手」

「がう!」

「おお! えらいぞー! 食べてよし!」

「がう!」


 だいふくはよろこんでドッグフードにむしゃぶりついた。

 やっぱり、だいふくもドッグフードで大丈夫なようだ。

 すると、おもちも寄ってきた。


「お前もドッグフード食べるのか?」

「きゅい!」

「大丈夫なのか……?」

「きゅきゅい!」


 おもちはドッグフードをだいふくから分けてもらうと、すっと飲み込んだ。


「なんでも食べるなぁ……スライムって……」





 以下は動画についたコメント欄の一部だ。

 

『なにこれ!?スライム飼ってるのこの人!?』

『かわいいー!』

『あ、これTwitterで流れてたやつだ!』

『CGかよ!?』

『さりーにゃから来ましたー』

『いや、さりーにゃが会ったって言ってたから本物』


『やべー。マジじゃん。マジでモンスター飼ってるんだ』

『おもちちゃんかわいい!』

『ネーミングセンスw』

『だいふくかしこい!』

『ドッグフード食べて大丈夫なのかw』

『まあ、モンスターだしなんでも平気だろ』


『飼い主さん声やさしそう』

『なんか、助けてあげたらしいよ』

『めっちゃ優しいじゃん』

『主は神やな』

『回復魔法得意なんだね』

『聖人君子かよ』


『モンスターってこんなに頭いいんだな』

『めっちゃ懐いてるじゃん』

『さりーにゃいいなぁ俺もおもちちゃんとだいふくちゃんに会いたい』

『俺もモンスターかいてえええええ』

『モンスター飼うとか普通は無理だろ』

『どうやって手なずけるんだ』

『スライムおっきくなったw』


『スライムの生態謎過ぎない』

『だいふく賢いなー』

『だいふくしつけいらんな』

『もふもふいいなー!』

『スライムw』

『酔っ払いスライムは草』

『なんだこの踊りw』


 動画は、さりーにゃがあげたSNSの画像とともに、またたくまに拡散されていった。

 しかし、まだ世界の誰も知らない。

 話題のペット動画の飼い主の正体が、最近話題の【辻ヒールおじさん】だということに――。

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