第5話 ふぁ……これは最高の癒しベッドだな……


「はぁ。今日はいろいろあって疲れたな。風呂にでも入るか」


 風呂の準備をし、服を脱ぐ。

 風呂に入ろうとすると、おもちとだいふくもあとについてきた。

 どうやら彼らもいっしょに入りたいみたいだ。


「お? お前らも入るか?」

「きゅぴ!」「がう!」


 犬ってお風呂とか嫌いなんじゃなかったっけ。

 とりあえず、俺はだいふくの身体を洗ってやることにする。

 だいふくは怪我をしていたから、けっこう身体も汚れていたからな。

 ダンジョンってけっこう臭かったりするし、ちゃんと洗っておこう。

 あのままのだいふくを布団に入れるのは、ちょっとな。


 ごしごし、ごしごし。

 わしゃわしゃ。


「気持ちいいか? だいふくー」

「がうがう!」


 だいふくは体を洗われて気持ちよさそうにしていた。

 どうやら、だいふくはお風呂が好きみたいだ。

 すると、おもちも洗ってほしそうに俺のひざの上にのってきた。


「なんだ。おもちも洗ってほしいのか」

「きゅい!」


 でもスライムって、洗って大丈夫なのか?

 なんだか水をかけるとそのまま排水溝に流れていってしまいそうな気がする。

 とりあえず俺は風呂桶に水をはって、その中でおもちを洗ってやることにした。

 おもちはつるんとすべって洗いにくかったけど、なんとか綺麗になった気がする。


「なんかまた、ちょっと大きくなってないか……?」

「きゅい?」


 おもちは洗うまえよりもちょっと大きくなっている気がする。

 こいつ、洗ってる最中に水のんでるのか?

 まあいいや。

 身体を洗ったあとは、三人? で湯舟に浸かる。


「はぁ……生き返るなぁ……」

「きゅい……」「がるぅ……」


 すると、どんどん身体がお湯に圧迫されているような、違和感を覚える。

 なんというか、お風呂というよりも、大きなゼリーに浸かっているような……。


「って……おもち! お前また大きくなってる!?」


 おもちは湯舟の水を吸い込んで、こんどはクッション並みの大きさになっていた。

 クッションっていっても、小さいクッションじゃなくて、身体全身を包み込むようなデカさのあれだ。

 まずい、このまま湯舟につかっていると、こいつ際限なく大きくなるんじゃないか?

 とりあえず、俺は風呂から出ることにした。

 湯舟の中から、大きくなったおもちを引っ張り出す。

 おもちはなかなか大きくなっていて、湯舟から出すのも一苦労だった。

 重い……。


「はぁ……もうおもちは湯舟に浸かっちゃだめだな……。ていうか、水を飲まなきゃいいだけなのか……?」

「きゅぅん……?」

「もう水のんじゃダメだぞ? わかったか……?」

「きゅぴぃ!」

「おお、賢いな」


 返事はいいけど、本当にわかっているのかは謎だ。

 とりあえず、身体を拭く。

 タオルで拭いて水気をとったら、ちょっとは小さくなった。

 スライム、謎な生き物だ……。


「さあて、じゃあ晩酌といきますか」


 俺は冷蔵庫から酒とつまみを取り出した。

 風呂上りの一杯、このために生きている。

 テレビを見ながら、ビールをぐびぐび。

 ぐびぐび気持ちよくやっていると、おもちが俺のほうを見て、なにか欲しそうにしてきた。


「まさか……お前、酒が飲みたいのか……?」

「きゅいきゅい!」

「スライムに飲酒させても大丈夫なのかな……?」

「きゅいいいい!」

「わ、わかったよ……」


 本人が飲みたがってるし、まあいいか。

 さすがにだいふくには飲ませられないけどな。

 スライムだし、まあ大丈夫だろう、なに飲ませても。

 俺はすこしだけ、ビールをおもちに飲ませた。

 すると、おもちは顔が赤くなった。

 いや、スライムの顔がどこか知らんけど。

 赤くなったおもちは、そのまま部屋のなかを駆けまわったり、踊ったりしだした。


「きゅぴいいいいいいい!!!!」


 どうやら酔っ払って気分がよくなっているらしい。

 それにつられて、だいふくも部屋を駆け回る。


「ばうわう!!!!」

「おいおい! 夜なんだから静かにしろよ……!」


 でもなんだか、こういうにぎやかなのもいいな。

 ずっと一人暮らしだったから、こういうのもいい。

 見てると癒されるな。

 二匹は仲良くて、ほんとうにかわいらしい。


「はは……! 俺も混ぜろ……!」

 

 いつしかみんなでじゃれあっていた。

 ひさしぶりに、今日は俺も楽しかったな。

 そうやってドタバタしていると、隣の部屋から壁ドンが来た。

 ――ドン!


「ひ……!?」


 チキンな俺は、それでビビッてしまう。

 いそいで二匹に静かにしろと、しーっとジェスチャーで伝える。

 ただならぬ雰囲気を悟ったのか、おもちもだいふくも、おとなしくなった。


「怒られたからな……。もう暴れちゃだめだ」

「きゅい……」「あう……」


 二匹とも、申し訳なさそうに、しゅんとする。

 かわいい。


「よしじゃあもう今日は寝ようか」

「きゅい」「あう」


 俺は布団をしいて、寝る準備をする。

 おもちは俺の頭のところに巻き付いてきた。


「え……? 枕にしろってことなのか……?」

「きゅい!」

「いいのか……? まあ、確かに気持ちよさそうだけど……。じゃあ、遠慮なく」


 おもちの大きな体に体をうずめると、めちゃくちゃきもちよかった。

 これはヨギボーも顔負けの気持ちよさだ。

 今日はよく寝られそうだ。

 俺のよこに、だいふくがよってきて、添い寝する。

 だいふくのもふもふが腕にあたって、それも気持ちいい。


「ふぁ……これは最高の癒しベッドだな……」


 俺はあっというまに眠ってしまった。

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