辻ヒーラー、謎のもふもふを拾う。社畜俺、ダンジョンから出てきたソレに懐かれたので配信をはじめます。それはそうと、美少女有名配信者を助けた救世主が俺だとバレて、バズって大変なことになってるみたいですね?

月ノみんと@成長革命2巻発売

第一部

配信者編

第1話 もしかしたら、通りすがりのもふもふかもしれん。


 いったいいつになったら終わるのだろう。

 仕事仕事仕事仕事仕事ああああああああああああああ。

 先ほどから、俺はパソコンに向かってひたすらプログラミングを打ち続けていた。


 俺の名は辻風つじかぜハヤテ。


 俺はいわゆる、社畜というやつであった。


「ああああああああ終らねえええええええ!!!!」


 そう、時刻は午前2時。

 絶賛デスマーチ中なのであった。

 もう3日は家に帰ってない。

 風呂にも入らず、飯もろくに食わず、エナジードリンクが血液だった。

 なんでこんなことをしているのだろう。

 なぜ俺は会社のためにここまで命を削っているのだろう。

 いえす。

 それは俺が社畜だからである。


 終わりの見えない作業に、嫌気がさしてきた。

 ストレスがマッハである。

 もう、頭がおかしくなりそう。

 てか、もうなってる。

 さっきから頭がガンガン痛いし、今にも発狂しそうだった。


「ああああああああ、早く帰って寝てえええええええ!!!!」


 眠りそうになるたびに、自分に回復魔法をかける。

 回復魔法って、こういう使い方であってるんだっけ?

 俺は学生のころから、回復魔法がけっこう得意だった。

 けど、こんなことのために回復魔法を覚えたんじゃねえ。

 回復魔法とエナジードリンクをキメて、俺はひたすらに働いた。





 ようやく仕事が終わった。

 俺は、そっから死んだように眠った。


 そして、久しぶりの休日。

 もう仕事やめてえなとか思いながら。

 俺はダンジョンにやってきた。

 

 ダンジョンに潜ることが、俺の趣味だった。

 唯一の趣味だった。

 仕事でのストレスを解消するように、俺は週末になるとダンジョンに潜る。

 脱サラして、ダンジョン探索者としてやっていけるほど強くはない。

 そんなに強いなら、もうすでに仕事やめてる。


 ただまあ、ダンジョンに潜ることは楽しかった。

 生きてるって感じだ。

 刺激がないとな。

 仕事ばかりだと、滅入ってしまう。

 ダンジョンに潜っている間だけは、自由を感じられた。


 俺はソロの冒険者だった。

 まあ、オッサンだし、趣味でやってるだけだからな。

 そんなにガチで攻略したいってわけでもない。

 いわゆるエンジョイ勢だ。

 とくに配信とかもしていない。


 ダンジョンに潜っているような友達もいないし。

 てか、そもそも友人がいない。

 だいたい、ダンジョン探索者ってけっこう若いやつらばっかだしな。

 俺みたいなオッサンはかなり少ない。


 やっぱりダンジョンネイティブ世代は違うからな。

 今の10代20代なんかは、生まれたころからすでにこの世界にダンジョンがあった世代だ。

 そういう世代は、小さいころから修行してるから、冒険者としてもやっていける。

 俺みたいなオッサンは、せいぜいこうやって趣味で潜るだけだ。


 それに、俺って陰キャだし、今更若い連中に混ざって、パーティーを組んでもらおうなんて考えにもなれない。

 ダンジョン探索者ってみんな陽キャばっかだしな。

 俺は俺で、弱いなりにも楽しんでダンジョンに潜っていた。


 今日も、ゴブリンを倒して楽しんでいた。

 え、ゴブリンごとき雑魚を倒したくらいで何が楽しいんだって?

 いいんだよ、俺はゴブリン程度と戯れるぐらいで。

 そんな本気でドラゴンとかに挑んで、生死をかけた戦いがしたいわけじゃない。

 俺は浅瀬でちゃぷちゃぷやってるので楽しかった。


 一通りダンジョンを堪能して、もうそろそろ帰ろうかと思ったころだ。

 ダンジョンの帰り道で、冒険者とすれ違う。

 若いソロの女性冒険者だ。

 黒い長髪が美しく、陶器のように整った顔の女性。

 クールな雰囲気とはギャップのある、かわいらしい帽子を深々と被っている。

 なにかに追われているようすで、汗を流し走っている。

 どうしたのだろう。

 彼女は俺に気づくと、話しかけてきた。


「ちょっとあなた! 逃げて!」

「え……?」

「イレギュラーよ……!!!! 下層のグレートオーガが出てきたの!」


 イレギュラー、それは、本来現れるはずのない超強力なモンスターのことだ。

 ここはダンジョンの上層。

 ダンジョンは、上層、中層、下層、深層と、階層にわかれていた。

 弱いモンスターしか出ないはずのここ上層に、下層のモンスターがいる――それはつまり、非常事態を意味する。

 女性は血相を変えて、俺に逃げるように指示してくる。

 しかし、そう言う女性は、怪我をしていた。


「って、いうか……怪我してるじゃないですか! 俺に逃げてとか言ってる場合じゃないでしょ!」

「グレートオーガにやられちゃってね……。もうポーションもないし、ここは逃げるしかない……!」


 けっこうなピンチって感じだな。

 装備品からしても、この子は中層くらいの冒険者なのだろう。

 イレギュラーであるグレートオーガに苦戦して、逃げてきたのだろうな。

 俺はこういうの、見過ごせないタイプなんだよな。

 これで見て見ぬふりして、死なれでもしたら寝覚めが悪いからな。


「あの、もしよかったら、俺がヒールしましょうか?」

「え……?」

「迷惑ですか?」

「い、いえ……! ぜひお願いします! 正直、めっちゃ助かります!」

「では……! えい! ヒール!」


 俺は彼女に何度かヒールをかけた。

 これでも、回復魔法だけは人よりも得意だ。

 彼女の傷は、みるみるうちに回復した。


「あの……ありがとうございます! 助かりました!」

「いえいえ、困ったときはお互い様ですから」

「これで、まだ戦える……!」


 彼女は振り返り、後ろを向いた。

 そこにはいましも迫りくるグレートオーガが……!


「うおおおおおおおおおおおおお!!!!」


 ――ズシャアア!!!!

 ――ドシーン!!!!


 女性は、俺の回復もあって、みごとグレートオーガを退けた。

 よかった。

 なんとかなったみたいだな。

 俺はこうやって、たまに困った人がいると、辻ヒールをして助けている。

 まあ別に減るもんじゃないし、俺はいまから帰るだけだし、魔力も余ってるし。

 感謝されるのは、気持ちのいいことだしな。

 正直俺は逃げ足だけは速いから、一人ならいくらでも逃げられたけどな。

 でも、怪我をしていたみたいだから、放っておけなかったのだ。


「ふぅ……なんとかなったぁ……」

「あ、じゃあ俺はこれで」

「え……あ……ちょっと待って……! ってか足はやっ……!?」

 

 変に礼をされても、相手にも悪いし、俺はさっさとその場から去ることにした。

 まあ別に辻ヒールは見返りを求めてやってるわけじゃないしな。

 彼女が無事ならそれでいい。





 ダンジョンから出ると、もう日が暮れていた。

 俺は帰り道をとぼとぼと歩く。

 

「ん……? なんだ……?」


 家まであと少しというころ、俺は後ろを振り返って、あることに気づいた。

 なんか、俺の後ろからなんか着いてきている。

 なんだ、これ……?


 なんか、モップみたいな、変なもふもふした塊が、俺の後ろからついてきている。


 こわ……!

 毛玉……?

 なんか、もふもふした丸っこいのが、もさもさと俺の後ろをストーキングしているではないか!


「なんだ……!? なんなんだ……!?」


 もしかしたら、通りすがりのもふもふかもしれん。

 俺は気にせずに帰路を急いだ。

 家までついたけど、まだもふもふは追ってくる。

 どうやら、明確に俺のことを狙って追いかけてきているようだ。


「な、なんなんだよぉ……俺になんか用か……!?」


 家のドアを閉めようとすると、もふもふは、しゅるるるるとドアの隙間に入っていき。

 俺の家の中に入っていった。


「ひええええ……!?」


 俺のワンルームマンションの中に入っていったもふもふ。

 マジでこいつ、なんなんだ……?

 なんの生き物?

 ていうか、なに?

 なにもふもふ?

 なんの目的……?


「なにもふもふ……? お前、なに……!?」


 俺は怖かった。

 とりあえず、もふもふを追いかける。

 もふもふは俺の部屋の座布団に座っていた。


「つ、捕まえたぞー!!!!」


 俺はもふもふに近づいた。




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