第4話 びっしり

 お化け屋敷と有名な廃墟に入った。

 木造で台風が来たら吹き飛んでしまいそうなくらいにボロボロだ。

 懐中電灯を照らすと何もいない、が何かが蠢く気配を感じる。


 壁、床、扉、天井。

 一体、どこから。いや、そこかしこに。


 床の隙間で何か蠢いた気がした。

 懐中電灯で照らしながら覗いた。


「何もいない……」


 誰かが呟き一瞬、懐中電灯の光が弱まった。光が戻ったその瞬間に、いた。

 悲鳴をあげたのは誰だったろう。覚えていない。反射的に建物の外に飛び出て町まで逃げ帰った。


 見間違いでなければ、隙間なくびっしりとダンゴムシが蠢いていた。

 あの気配は全部ダンゴムシなんだろうか。


 だとしたら壁に床に扉に天井に、きっと柱の中にもいるんだろう。あれ以来、ほんとうに黒いものがダメになった。暗いところも。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る