13
ラフロは両膝を地面につけたまま、深く頭を下げた。
そして、ブティカに頼み込む。
「ブティカ将軍! どうかクスリラさんに
罰せられる者のためにひれ伏す。
他人のことを想うとても美しい光景だが、ブティカも
その氷のような目は
こんな女を
問題を起こしたのだから当然の
慈悲ならばすでに将軍が与えているではないか。
あれだけのことをして殺されないだけありがたいと思え。
ラフロには、この場にいる者すべての
だが、それでも彼女は
顔を上げ、再び声を張って見せる。
「彼女は仮にもリュドラ·シューティンガーさんの代理でこの陣に来ています! それが、もし罰を受けて亡くなってしまったということになったら、リュドラさんの
リュドラの名を聞き、兵士たちの表情が変わる。
その理由は、リュドラは以前からブティカの部隊と交流があり、兵士たちは彼女の人柄と優秀さを知っているからだった。
ブティカとラフロはもちろんのこと、この隊にいてリュドラに好感を持っていない者がいないほど、彼女は
性別も、年齢も、部隊も、身分さえも気にせず敬意を持って接してくれるリュドラ。
そんな彼女に恥をかかせたいと思うような人間は、ブティカの隊にはいない。
ラフロの言葉の後、この場にいた誰もが思う。
もし鞭打ち百回でクスリラが死ぬようなことがあれば、罰を受けるような人物を
あのような
必ず途中で死んでしまう。
だから文句を言わなかったのにと、兵士たちの
「そうだな。たしかにクスリラのような
ブティカはそう言うと、ラフロに立つように
お前がこんな奴のために汚れる必要はないと、少し
「では、鞭打ち五十……いや、三十回にしておこう」
「ご慈悲をありがとうございます、ブティカ将軍……」
「お前が礼を言うようなことじゃない。まったくこんなに汚れて……。お前に土や泥は似合わんよ」
ブティカは、立ち上がろうとしたラフロの手を取って立たせてやると、押さえつけられているクスリラを
再び鬼のような
「よかったな、クスリラ。あとでラフロに感謝するといい」
それからブティカは、一歩一歩クスリラとの距離を
「それにしても、持つべきものは友とはよく言ったものだ。お前がリュドラ
「そうですかねぇ……。あたしとがあの子と関係がなかったら、そもそも戦場へ来る必要もなかったと思いますけどぉ……」
「ふん。その減らず口もすぐに言えなくなるだろう。おい、始めろ」
ブティカの指示により、押さえつけられていたクスリラの上半身の服が脱がされた。
せめての情けか。
兵士から布を放られて、それで前は隠しているが、地面に両膝をついた状態で背中がむき出しになる。
兵士の一人がクスリラの背後に回る。
鞭を手にそれをしならせながら、彼女の無防備な背に振られた。
「一つ!」
「うッ!?」
「二つ!」
「うぐッ!?」
いつになく綺麗な月が、鞭を打たれて泣くクスリラを照らす。
打たれるたびに背中は腫れ上がり、ミミズ腫れができ始めていた。
ラフロはその様子を見てられないと顔をそらすが、兵士たちは実に満足そうに口角を上げている。
刑が終わると、クスリラはあまりの痛みに意識を失っていた。
途中から
「刑は
「はい、将軍……」
ブティカは鬼の形相のまま、再び会議をしていた軍幕の中へと戻っていった。
兵士たちは彼女のあとに続きながら、傷だらけのクスリラを見てほくそ笑む。
これに
「うぅ……終わったんだねぇ……」
「気がつかれましたか、クスリラさん。待ってください。今手当てします」
ブティカと兵士が去った後、クスリラは意識を取り戻した。
目に涙を浮かべながら、苦痛で顔を歪めている。
「痛い、痛い……こんな痛いの初めてだよぉ……」
だが、そんなクスリラだったが、彼女は目を腫らしながらもその口元は微笑んでいた。
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