番外SS 『うどんと家族』

「キュウキュウ!」

「ん、どうしたおもち」

「キュウ」

「流石に……遠くないか?」

「キュウー!」


 ソファで横になりながらおもち枕をしていたら、テレビで大人気のきしめんうどん店が放送されていた。

 ちなみに朝起きてうどんは食べている。


 俺とおもちは、昔よりも意思疎通のレベルが上がっていた。


 何を言っているのか、何を考えているのか、どんなうどんを食べたいのか。

 茹ですぎか、茹でなさすぎか、今日はネギありかなしか、そんなこともわかるようになっていた。


「ただいまー」

「ぷいにゅー」

「がぅがぅ」

「グルゥ」


 そのとき、買い物に出かけていた御崎が、田所を頭に乗せて帰ってくる。

 隣にはグミと、ペロペロキャンディを買ってもらったフレイム。


 近所のスーパーに行くたび、最近ねだってくる。

 だがやっぱりフレイムはあえて言わない。


 ジィと見つめながら、硬派に訴えかけてくるスタイルだ。


 それもまた可愛いが。


「どうしたの? おもちゃん鳴いてるよ?」

「キュウキュウ!」

「ああ、おもち、じゃあ行くか?」

「キュウ!」

「よし。じゃあ、御崎お出かけしよう。うどんドライブだ」

「う、うどんドライブ?」


 事情を説明した俺たちは、車に乗り込んでナビをセットした。

 四時間ほどかかるが、後部座席は以前、改造したテイムモンスター用なので快適になっている。


 飲み水に簡易トイレ、更には睡眠しながら体を固定してくれるシートベルトまで。


「阿鳥、途中で交代するから言ってね」

「悪いな。でも大丈夫だ。なんだって――一国の主だからな」

「ふふふ、そうだね」


 そういって、御崎はお腹をさすりさすり。


 そう、なんと俺たちの間に子供が――できたのだ。


 まだ男か女かはわからないが、これからわかるようになるらしい。

 もふもふ配信者から、もふもふファミリー系配信者になる日も遠くない。


「さて出発だ。みんないくぞ!」

「「「おおー! キュウ、ぷい、がう、グルゥ」」」


   ◇


 それからピッタリ四時間、休憩をはさみながらも無事にうどん屋さんに到着した。

 お店自体は小さいものの、驚いたことに行列が凄かった。


 いや、凄すぎた。


「すみません、今日の分はすでに終わってしまったんですよ。今は、整理券をもらっている人だけで」

「そうなんですか。だってさ、おもち」

「キュウ……」


 残念だが、受付のお姉さんにそう言われてしまっては仕方がない。

 だがそのとき、驚いて声をあげた。


「え、もしかして、おもち!?」

「知ってくださってるんですか?」

「はい! よくみればアトリさん! それにミサキさんも! えー、凄い凄い!」


 みんなの事も知っているらしく、お姉さんは嬉しそうだった。

 配信をしていると、こうやって声をかけてくれることが多い。


 有名人になったみたいで気分も良いし、俺たちと出会ってくれたことで喜んでくれる人がいて、笑顔が溢れる。

 これぞ、配信冥利に尽きるってヤツだ。


「あ、そうだ! だったら――特別ですよ」

「え?」


 そして更に俺たちは、嬉しい事が起きた。


 自宅に戻ったあと、ミニグルメダンジョンへ入り、配信を付ける。


「ご主人ちゃま、つきましたよ!」

「ありがとうドラちゃん」


『お、アトリいいいいいいい』

『サプライズ配信だ』

『ミニグルメダンジョンか』

『みんな大集合だ』


「突然だけど、みんな集まってくれてありがとう。って、マジで多いな」


 同時接続数は、既に数十万を超えていた。

 そういえば休日だが、それでも多い。


 あとりふぁ~むのおかげで、登録者数は勢いが増している。


「今日は何と――うどんパーティをします」


『うおおおお、ってうどんパーティ!?』

『めずらしい』

『おもちの大好物だ』


「これは、香川県のXXX市、XXXX店のきしめんで――」


 それから俺は、冷凍うどんの紹介に入った。

 お姉さんがご自宅でどうぞと、郵送の限定うどんを譲ってくれたのだ。

 タダでという事だったが、申し訳ないので配信で紹介することにした。


 これがまた好評で、みんな買いたいと言ってくれて嬉しかった。


 そうしているうちに、紬と雨流がやって来る。


 学校終わりと、海外から戻ってきているのだ。


「こんにちはっす! うどんパーティと聞いてきました!」

「お久しぶりーっ!」


『紬とセナちゃんが相変わらず可愛い』

『癒しコンビ』

『紬ちゃんの制服姿いいね』

『セナちゃん少し大人っぽくなった?』


 コメントの通り、確かに雨流は少しだけ大人びていた。

 まあ、少しだけだが。1センチぐらいは伸びたらしい。


「紬、雨流、もうすぐうどんが出来上がるみたいだ。雑談、頼んだぞ」

「任せてください師匠!」

「あーくん、おもちはー?」

「今、うどんの茹で具合に必死だ」


 視線を向けると、大きな寸胴鍋をおもちがじっと見つめていた。

 どうやら本気らしい。

 羽根が入りそうだ。


『ワロタ』

『うどん職人の朝は早い』

『おもちが丹精を込めて解凍します』

『やること見つめるだけなんよw』


「キュウウウウウウウウウ!」

「は、はいすぐ行きます!」


『アトリマンが完全に店員』

『部下でワロタ』

『きびきび動くんだ!』


 おもち先輩の言う通りに動いた後は、全員分の器にうどんを用意。


 行き渡ったところで、食事開始だ。

 つるつるとコシのあるうどんが口に入ると、小麦粉の香りとダシの味が広がる。

 冷凍とは思えないほど美味しい。


 これが、おもち流。

 いや、わからないが。


「美味しいねぇ阿鳥」

「だな」


『イチャイチャ』

『マジでいい夫婦だよな』

『子供も生まれるんでしょ? 楽しみ』

『配信は任せるけど、幸せな家族を見たいので出来たらしてほしい』


 子供が生まれた後の事はまだ考えていないが、いずれそういうのもありかなと思う。

 当分先だと思うが、考えておこう。


「キュウキュウ」

「ありがと、おもちのおかげで配信が大盛り上がりだ」

「キュウ」


 すると、田所が「おかわり入れてだって」と、教えてくれた。

 最近は魔力が高まってきているのか、ミニグルメダンジョン内でたまに喋る。


「はい急ぎます」

「キュウ♪」


 ま、そんな感じで、幸せな生活が続いてるぜ。


 ――――――――――――――――


 このたび新連載を始めました。

 異世界ガイドマップというスキルを得た主人公が、クチコミや様々なスキルで旅をするお話です。

 今までの培った面白い部分が出すことができたらなと思います。


 良ければ見てほしいです! 何だったらフォローだけでも! いや☆だけでももらえませんか!? 一人の力が大きいのです(^^)/


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会社を辞めて不死身のフェニックスとのんびりスローライフ&ダンジョン配信生活! 菊池 快晴@書籍化進行中 @Sanadakaisei

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