73話 第一回、テイムモンスター大会開催ッ!

「伝説のフェニックス、おもち選手!」

「キュウキュウッ」


 ミニグルメダンジョン温泉内、湯舟に漬かった状態で俺が紹介すると、おもちが颯爽と歩いてくる。

 いつもよりは鋭い目つきに、相手はおそれおおのくだろう。


 これで戦闘部門・・・・は、俺たちのものだ。


 ちなみにこれは本番じゃなくて、ただの練習である。


 次に声を上げたのは、御崎だ。


「続きましてー、コメディ部門、たどちゃーん!」

「ぷいぷいぷいにゅ~!」


 ぽよんぽよんと跳ねながら、ロボット、大きなバナナ?、その他よくわからないものに変身していく。

 御崎&田所のコンビは、優勝候補で間違いない。


 そして――。


「お水をぴゅーぴゅー、最強グミ!」

「がうううううううう!」


 水着姿の雨流を乗せてグミが現れる。

 お水がぴゅーと出て、雨流のピチピチの肌に当たって弾けて綺麗な虹が出来ていた。


 その姿を見ていた住良木とドラちゃんが、ダンジョン内に響き渡るほどの拍手をする。


「完璧っす! 三冠王達成っす! テスト勉強と被ってなければ出たいのに……でも、応援は行くっすから!」

「いいでちゅね! あたちの分まで、楽しんでほしいでちゅ!」



 事の発端は数週間前、とあるテレビだった。

 大手テレビ局が大量のスポンサーでテイム大会を行うと発表。

 そこで第一回、テイムモンスター大会というのを知ったのだ。


『ほお、なんかすげえな』

『三部門なんて豪華ね』

『興味なーい』


 初めて見た俺たちの感想は、なんかやってるなあぐらいだった。

 御崎も雨流も、テレビに出たいという欲なんて皆無だ。


 なのになぜ俺たちがこんなにもやる気なのか? それは優勝賞品にある。


 部門は、戦闘、コメディ、魅力に分かれており、賞金100万円がそれぞれついてくる。


 コメディは、なんと『世界中のお笑い系の劇場や施設に年間無料パスポート』だ。

 御崎はお笑いが好きらしく、これを見た瞬間テレビにかじりついた。


 魅力は、『大好きなテイムモンスターそっくりの高性能ぬいぐるみ、更に鳴き声も追加、それも複数セット』だ。

 これには雨流も大興奮で、モンスターセットを作って家でモフモフしたいらしい。金持ちなので出来るんじゃないかと思ったが、特殊な魔石も使うらしく、本物そっくりになるとのことだ。


 そして――戦闘。


『なんと戦闘部門には、幻の魔法具『魔法の指輪』が付いてきます!』


 俺は言葉を失った。

 なぜなら幼い頃、喉から手が生えるほど欲しいと思ったものだ。

 指に装着すると、術者の魔力の質に応じて、指先から高密度の魔力が発射される。


 つまり、俺の指が銃みたいになるのだ。


 今でも手の平から水弾を放つことはできるが、威力はそれほどなく、魔力効率も悪い。

 だがこれがあれば、中二病みたいにバンバン撃てるようになる。


 近距離は剣、遠距離はバンバン!


 こんなの、男の夢じゃないか!


 テレビの放送が終わった後、俺たちは三銃士となった。


『俺より強い奴に会いに行く』

『私より笑いをわかってるやつなんていないわよ』

『愛、それは魔物を愛する心』


 ということで、参加が決定して、研鑽を重ねることになった。


 俺とおもちは訓練室を借りたり、ダンジョンで修行をしたり。

 御崎と田所はお笑い番組を見たり、なんか色々したり。

 雨流とグミは一生懸命モフモフしたり、お散歩行ったり。


 そんなこんなで努力をしていたら、時が過ぎていった。


 そして来たるべき当日、俺たちは会場の前に立っていた。

 ドーム貸し切り、会場内は既に観客が入っているらしく、声援が聞こえる。


 当然のようにテイムモンスターが大勢歩いている。

 こんな光景が日常で見られるようになったんだなあと、感慨深い。


「ねえ、あの人なんで赤い服着てるの? 炎耐性(極)ってなんだろう?」

「えーでも、あれ、フェニックスじゃない!? 凄い、強そう」

「あ、おもちだよ! 私知ってる!」


 俺は正装だった。自らを鼓舞する為に、欲に打ち勝つ為にも、この格好が相応しいと思ったのだ。


「阿鳥、やっぱり少し離れて歩かない?」

「そうだね、あーくんごめん」

「すぐ着替えてきます」


 ということで着替え終わった俺は、いや俺たちは、ついに会場に足を踏み入れようとしたら――後ろから声をかけられた。


「山城、今日はよろしくお願いします」

「こんにちは、良いお天気ですね」


「まぢ……」


 雨流・ミリア・メルエット、そして佐藤・ヴィル・エンヴァルトだった。

 探索協会が協賛に入ったとは聞いていたが……まさか……。


「もしかして、戦闘部門に参加するなんて言わないよな。いや、言わないでくれ」

「どうしてわかったんですか? その通りです」

「……。佐藤さんは、コメディ? 魅力?」

「わたしも戦闘です」


 おもち、俺たち優勝無理かも……。


「キュウ?」



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