58話 初めてのA級ダンジョン
「
先頭で駆けた住良木が、A級ダンジョンの敵を前に怯えることなく突き進む。
さすが、ソロで今まで戦っていただけあって、度胸がある。
そして今までの敵と一番違うのは、その巨大さだ。
大は小を兼ねるというべきか、とにかくデカい。
ただ比例してダンジョンもデカいので、おもちが空を飛ぶのには最適だ。
今いる場所はA級でも難易度は比較的低いとされているダンジョンで(といっても強い)、住良木が何度か来たことがあるとのことで、ここに決めた。
「グアアアアアギ!」
ベアロックスと呼ばれた熊のような魔物は、毛皮が厚く打撃や魔法に対して防御力が高い。
加えて鋭い爪もあり、自身に魔法を付与するらしく、今までと違って一撃粉砕! とは難しかった。
このあたりからは敵との相性だったり、それこそボスクラスになると
実際このベアロックスも防御力を上げた魔法を無詠唱で発動、更に鋭く大きな爪を強化し、俺たちを切り裂こうとしている。
だが住良木の機敏さは予想以上だった。涼しい顔で攻撃をよけつつ、打撃を与えてベアロックスを退けさせた。
『戦うJK強い』『時折見せるスパッツえろい』『紬ちゃん、頑張れー!』
もちろん配信もばっちりOK。親御さんの許可もOK。
御崎は後ろで周囲を警戒しつつ、不意打ちを食らわないように守ってくれている。
今回はそこまで無理をせず、お互いのチームワークを合わせようと話をしていた。
なので、住良木の合図に合わせて、俺たちが動き出す。
「師匠!」
「おうよ! おもち、グミ!」
田所は攻撃力も高いが、ダンジョン内だと言語も操れるので御崎の傍にいてもらっている。
索敵能力もあるので、後ろにいるだけでも立派な後方支援だ。
ちなみにグミはA級ダンジョンの魔力を吸収したのか、巨大な水龍になっている。
魔力マシマシ、もふもふマシマシ、水分過多!
『グミが進化してるw』『いや、元はこれなんでしょ?』『強そうww』
そこにおもちの炎のブレスとグミの鋭い水弾が放たれると、大きく重心がズレる。
「ギアアアアアアアギイイイイ!」
「とどめは任せたっす!」
その隙を見逃さず、態勢を崩した足への一撃をお見舞いする紬。その動きは明らかに空手か何かだった。ろうか。
動きがしなやかだ。
そして俺は致命傷となる一撃を与える。
次の瞬間、ベアロックスは大きな音を響かせて倒れ込む。
「ふう、やるじゃないか住良木」
「へへっー! ありがとうございます!」
思わずハイタッチ、遠くで御崎は母親のように眺めていた。
魔物の手ごわさには驚いたが、この面子ならどんな敵にも対応できそうだ。
「魔石よ、たどちゃん!」
「はい~~~!」
御崎と田所は、ぴょんぴょんと飛び跳ねるかのように駆ける。
いいコンビだな。
二人がいそいそと魔石を取ってくれている間におもちとグミを労う。
「ありがとな」
「キュウキュウ」
「ガウ!」
『最強面子が揃ったな』『実際、日本で組んでるパーティでも一番じゃない?』『可愛い×強い×もふもふ×』『ツムギンイイネ!』
ひとまず肩慣らしという感じだったが、見事大成功を収めたのだった。
◇
「みてみて、凄い……」
「これは、ヤバいな」
狩りを終えた俺たちは、住良木にもミニグルメダンジョンを紹介させたかったこともあり、自宅に戻ってきた。
御崎がアイテムボックス(大和から借りている)から取り出した魔石の量は、今までは考えられないほどの量と大きさだった。
なるほど、シンプルに身体がデカいと、魔石もデカいのか。
「これ、いくらするんだろう$」
「どうだろうな、色もなんか綺麗だな」
「綺麗だー$」
「ヒ〇カみたいに語尾になんか付いてるぞ……」
そんな中、住良木はチョコレートウォールに感激していた。
「うま……美味しい……っす……」
JKが壁を舐めている姿は破壊力があるな……。
ということで、全員等しく分配することにした。
紬は遠慮していた。一人だと時間がかかって一つか二つ、それも小さいのしか普段は手に入らないので、俺たちのおかげだと。
だがそんなことはしない。
「え、じゃあこれからも一緒にいいんですか!?」
「ああ、むしろ歓迎だ。配信をする以上、どうしても俺たちは周りがおそろかになりがちだからな。前衛は助かる」
「そうね、何もしてない私が言うのもなんだけど……つむちゃんは頼りになるわ」
聞けば住良木の実家は割と貧乏で、父親が心臓病を患っているらしい。
それもあってお金があるのはありがたいとのことだった。
初めは変な子だなと思ったが、とてもいい子で安心する。
「なんか、夢のようです! 私、頑張ります!」
「まあのんびりやろうぜ。スローなライフが俺たちの望むところだらな」
「そうね。あ、良かったらつむちゃん一緒に温泉入っていく? 最近、コニワトリの温泉卵を開発してるんだけど、結構美味しいんだよね」
「いいんですか!? 入るます!」
すると突然、制服を脱ぎ始める。慌てて離れようとしたが、住良木と書かれたスクール水着が目に飛び込んでくる。
「……常備してんのか?」
「ダンジョンで水に浸かることもありますから!」
用意がいいなと思ったが、気づいたら俺は浮いていた。
何が起きた!? なんてもう言わなくてもいいだろう。
「ゆっくり下ろしてくれよ」
下で怒ってるであろう御崎に対して声をかけると、天井の染みを一つ見つけた。
今日は頑張ったから豪華にステーキにしようかな。
もちろん、うどんは忘れずに。
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