32話 生まれて初めてのモンスターラン

 昔飼っていた犬の名前が『むにゅ』だった。

 いつもほっぺがむにゅっとしていたからだ。

 

 その頃、何度かドッグランに連れて行ったことがある。


 隔離されたスペースの中で引き綱をはずし、自由に運動させることができるので、むにゅはいつも楽しそうだった。


 そして未来、今現在。


 俺と御崎、おもちと田所は新しく出来た『ヤマビコ・モンスターラン』に来ていた。


「それでは消毒をお願いします。後こちらにの注意点をよく読んで頂き、サインを頂けますか?」

「わかりました」


 そこには、テイムした魔物しか入れないと書いてあったり、魔物の相性などが記載されていた。

 基本的に人間に属した魔物は人を傷つけることはほとんどないが、極まれに魔物同士が喧嘩することもある。

 なので、ある程度区分けされているのだ。


「ふむふむ……あれ、どうしよう……」


 しかしそこに、フェニックスとファイアスライムの項目はなかった。

 よくよく考えたら当たり前か。


「おもち、田所、ごめん。パパよく知らなくて……入れないかも」

「キュウ!?」

「ぷい!?」


 二人は柵越しに中を眺めていたが、慌てて振り返る。

 中には輪投げやおもちゃ、大勢の魔物が楽しそう遊んでいる。当然、通常のスライムや鳥の魔物もいるので、早く一緒に遊びたいという感じだった。


「帰ってアニメでも見よっか……」

「キュウ……」「ぷい……」


 遠出したりするときに限ってお店が休みだったり、こういう土壇場のトラブルってなんか、起きるよね……。

 


「――上に確認しましたが、問題ないそうです」

「まじっすか! 大丈夫だってさ、おもち、田所!」

「キュウー!」「ぷいぷいっ!」


 と、思っていたら、受付のお兄さんがトランシーバーで連絡を取り、何ととか説得してくれたらしい。

 とはいえ、何か問題が起きたら困るのでと誓約書が二十枚くらい書かされたが、他は問題なし。


 いやでも……多すぎん!?


 そして俺たちは許可を得て配信をすることにした。

 御崎はスマホをセットし、『動かしてあげる』を発動。


「お久しぶでーす。ミサキです!」

「アトリですー、ミニグルメダンジョンで忙しかったのですが、ようやく落ち着きました」


 よく見ると登録者数が増えている。

 どうやらダンジョンの動画がかなりバズっているようだ。


『久しぶりー!』『窃盗団のニュース見たけど、大丈夫だった?』『どこだここ?』『ミサキちゃんだー!』

『おもち、おもちだ』『田所どこ? 見えない!』


 コメントの通り、以前の連中は大きくニュースになっていた。そのことで議論は過熱化しており、近いうちに法の整備も整っていくといわれている。そしてそこにおもちや田所、俺や御崎、雨流のことも書いていたらしく掲示板にスレが立ってるとか。


 ドラちゃんの炎上以来エゴサは辞めた。俺のメンタルは強くないからな!


「今はモンスターランに来ています。場所は都内の最近出来たところなので、かなり大きいですね」


 それから『ヤマビコ・モンスターラン』の紹介に入った。

 施設は一般的な大きな柵で囲われているところがメイン、後はトリミングやプール、お土産ショップもある。

 モンスターの一時的な預かりも可能らしく、何かあってもいいように病院も隣接している。


『ヤマビコ楽しそうだな』『値段は?』『魔物がいないと入れないの?』


 有料だが、値段はそんなに高くなかった。テイムした魔物がいないと柵の中には入れないが、外からは眺めることができる。

 このあたりは施設によって違うらしく、俺がいるヤマビコではそうらしい。


「じゃあ、おもちと田所が我慢できないらしいので、そろそろ遊びたいと思います!」

「キュウキュウー!」

「ぷいっぷいぷいぷい」


 二人のテンションはマックス。それが可愛いらしく、配信も盛り上がっていた。


 柵の中に入ると、周囲から魔力が感じられた。

 壁――いや、バリア魔法が張られているみたいだ。なるほど、用意周到だな。


『すげえ、魔物がたくさん』『楽しそう、皆子供みたいだね』『犬かと思ったらウルフか』


 パーク内は大盛況で、魔物が大勢駆けまわっていた。

 空中にはふよふよ浮いている輪投げがあり、おもちがうずうずしている。


「おもち、我慢しなくていいぞ」

「キュ!」


 地を蹴ったおもちは高く飛び上り、オリンピック選手並みにクルクルと回って次々と輪に入っていく。

 もの凄く楽しいらしい。


 けれども……すごく目立つ。


「あれ、フェニックスじゃね? すげえ」

「まじ? 赤いだけじゃないの?」

「いや、俺みたことあるぞ。おもちだ!」


 まあ別にバレてもいいんだが……恥ずかしさと嬉しさが混在する感じだ。


 それからおもちは田所を背中に乗せて遊んだりしていた。

 鳴き声からもわかるが、最近で一番楽しそうだ。


 同時に、最近は色々と考えるときがある。

 おもちと初めて出会った時のことだ。なぜおもちは死にかけていたのか。

 今まで幾度の敵と戦ったが、おもちが瀕死になったことなんてない。

 どのダンジョンから飛び出してきたのか……どんな敵がいたのか、まだまだわからないことだらけだ。


「キュウー!」

「ぷいぷいー!」


『なんかロボットになってね?w』『なにあれwww』『さすスラw』


 気づけば二人は「田所ロボット改おもちver 」に変身していた。楽しそうで何よりだが、少しトラウマなので身構えてしまう。

 あれは危ないんだよ!


「キュウ?」

「ガウガウ!」

「ゴブゴブ!」

「ぷいにゅ!」

「チューチュー」


 気づけば二人にはお友達が沢山出来ていた。

 ゴブリンにウェアウルフにネズミ? よくわからないが、意気投合したらしく順番におもちの背中に乗っている。


 ……もうなんか、知能凄くない? 人間超えてない?


「みてみて、僕のウルフが楽しそう」

「私のチューコも」


 あ、ネズミはチューコって言うんだ。

 

 それから飼い主さんとも少しお喋りをしつつ、専用のフードのことや他の施設のことも教えてもらった。

 後、ちなみにチューコの飼い主はすげえ可愛かった。正直ちょっとタイプだった。


『ほのぼの回好き』『見ていて癒されます』『落ち着きます。寝る前にみかえそw』


 どうやら皆もほのぼのしているらしく、俺もほっこりした。


「ねえ、さっき女の人と何話してたの?」


 その時、御崎が少し口をとんがらせながら訊ねてきた。


「ああ、魔物の話とかだよ」

「ふーん、そのわりには嬉しそうだったね」

「そ、そうか?」


 ぎ、ぎく。まさかみられていたとは……。


『ミサキ、お前……』『女心がわからないアトリ』『鼻の下は確かに伸びてた』


 このままでは怒られエンドになってしまう……。どうすれば……。

 そうだ、本音を混ぜつつ、御崎がなんでやねんっと笑ってくれるように!


「でも、御崎と話してる時が一番楽しいよ」


 とはいえ本音だった。御崎なら「なんでやねん」と突っ込んでくれるだろう。

 と、思っていたら、頬を赤らめながら御崎が恥ずかしそうにそっぽ向いた。

 なんだか、耳まで赤い気がする。


「……配信中なのに」


 あれ? これってどういうこと? 

 もしかしてなんか俺って、変なこといった?


『女心がわからないアトリ』『朴念仁』『みなまで言うな』『温かい目で見守ろう』

『アトリめ』『幸せ炎野郎』『燃えつきないけど燃え尽きろ』


 うーん……女心ってよく、わからないな……。


―――――――――――

 【 お礼とお知らせ 】


 モンスターランでゆっくりを羽根を伸ばせたみたいです(^^)/

 それにしてもアトリは女心がわからないみたいで……。


「モンスターラン楽しそう」

「ほかの魔物も気になる」

「この話の続きが気になる」


そう思っていただけましたら

ぜひとも、フォロー&☆で応援をお願いいただけますでしょうか?


★ひとつでも、★★★みっつでも、大丈夫です!


現時点での評価でかまいません。

よろしくお願いします!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る