一難去って(ただし自分から突っ込んだものとする)
▽▽▽▽
「おつかれー」
「お?おー。どーも」
「すっげぇなぁ。砲身真っ二つじゃん」
「よせやい。褒めんなよ」
「あら謙虚」
「この程度で俺の評価決められたくないんで」
「謙虚じゃない……」
キュ、と顔を顰めてそうな声に喉の奥で笑いながら振り返る。柱に寄りかかり、悠々とした態度でこちらを見る彼女にひらりと手を振った。べ、と小さく出された舌にまた笑いが込み上げてくる。これ以上は拗ねるかと、堪える為に声を張った。
「おい、俺こいつらのことなんもわかってないんすよ。あんたが来ないと何すりゃいいのかわかんないでしょうが」
「んー」
返事ともつかない音を返す閃鬼に向き直る。腑抜けた声色から一転、こちらを見る瞳は予想外に強く、思わずギクリと固まった。真っ直ぐ観測してくる碧い瞳から逸らした視線を戻し、笑う。
「なんだ。俺の仕事ぶりは気に入っていただけたと思たんだがな……。クビ、か?」
言った後自身の女々しさに下唇を噛む。閃鬼が目を見張ったのがわかって余計に気分が落ち込んだ。
しげしげと俺を眺める瞳が瞬きする度に空の時間帯を変えていく。直ぐに離れるつもりではあるけれど、この瞳が見れなくなるの勿体ない。あと不甲斐なさに普通に凹む。
俺だけを映す宵空に耐え切れなくなってとうとう爪先まで視線が落ちた。
「んーん」
聞こえた否定らしき声に現金にも視線が上がる。
何か言いたそうにむずむずと動かしていた唇を笑みの形にし、閃鬼が左右に首を振った。
「言ったろ。良い拾いものした、って。あたしから君をクビにすることはないよ。悪いけどね」
「悪くはないが」
「そ?それは何より」
なんかやたらと楽しそうだな。いらんこと言ったかもしれん。まぁ俺の働きがお気に召したのならば良いとしよう。
いつの間にか強ばっていた指を動かし、硬直を解す。掻いていた乱雑に手汗を服で拭った。
眼力、というのだろうか。これが何らかの異能に因るものかはわからないが、視線自体にこちらを竦ませるだけの圧がある碧眼だ。蛇に睨まれた蛙はきっとこんな気分なんだろう。
五月蠅い心臓を落ち着けてる俺とは対照的に閃鬼はるんるんと楽しそうだ。
偶然拾った武器が強いってそんな嬉しいもんかね。俺は自分専用に誂えられたものがピッタリ嵌った方がアガるのだが。
「えらく楽しそうだな」
「いやぁだって」
閃鬼がこちらに一歩踏み込む。猫の様な動きで懐に潜り込んできた小さい身体に虚を突かれ、思わず身を引く。下から覗き込んで来るアウイナイトに吸い込まれそうで。クソガキみたいな、っていうか事実クソガキからの笑みに喉が鳴った。
「君が思ったよりもここを気に入ってくれてるっぽいからねぇ。そりゃあ嬉しくもなる」
「んぐ」
言い返そうとしたのに、締まった喉ではぐうの音さえ満足に出なかった。
なぁんか腹の奥の座りが悪いと言うか。今までにない感覚が落ち着かない。普段とは逆に見透かされている気がするからか。
閃鬼にからかわれたのがそんなにイラッときたのか。疲れて余裕がないのか。いや、それとも。
「……ここって薬物関係んとこだったりします?」
「お、よく分かったねぇ。当りぃ。夜、此処はクソヤバドラックパーティーの会場になるんだよ。昼間は基本的に人来ないからさぁ。取引に利用されたの」
「……ダンスするにしてはロマンの欠片もなくないですか?」
「思い思いにキメるだけだから。屯できる場所さえあればいいんじゃないの?昼間は基本的に人来ないからさぁ。取引に利用されたんだよ。昨日の夜が前回で次が今日の夜」
「毎夜とは豪勢なこったなぁ。んじゃあこいつら夜までに起きなきゃジャンキー共に見つかんのか。それまでに目ぇ覚めるといいな」
気絶させた足下の奴を爪先で小突く。ただでさえ治安が悪いのにそんな奴等に絡まれるとか、考えただけでゲンナリする。
にしても成程。だからこのざわつくような焦燥感か。
薬物耐性はそれなりにあると思ってたんだが……。この街のドラックだからなぁ。空気に成分が残ってたりとかしそうだ。それか保管されているのが暴れたせいで漏れたとか。思えばさっきのリーダー殿もなんか情緒おかしかったもんな。クスリのせいならば納得がいく。
僅かに呼吸を狭める。精神が不安定になっているせいだろうか。やたらとアウイナイトが輝いて見える。落ち着け。俺はこんなにちょろくないだろ。
他に自覚できる症状は出ていない。閃鬼は……見た目では大丈夫そうだが。そもそも普段からまともじゃ無さそうだしな……。
目元を手で覆い、俯きながら力ない呻き声を漏らす。態と疲れた態度を取って無自覚だった不調を自覚する。
うん。よし。
「んで?結局これが目的のブツってことで良いんです?」
「あっ」
ひょいっとトランクケースを持ち上げる。荒っぽく、急な動きに閃鬼が声を上げた。俺はパッと動いた顔に合わせて眼鏡に掛かった髪を掻き上げ、彼女の耳にかける。さらさらとした黒に混じった白の部分だけ違う指どおりが嫌いじゃない。
「ぇわっ」
「おっと」
ザッ、と仰け反るように距離を取られる。が、瞳はズレることなく俺を見ていた。漏らした苦笑が青く透き通ったアウイナイトに反射した。
驚愕はあれど、嫌悪はない。
こんなところに連れて来られた意趣返しだと、腕を伸ばして髪を梳く。くすぐったそうに閃鬼が眼を細め、無言のまま頭を振った。今度は明確に非難を含んだ視線に両手を上げる。
「猫みたいなリアクションしますね」
「お?女の子の髪を無断で触ったことへの謝罪は?」
「……すいません」
べ、と短く舌を出した閃鬼の目がからかいに色づき、ふいっと逸らされた。本気で怒っているわけではなく、俺を焦らせたいが故の対応だ。
やっぱり閃鬼は身体的接触は嫌いじゃない。寧ろ好むタイプっぽいな。それなのに距離を取られるのは慣れてないのか。警戒されているのか。
今も無防備に敵に向かって歩いて行くのを見ると、本当に警戒心があるのか疑問に思えてくるが。
とことことした足取りはヒヤヒヤする。そりゃあ念入りに、完璧に意識を飛ばしちゃいるが、絶対に目覚めないとは言えない。何時覚醒するかは個人差がある。武器の回収もしていない。何考えてんだアホか。
急いで踏み出しかけた足を踏み留める。深く吸った息を吐き出して、ゆっくりと閃鬼の元に足を進めた。リーダー相手に何か物色してやがるのを一歩後ろから手元を見ないように覗き込む。
「それで?」
「ん。今回君がブチのめしたのはまぁよくある犯罪組織の一つでね。幅広く、と言えば聞こえはいいが実際は広く浅くって感じのところでさ。普段は違法薬物とか人身売買の商品とか運んでるんだけど。今回ちょーっと、気になる物を取り扱うって噂があったからさ。かっぱらっちゃおっかなって」
「はぁん。人身売買たぁ思った以上に穏やかじゃないな。そんで思った以上に情報屋の範疇じゃなくないです?それ」
「パクった後に調査、観察するから立派な仕事でしょ。それで得た情報が飯の種になるんだよ」
「だとしてもこんな派手に壊滅させる必要は……何割趣味?」
「7……いや、8?」
「はい」
はい。
趣味を仕事に、とはよく言うがな。自分の好き嫌いが行動理由でついでに取れる時に金も取っちゃおうって感じか。一件の仕事で損しても気にしないのだろう。採算度外視で動き出して、適当に利を回収しようとしているし、できている。それだけの能力がある。
なんとなくそういうある種の趣味人な気はしていた。……俺を助けた経緯がそんな感じだもんなぁ。
まさか何も話していないうちから俺が快くボディガードを引き受けるとは思っていなかっただろう。戦いになる可能性があった分、損する公算の方が高かった。そちらの方がスリルがあって得だとすら考えているかもしれないが。
溜息を吐きながら手持ち無沙汰に周囲を見回す。地面に転がる人間共と地を這う様な呻き声。ブッた斬られた砲台と転がる小銃。この手の
「にしても、あんたが愉快犯なことを知ると微妙な装備でしたね。この街に成れてるあんたが興味を引かれるっていうことは、それだけとんでもないもん扱ってるってことでしょ」
多分俺が思っている以上の厄ネタを。
それにしては人は弱いし、人数も少ないし、武装もしょぼい。
その”気になるもの”の価値をわかっていないというか、扱えなさそうな気配がする。いや、俺もこの件について全然わかっていないけど。
「まぁここはただの待ち合わせ場所だしねぇ」
「……あ?」
「なんかほぼ偶然手に入れちゃったからもっと”上”の連中相手に売りつけるんだって」
手持ち無沙汰で適当に振っただけの話に、同じくなんでもない様子で告げられた。や、でも今聞き逃せない言葉だったよな?
「……え、此処これから人来るんです?」
"それなり”以上の連中が?
急いで閃鬼を振り返る。同時耳を澄ませた。微かに感じたのは数人の気配。
あ!?これか!?いやわかんねぇな。戦闘訓練を受けたことがある人物特有の、行儀よく消した足音かとも思ったが……。気のせいか?多少なりとも薬物の影響が出ているのだし、焦りによって幻聴が聞こえてもおかしくない。
「うん?うん」
うんじゃねぇなぁ!
頷いた閃鬼の腕を引っ張り担ぎ上げる。トランクケースをひったくった。急な激しい視界の転換と振動に肩の上で上がった悲鳴を無視し、手近な窓を開け放つ。
「あ、待って待って!」
「あん?」
入る前に見た、ビルの外観や周辺の様子を思い出しながら窓枠に足を掛ける。身を乗り出した所で空中に浮いた足を激しくバタつかせる閃鬼を取り落としそうで動きを止める。気絶させた方が運搬楽なんじゃないかと本気で思いながら見下ろした。
「鍵鍵鍵!まだみっけれてないの!」
「はぁ?……トランクケースの?無かったんです?結構ゴソゴソしてましたよね?」
「無かった……」
暴れていた閃鬼が一転、全身の力を抜いた。使い古したふとんを干した時の様にくたりとした様子に眉を顰める。
「今此処にないんじゃないんですか。それ」
「……そうかも」
「あんた……今更……」
「だぁら今探してんだっつの!」
「無い物探してどうすんですか……」
再度駄々っ子のようにばたつきだした閃鬼を抱え直しながらトランクケースを持ち上げ、鍵穴を覗き込む。
“外”では見ない複雑な鍵穴だ。軽く叩いた感触からケースも頑丈なことがわかる。……やっぱ“それなり”に良いもん使ってんなぁ。
「……この街ならピッキングなりケースぶっ壊すなりなんなり、探せばいくらでも方法があんでしょう。アテは?」
「何度か頼んだことがある“開け屋”が居たんだけど最近“パドリールの筺”開けれちゃって……」
「何だそれ知らん」
まぁ多分本来開けられない筈のもん開けられる程度には優秀だったんだろうなぁ。“存在を開く
「……壊します?頑丈そうだけどまぁいけるでしょ」
「う……中のものが多分壊れ物で……。傷を付けないで取り出したいんだよね……。このトランク結構硬いやつだからさぁ。壊せないことはないだろうけど……。勢い余って中身まで壊しちゃうのは困る」
「まぁ売り先まで決まってんるんですもんねぇ」
項垂れ、ぶつぶつと呟く閃鬼の存外凹んだ様子に片眉を上げる。さっきのへらへらした表情の方が嫌いじゃないのに。閃鬼を抱え込んだ腕を小さく揺すった。
「確かに厄介な状況みたいですけど、そんな凹みます?」
「んー……。このトランク持ってるの予想外でさぁ。大したもんもってないだろうってタカ括ってて。知ってたら対抗策も用意もしてきたのに。……あいつらの持ってる装備、全部調べ上げとくべきだったかなぁ。ちょっと他の調べ物が立て込んでてさぁ。今回は現場全員ブチのめしゃいいと思ってたから。手、抜いてたなぁ。あ~失敗した~」
俺に対する弁明、というよりも独り言の懺悔が唸る。ブチのめすの俺じゃねぇか。
「調べられるのか?ブラックマーケットとかネットの裏サイトからも買うだろうし、つか、この街裏路地とかでも軽率になんか凄いもん売ってたりするじゃないですか」
「ん。それはまぁ。情報屋ですから」
閃鬼が顔を覆う指の間から目を覗かせる。にんまりと三日月型に歪められたアウイナイトに肺の空気を全て吐き出した。
理は通ってないが、確かに。それも滅茶苦茶有名な、だ。
なんて物騒なドヤ顔だよまったく。俺に抱え上げられた状態なんだから格好良くもなんともないっつの。っていうか、こんな話しをしている場合ではない。
もぞもぞと俺の腕から抜け出そうとする閃鬼とトランクケースを見比べた。
「……これ“
「“
「んじゃ、フレームの部分は俺の“
「え!」
腕の中からモダモダと抜け出したクセに、たった一言で俺に向かって踏み出してくる。バカだけど懐いてくる子犬ってこんな感じなんだろうか。
溜息を吐く代わりに片頬を上げる。なるべく強気に見えるように胸を張る。
嫌いじゃない女の子の凹んだ姿を見せられた。じゃあもう専属ボディガードとして格好付けないわけにはいかないだろう。――ボディガードの業務からは逸脱している気がするが、そもそもが情報屋の範疇とは言い難いし今更だ。
っていうかギラギラ光る瞳に煽られた。俺も彼女にカッケェところを見せたくなった。
あといい加減ズラかりたい。
「え、え、え、アオ自分の“
「ランクカラーって影響範囲・規模を表す指標でしょ。今回は目の前の単一相手だ。関係ない」
「それはそう!」
やたらテンションの高い返事に苦笑する。思った以上に反応が良い。嬉しいね。
「もし“
「え!ピッキングもできんの!マジか!!わ、や、でもこれ良い奴だよ!流石に無理じゃ無い!?」
「“それなり”、に良い奴だろ」
多分イケるだろ。知らんけど。
俺の技術がどうだ、とか実際にできるかとか、関係ない。足りない分は後で努力して上げればいい。そんなどうでもいいことよりも後ろ向きなことを言いながらも頬を紅潮させ、星を飛ばしそうな視線を向けてくる。その期待に、応えたい。
応えてやる。
「キャ―――!カッ、ケエェエェあああぁぁァ」
推しのアイドルにファンサして貰ったように叫ぶ閃鬼の両腕をひっつかみ、引き寄せる。
先程まで閃鬼が立っていた場所をエネルギー弾が通っていく。ぎょっと振り返ろうとする閃鬼の腕を引っ張り小脇に担ぎ上げる。ずっと足を掛けていた窓枠を蹴った。身体が無防備に宙に躍る。腕の中の快哉が悲鳴へと変わっていく。
ハー、漸く帰れる。
「わざわざ下りんの面倒だな……。時間掛かるし……。上から行くぞ。良いよな?」
「うん!」
お、良いお返事。テンション高くて何よりだ
浮かんだ身体が一拍置いて下へと落ちていく。ギリギリで光弾が頭上を掠めた。おーこわ。だらだらもめてる間に取引相手とやらが来たようだ。今ならギリギリ交戦避けられっかな。とっとと逃げよ。
首を竦めながら顔を叩く風に目を細める。閃鬼のストールが腕を叩いた。
近くの壁を蹴って跳ぶ。そのまま左右の壁を使って交互に蹴り上がる。三次元的にジグザグに進む俺の間を撃ち上げられる光弾が縫った。
「アッハハッ!スゲッ、身軽だね!」
「あんましゃべってっと舌噛みますよ」
「んーっ」
「よし」
閃鬼が奥歯を嚙み締めたのを確認し、射線が切れる手近なビルの屋上に着地する。同時に閃鬼に向かって持っていたトランクケースを放り投げた。慌てて腕を伸ばした閃鬼を横抱きに抱え直す。丁度トランクケースが腹の上に落ちて来た閃鬼が間の抜けた声を上げた。喉奥を震わせていればじっとりと恨みがましい視線が下から投げかけられた。
「なん、で雑に投げ渡してきたのにキャッチした腕の傷が全然痛まないんだよ……」
「傷まないように投げてるからですねぇ。持っててくれ。流石に荷物多いわ」
「あー、オッケー」
重量のあるトランクケース持った小柄な女の子と大刀入りのバックパックを持った姿に向けられる哀れみに肩を竦める。拍子にずり落ちかけたバックパックを担ぎ直した。言っとくけど一番大きい荷物はあんただかんな。
「帰ってからちょっと時間貰えます?」
トントンとトランクケースを指で叩く。閃鬼が大きく頷いた。
「全然良いよ!ありがとう!」
「礼言うの速いんですよねぇ」
せめて開けられてから言ってくれ。
ついでに言うと俺の提案に乗るのも速い。俺が本当に鍵を開けられる保証なんて無く、ただあの場所から逃げる為に言った出任せかもしれないのに。俺の“
1度上がったテンションが下がらないのか、下げられないのか。閃鬼は俺の腕の中でもちゃもちゃと動いている。危ねぇだろ。今ビルの屋上を跳び移って移動してんだぞ。
はー、まったく……。
「閃――閃架」
「はいはい」
一瞬迷って上空では誰に聞かれることもないだろうと、コードネームでは無く本名として告げられた名前を囁く。機嫌良さげにケースを強い力で抱きしめる閃架が適当な返事を返しつつ視線を上げた。
「なんかここ2,3日初めてなことばっかだ」
この街に初めて入った時だってここまでじゃなかった。
隣のビルに飛び移ろうと縁を蹴る。短い間ながらも身一つで宙を飛ぶ爽快感に目を細めた。俺の首に巻き付いた腕が頭を下に向ける。
トランク!空中!体勢!
ギョっとして頭の中にしか流れなかった単語を文章にして口を開く。叱ろうと口を開いて、こちらを見るとろける様な甘い瞳に思わず黙り込んだ。
「あたしの隣に居たらもっと面白くなるよ」
「別に面白いとは言ってないでしょう……」
「あら、いけず」
急に口説くな。
多分初めて、ってのがこの街の特殊な技術関係だけだと思ってるからこんな暢気なこと言えるんだろうなぁ。
柔く頬を撫でてくる閃架の掌を顔を横に振って除ける。足がビルの屋上に着地し、勢いを殺しきれず僅かに地面を滑った。
拗ねたように口元をわざとらしく尖らせた閃架に目だけで笑う。
「お?男の子の頬を無断で触ったことへの良い訳は?」
「え?んはっ」
きょとんとした閃架が、思いっきり吹き出す。一度弾む様に大きく足を揺らした。次に彼女が何かを言うよりも速く、強く踏み込んで加速する。瞬間、俺の足下で俺の意図とは無関係に、アスファルトが弾け飛んだ。
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