第20話 宗教って怖いわ……
「『
と
記憶はないが、知識としての情報は引き継いでいるらしい。
時折、私が知らないことを知っていたりするので助かる。
しかし、肩を
いや、楽しんでいるように見えなくもない。
彼の基準はどうも『私が楽しそうにしているかどうか』のようだ。
もっと自分の意思を尊重して欲しいところではある。
「見る相手によって『姿形が変化する』という不思議な熊ですよ」
たまに見掛けます――と教えてくれた。
敵意や先入観を持たない私には、無害で可愛い姿に見えるらしい。
(どう見ても、熊のヌイグルミなのだけれど……)
逆に罪人や悪意を
そのまま、
(現状では
大人しく抱っこされている
人を
私としては――可愛かったから、
つい連れてきてしまったが、迷惑だっただろうか?
〈
「ごめんね……これあげるから、仲良くしてね」「キュキュッ」
店長も一緒に謝ってくれる。
「クーマ? クマッ!」
と
「集落があったので、後で送りましょう」
と
「集落?」「モキュ?」「クマ?」
私たちは
世界を正しく運用するために、日夜働いているらしい。
そんな話、初めて聞いた。
「私、そんな場所、知らないけど……」
と
「ここは〈神域〉ですからね。『妖精界』や『精霊界』へ行く必要があります。その熊は迷い込んでしまったのでしょう」
そう言って
同時に――そうだったのか!――と自分の言葉に納得するから心配になる。
どうにも知識は持っているが、上手く引き出せていないようだ。
今回みたく、
これはもっと、お
(けれど、今はそれよりも……)
「
私は目を輝かせるのだった。
◆◇◆◇◆
曲が終わり『ディヴライブ』のメンバーが戻って来る。
「どうでしたか?
とニンスィキル。目をキラキラと輝かせて聞いている。
私が――よくやったわ!――と
「ありがとうございます♡」
飛び切りの笑顔で
それはファンの皆に見せてあげて欲しいところだ。
今の彼女には姉を
純粋に私の役に立てることが嬉しいのだろう。
(宗教って怖いわ……)
思わず、溜息を
(いや、神様は私だった!)
と再び現実と向き合うことにする。周りでは熊妖精となった元神官たちが「クマクマ!」と言いながら、一生懸命に裏方を
もう人間には戻れないので、後で『妖精界』に連れていってあげよう。
私たちは無事(?)にニンクルラとニンスィキルを和解させた後、神殿の幹部らの
これには
私もOL時代の無能上司やセクハラ上司を思い出し、少しだけ気分が良くなった。
ここまでくれば、協力させるのは簡単だ。王都が海に沈んでしまうことを伝え――回避するための方法がある――と希望を与える。
まずは『
候補の女性は罪人がいいでしょう――と告げる。
罪を軽くすると言って、強制参加させると共に、逃げると罰が重くなる
文句を言いつつも、彼女たちは
最初は戦場の近くで兵士たちに向け、
『愛と美の女神アフロダリス』の〈神格〉を持つ私に
『
死を覚悟していた兵士たちにとっても、歌姫たちが女神に見えたことだろう。
実績と
要は
彼は商人たちの欲を刺激したのに対し、私は兵士たちの欲を刺激した。更には人に注目されることでお金にもなり、
(正直、上手く
今、
神殿長と大隊長の
盛り上がるようにラップを教えておいたが、大丈夫だろうか?
『HEY!YO! 神殿長だ!
『大隊長だYO! お前ら最後までついてこい! YEAH!』
『暑いパッション! 困難なミッション!
『呼ぶぜゴッデス! 諦めるなガッデム! ヤル気のないヤツはゴーホーム!』
『今、頑張らなければ、この国沈む!」
『今、皆の祈り
「「今、力合わせる! 生き残ること、それがオレたちのドリーム!」」
会場が更なる熱気に包まれる。
(うん、大丈夫そうね!)
やはり、こういうことは組織のトップがやるに限る。日本の会社の場合、思い付きで新人や可愛い女の子にやらせようとするから、
部下は立場上、盛り上げなければいけないので必死だ。
名物社長を広告塔として打ち出すようなモノである。
彼らには是非、頑張って盛り上げて欲しい。
特に今回は国の存続が掛かっている。
真面目にふざけてもらうしかない。
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