2023/03/27 シン・仮面ライダー

 昨夜、シン・仮面ライダーを観た。

 作品への細かい感想は散々SNSでも吐露しているところなのでここで改めて語り直すのは今はやめておく。ネタバレになるような作中の話もここで書きたくはないし。

 番外編として感想をまとめても良いかもしれないけど。


 面白かった。面白かったと同時に、賛否両論で当然だと思う作品だった。

 少なくとも、普通の映画ではない。普通の映画というのはつまり、多くの人が面白さを感じ、登場人物に共感して明日を生きる活力にする、という意味。

 映画や小説、創作物が何のためにあるかと言えば、現実のためにあるのである。

 物語とは現実を抜き出して、共感や希望を見る人に与えるし、同時代に同じ創作物に触れて監督や俳優の話をするのも、会話のタネになる。


 そしてシン・仮面ライダーはそういうタイプの映画ではない。

 あれを映画ではない、と批判することすら可能だと思う。因みにこの「あれは映画ではない」というのは同じくヒーロー映画であるMCUの作品群にも向けられる言葉である。


 物語とは現実を切り取ったものだが、シン・仮面ライダーは現実を切り取ってなんていないからだ。

 何を切り取っているかと言えば、当然のこと仮面ライダーを切り取っているのだ。


 普通、完成した創作物には何かしらのテーマが付与される。恋愛だとか成長だとか科学技術への憂いだとか。

 シン・仮面ライダーにもそうしたテーマを読み取ることはできるけれど、あの映画のテーマはズバリ「仮面ライダー」だ。

 仮面ライダーを語るための映画なのである。

 これはシン・ゴジラもそうだったし、シン・ウルトラマンもそうだった。因みにエヴァは未履修だ。何度か見ようとはしているが、序盤の展開などがあまり自分好みではないみたいで最後まで観られていない。単純にアニメという媒体を他媒体ほど好きでないというのもある。貞本版(コミック)だけ読んでいる。こっちはめちゃくちゃ面白かった。


 だから賛否両論で当然というか、普通の映画を観に来たつもりの観客は当たり前のように面食らうし、場合によっては怒る。


 昼ごはんを食べに定食屋に来たら、いきなり店主が真向かいに座ってきて「美味しい料理とはどういうものなんでしょう」と議論をふっかけてきたら嫌だろう。普通ならそんなものは知るか、飯を食わせろと思うだけだ。

 でもシン・仮面ライダーはそういう映画だった。


 ただ、それの何が悪いのかという問題である。

 この辺りは物語というものに対する思想の話だと思う。物語とは何のためにあるのか? それに対して人はその人なりの答えを言語化せずとも持っており、そこに合致しなければおそらくあの映画を好きになることは無理だ。これは「見る目がある」とか「知識がある」とかそういう話ではない。

 単に余暇にはスポーツをするのが好きか、映画を見るのが好きか、友達と遊ぶのが好きか、どれなんだい、という問いをこと映画に対して細分化しているだけである。どれだけスポーツの良さを示されたとして、私はスポーツをするのは好きではない。


 先日も書いたけれど、現代には映像作品のサブスクサービスが充実し過ぎるほどに充実している。色々な作品形態があり、色々な映画がある。

 色々な映画があって良い。

 ストーリー映画でなくとも、ドキュメンタリー映画や記録映画なんかもある。


 飯を食いに店に入ったら、そこはママの話がとても面白いスナックで、その話を聞きにまたその店に行く、ということもあろう。

 たとえ飯がそこまで美味くなくてもだ。


 シン・仮面ライダーもそういう映画だった。

 たとえば私がシン・仮面ライダーの脚本を小説のプロットとして渡されたらボロクソ言うと思う。それはもう悪し様に言う自信がある。そのくらいには普通に物語として登場人物の心を追っているとついていけない作品だ。しかしシン・仮面ライダーは小説ではないし、完全オリジナルの作品でもない。

 だが、そこはあの映画の主題ではない。映画とは総合芸術である。

 あの映画は「仮面ライダー(ヒーロー)は格好いい」と思わせてくれる多くの要素でできているし、池松壮亮と浜辺美波のインタビューによると、作り手も彼らの演じる仮面ライダーを見て感動で泣きながら創ったらしい。すごい。


 別に仮面ライダーを知らなくても、創作物に面白さを見出し、創作物を現実と同じくらいの比重(または上回る形)で愛してるいるタイプの人なら、好きな人は少なくないだろう。当然向き不向きはあるとして。


 とりあえず今日はここまでにするが、まず間違いなくTwitterなんかでは明日もシン・仮面ライダーの話をしている。

 

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