　春ですねぇという陽気の中、てこてこ歩いていたわけですよ。

　仕事帰りのスーパーは安売りも始まっておらず、かと言って始まるまで店内でうろつくのも嫌なので、特売の品を適当に漁っていた時のお話でございます。

　今日は何が足りなかったかなーと頭の中のフォルダを開いて中身をチェック。冷蔵庫の中の記憶を探り当て、豆腐と納豆と味噌と……全部豆……！　となりながら拾っていくわけです。

　でまぁスーパーですから、品数が減って陳列棚の床って言うんですかね。あぁいう場所が見えている部分もある。そんな棚には何があったかってぇと、茸ですよ。最近やたらと安い。自分が住んでる地域だけなのか、それとも世間一般に安値の傾向にあるのかはとんとわかりはしませんが、とにかく安い。

　あとは牡蠣。これは多分地域柄だろうな、とは思いましたがこれも安い。

　じゃあ買いますかって籠に入れたは良いけれど、帰ってからふと気づくわけです。牡蠣の賞味期限が間近。そりゃあ安値で捌くわけですよ。売れ残ったっちまったら丸損だ。勿論こっちもこっちで、腐らせちまったら大損なわけですから、急いでレシピを考える。

　まぁね。考えるったってね。素人ですから、そんな大層なもんは作れやしません。精々煮るか炒めるか、味付けは醤油かソースか。そういやオイスターなんてのもあったなぁと取り出しては見るものの、よくよく見たらそれも牡蠣。おいおいそれじゃあ追いオイスターじゃねぇかなんてアホなこと考えていますとですね、これまた山のように買い込んだ茸と目が合うわけですよ。

　目が合うたって、ぎょろっとこっちを見るわけじゃない。相手は何せ茸ですからね、動物と違って目なんて大層なもんは無いわけです。あくまでこっちが茸を見ただけ。それでも目が合ったなんて気取った言い草するわけですよ、こういうところに出すもんですから。

　とまぁそんなこんなで今夜のおかずは、茸と牡蠣の醤油炒めと相成りました。ということで一つ。

　全部音読用に文字並べるの大変だなーと思うわけです。落語はすげぇな……。