第20話麻衣と綾子、紅葉の夢

美術大学に通う麻衣と、隣の文学部に通う綾子は、共に大学の図書館でアルバイトをしていた。麻衣は才能ある絵画制作者で、綾子は詩や小説に夢中になる文学研究者であった。図書館での仕事を通じて、二人は互いに惹かれ合っていた。


ある冬の日、綾子は麻衣に詩集を紹介した。詩集のタイトルは「彩りの詩」。綾子は言った。「詩の中に描かれた情景を、麻衣さんの絵で見てみたいんです。」そんな綾子の言葉に、麻衣は詩に触れることで新たなインスピレーションを得られることに喜びを感じた。


麻衣は詩集を読み進め、特に心に残った1篇の詩「紅葉の夢」に取り組むことを決めた。綾子は麻衣の制作過程をサポートし、美術資料や色彩のアドバイスを提供した。一方、麻衣は綾子に感謝の気持ちとともに、彼女への想いが深まっていくことに気づいた。


約1ヶ月後、麻衣は「紅葉の夢」を題材にした絵画を完成させた。綾子は感激し、目に涙を浮かべて麻衣に言った。「この美しい絵を描いてくれて、本当にありがとう。詩の世界がこんなにも鮮やかに表現されるなんて、想像もしていませんでした。」


図書館の閉館時間に、二人は静かに語り合い、互いの趣味や夢を共有した。告白の言葉はまだ交わされていなかったが、二人の間には言葉を超えた絆が生まれていた。

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