第13話思い出のラーメン

私はラーメンが大好きで、週末には必ず新しいラーメン屋を探して食べ歩きをしていた。ある寒い冬の週末、私は新しいラーメン屋を見つけた。

店名は「夜霧のラーメン屋」。狭いカウンターと厨房のみが並ぶ、こじんまりとした店だった。客席と厨房の距離が近く、店内には、麺を茹でる音やスープを煮詰める音が響き渡っていた。


中に入ると、小柄で可愛らしい顔立ちをした女性がにこやかにいらっしゃいませと出迎えてくれた。


私は一番人気とメニューに書かれていた「夜霧ラーメン」を注文した。

そのスープは、鶏ガラと豚骨のベースに、塩と醤油をブレンドしたもの。トッピングには、鶏と豚のチャーシュー、もやし、ネギ、味玉、海苔がのっていた。


一口スープを飲んでみると、口の中に広がる深い味わいに感動した。スープは鶏ガラと豚骨のコクがしっかりと効いており、塩と醤油の味もちょうどよく調和していた。麺は、細くしなやかなもので、スープとの相性も抜群だった。


その日から私は、毎週のように「夜霧のラーメン屋」に通うようになった。


店に通ううちに、私はその可愛らしい女性のことが気になり始めた。彼女は、常に笑顔で接客をし、お客さんのニーズに合わせたラーメンを提供してくれた。


ある日、私は彼女に話しかけた。「このラーメン、とっても美味しいですね。いつもありがとう」と言うと、彼女は嬉しそうに笑顔を返してくれた。


それからというもの、私たちは少しずつ話をするようになり、互いの好みのラーメンや食べ歩きの話で盛り上がった。


そして、ある夏の週末の夜、私は店を訪れると、彼女が「今日は特別なラーメンを作ってみたんです。ぜひ試してみてください」と言ってきた。


それは、トマトとチーズがトッピングされた「夏のトマトラーメン」だった。スープはトマトの酸味と旨味がふんだんに詰まっており、チーズのコクが加わることで、とても爽やかで美味しいラーメンに仕上がっていた。


そのラーメンは私にとって特別な思い出になった。なぜならその次に店を訪れた時に見たのは突然の閉店の知らせとお詫びが書かれた貼り紙だったからだ。


その日から、「夜霧のラーメン屋」は閉店してしまい、私は彼女ともう一度話ができないと思うと寂しくなった。


しかし、その美味しいラーメンと彼女の笑顔は、私の心の中に残り続けた。私はそのラーメン屋が閉店してからも、何度も通り道を通るたびに、その小さな店を思い出していた。




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