第107話 中断される会議
「依頼されたクエストについては、無事にクリアした。だから、姫様の言う通りにオレたちもしっかりと休みを取るべきだ! 精神的にも肉体的にも、絶対に疲れを取らなければならない!」
オレは、開口一番に宣言した。リフレッシュをすることができれば、今の重い空気も少しは変わってくるはずだ。そして、みんなの気持ちも前向きになれるだろう。
「私も賛成なのね! エルディア姫から新しい任務をもらうまで、ゆっくり休むべきだと思うの!」
ユリカもオレの意見に賛成してくれた。うん、いい流れだ。
しかし、残るエアリスとベルファの反応が無い。2人とも、ジッと何かを考えているようだ。
オレは、そんな2人の様子が気になって声をかけようとした……ちょうどその時、オレの耳に流れてくる音があった。
「こ、これは……!?」
オレは、一瞬だけ自分の耳を疑った。それは、女性の歌声だった。
歌声は美しく響き渡り、優しくオレたちを包み込むかのように疲れていた心を癒してくれた。
オレは、歌声が発せられる方へ振り向いた。その視線の先にはステージがあり、その舞台の上でベージュ色に輝く髪を揺らして1人の美しい女性が遠くを見つめながら情熱的に歌っていた。
「きゃあ! 歌姫ソラシィなのね! まさか、ここで会えるなんて感激なのね!」
ユリカは、会議をそっちのけでステージの方へ走って行ってしまった…………おいおい! 無責任すぎるだろ!
「チッ……くだらない茶番ね。耳障りだわ」
ベルファが、舌打ちをしながら吐き捨てるように言った。どうやら、彼女の心には少しも響かなかったらしい。他人の歌を聴く趣味を持っていないということか。
「何だい、あのくらい! ボクの方が、もっとカッコ良く歌えるよ!」
エアリスの方は、対抗心を燃やしていた。ナルシストである彼女らしい考えだ。
「ほら、ナリユキ! さっさとユリカを連れて、戻ってきなさいよ!」
不快感を思いっきり出したベルファが、今度はオレに命令してきた。
「へいへい、わかりましたよ」
オレは、ふて腐れながらも命令に従った。これ以上、チームの中で波を荒立てたくはなかった。オレは、ユリカを追ってステージまで走っていく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます