第89話 作戦会議

 オレたちは冒険者ギルドを出ると、そのままアジトへ戻って来た。


「それじゃあ、作戦会議を始めるのね!」


 女子たちの部屋へオレも連れ込まれ、参謀を自称するユリカの指揮でチーム4名による会議が行われることになったのだ。


「あのさ……ダナシャスって、ウィザードなんだろ? ベルファの時みたいに、魔力を感知して居場所をつかめないものかな?」


 オレは、さっそくベルファへ質問した。しかし、ベルファは少しムッとした口調で答える。


「それは、あたしが体内に大量を魔力を抱える天才だから辛うじてできたのよ! 並の魔力しか持っていない相手なんか、感知できないわよ!」


 うわ……何気に自分のことを天才だと自慢しやがって……!


「じゃ、じゃあ、例えばユリカの魔力を感知することはできないのか?」

「こんな凡人の魔力なんか、感知できるワケないでしょ!」


 ユリカを指差して、思いっきりディするベルファ。言われたユリカは、「ぶ~!」と頬を膨らませている。酷い言われようだ。


「まあ、4人全員で宝石の前に立って、動かないようにするしか無いね。一晩だけ辛抱すればいいんだから」


 ここで、エアリスが建設的な意見を出した。オレも「そうだな」と同意する。


「まあ、それが一番ね。だけどエアリス、いくらトイレが近いからって、宝石の前で立ちションするのはカンベンしてよ?」

「ふざっけんな、ベルファ! 本気でブッ飛ばすよ!?」


 ベルファがまた余計なことを言って、エアリスが頭から湯気を立てて怒り出した。


「まあまあ、落ち着けエアリス。お前は、変なことはしないって信じてるよ」


 オレは、必死でエアリスをなだめた。これじゃ、会議が進まない。


「あたしは、明日までに睡眠魔法を無効化させるための魔法を調べてみるわ。持っている本の中に、確かその魔法が記述されていたはずだから」


 ベルファは、腕組みをしながらそう言った。睡眠魔法を封じるだけでも、かなり有利になるはずだ。これは頼もしい。


「オレは、このあとクライゼの店へ行って新しい手裏剣や焙烙玉を調達して来ようと思う。さすがに屋敷の中で爆弾を使うわけにはいかないけど、何が起こるかわからないからな。備えあれば憂いなしだ」

「あたしは行かないわよ。あのオタク、大嫌いだから」


 オレの発言に、ベルファは不快感を示した。オレたちがウェルゼナ王国へ出発する前に、クライゼはベルファのフィギュアを作るために夜遅くまで彼女の姿をスケッチしていたのだ。スケッチを嫌がるベルファを説得するために、オレもさんざん苦労した。だけど、今回はベルファが来る必要は無い。オレ一人が行けば、用が足りる。


「あっ、ボクはクライゼの店へ行くよ! 別のポーズをキメた新しい人形を作ってもらいたいから!」


 エアリスは、逆に食いついてきた。明日がXデーなのに、またスケッチしてもらうつもりか? 疲れるから、もうツッコまない。


「ところでユリカ? お前は、どうするんだ? 何か対策はあるのか?」


 オレは、ユリカへ尋ねた。


「私は明日に備えて、今から明日の夕方までしっかり寝ておくのね! 明日の夜は徹夜になるし」


 オレは一気に脱力した。今回、コイツは全く役に立たない……そう確信した。

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