第42話 女神フェリオ、再び

「ユリカ、目を覚ましなさい」


 私は、その女性の声を聞いて、パッと飛び起きたの。

 目の前に、紫色の長い髪を下げた女性が立っていた……女神フェリオが。


「お久しぶりです~。フェリオ様~」


 これは夢だ。たまにフェリオ様は、私の夢の中に現れてお告げや忠告などをしてくれる。ナリユキ君が、この世界に転移される前にも、こうして私に予言してくれていたの。


「ふ~やれやれ。まあ堅苦しい話は抜きにして、気楽に話しましょ」


 フェリオ様は、そう言って「う~ん」と伸びをしたの。フェリオ様と初めて会ってから5年くらいになるけど、このざっくばらんな性格は嫌いじゃない。


「で、今回の用件は何なの~?」

「ユリカ。今日は良くがんばってくれたわ。大成功よ!」


 力強くガッツポーズをキメるフェリオ様。いきなり、褒められてビックリしたのね。私は理由を尋ねた。


「西の塔から秘密兵器を持ち帰るクエストは失敗したのに? どうして?」

「あなたがエアリスとベルファを仲間に引き込んで、『チームナリユキ』を4人編成にしてくれたからよ。大幅な戦力アップだわ! お見事!」


 フェリオ様が今度は拍手までしてくれる。相変わらすノリが軽いのね。


「しかも、エアリスはまだ18歳。更に戦いの経験を積めば、どんどん強くなっていく。将来の勇者になる逸材かも知れないわ! あなたたち4人で魔王を倒すのも、夢じゃない!」


 興奮するフェリオ様。まあ、嬉しいのはわかるんだけど…………。


「じゃあ、これからも4人で仲良くやれって事なのね?」

「そうよ。ユリカ、あなたがチームの参謀役になって、エルディア姫の任務をどんどん遂行していきなさい。私も陰ながら応援してるから! じゃあね!」


 う~ん。陰ながらじゃなくて、もっと直接力を貸してほしいんだけどなあ……あっ! フェリオ様が消えちゃった!

 まったくもう……いつも一方通行なんだから…………。


 そこで、私は目を覚ましたの。

 隣のベッドでは、エアリスとベルファがスース―と寝息を立てていた。窓の外から、明るい光が差し込んできていた…………もう朝なのね。

 私はベルファを見た。

 この子の辛い生い立ちには私も同情する。独りぼっちなのは、本当に辛いから。それは私にもわかる…………。

 だから、私はベルファを仲間にしようと提案したの。だけど、この子がナリユキ君を彼女の奴隷にすると言った時は、正直ギョッとした。それは、ナリユキ君を自分で独占したいという心の裏返しだから。

 ベルファは、ナリユキ君に心を開きかけている……そう感じた私は、「ナリユキ君を私たち3人の奴隷にする」という方針にすり替えた。ナリユキ君は、普段はゲスい性格だけど、ごくたまに私を守ってくれる時だけはカッコ良くなるの。私は、もう何度も彼に危ないところを助けてもらった…………。


 正直、ベルファにナリユキ君を取られたくないのね……

 私は溜め息を吐くと、ナリユキ君を起こしに隣の部屋へ向かったの……あっ、またドアの鍵をかけ忘れてる。

 しょーがないなあ…………。

 部屋に入ると、床でナリユキ君がヒドい寝相で寝ていたの。

 そのナリユキ君の耳のそばに、私の唇を近づける……ふふっ。


「やっほ~? 目を覚ましてえ~?」

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