三杯目 犯人は誰だ?
「となりゃあさ。経済効率が結果的に優先されるはずなんだよ」
「適者生存の社会版みたいなことか?」
「五箇山は硝石製造に競争優位を持っていたってことさ」
現存する合掌造り住宅は江戸末期から明治に掛けての物らしい。時代が新しくなると輸入硝石が主流になって、国内での硝石生産は行われなくなった。その後、性能に優れる綿火薬(無煙火薬)が普及し、黒色火薬は廃れていった。
幕末の争いが国産硝石需要の最終章だったそうだ。
兎に角五箇山、白川郷は硝石生産の圧倒的な中心地だった。
「そもそも何であんな山奥で硝石が作られるようになったのか?」
「由来とか、理由があるのかい?」
私は焼き鳥を齧りながら、合いの手を入れた。
「火薬の伝来は火縄銃と一緒って事になってる」
「種子島ね」
「鉄砲には火薬が必要だ」
「ごもっとも」
「黒色火薬の原料は、木炭、硫黄、硝石だ」
「異議なし」
「木炭と硫黄は国内で手に入るが、硝石だけは存在しなかった」
「中国やアジアから輸入していたと聞くが」
「だが、それでは高く付く」
「そりゃそうだ」
「そこで国内生産を企画した奴がいた」
「誰だそりゃ?」
「厚揚げ一つね」
「奢れってか?」
「講演料だよ。腹が減るんだ」
「分かったよ。厚揚げだけな」
「へへっ。まいど!」
須佐はホッピーで喉を湿らせると、自分の推測を話し始めた。
「
「
「理屈は一緒さ。当時一番得をした奴を探せってこと」
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