批判の殴り書き

エリー.ファー

批判の殴り書き

 勘違いだけはほどほどに、ここじゃ、その口から吐き出された言葉も責任問題。

 合わせる顔がねぇ、とか聞いてねぇ。

 お前、何者。本当に獣、なわけねぇだろ。

 見たまんま偽物のお前に殴り書きの果たし状。

 合わせ鏡みてぇな言葉を吐き出してぇなら便所に籠ってきばりな。

 匂い立つなんて、ちゃちな言葉吐き出さねぇ、何もなくてもただ立ち上がり歩き出す。

 優秀なんて言葉ほど遠く、天才なんて言葉から一番遠い生き方で魅せる血まみれ契約書。

 これで、いいか。

 いいわけねぇだろ。

 飲み込めるような言葉なんて何一つねぇだろう。

 追われてここに来て、終われ、ここに来て、と望まれて。

 全部、問われ、答える前にマイク握って。

 お断りだぜ、バカが。

 お前の話を聞いて、何の役に立つってんだよ。

 実際、あんたの人生に輝く何かもありゃしない。

 そこで、尊敬。マジ無理な話。

 そこで、敬え。土台無理な話。

 そこで、謝れ。

 おいおい、誰がその口で何言ってんだってハナシ。

 口喧嘩が口だけで終わるなら、喧嘩って言葉がついてる意味がねぇだろってハナシ。

 昔々あるところに、なんて眠いこと言う前にもうちょい気の利いた文句でも言えねぇもんかね。

 あんたの頭の中の図書室にどれだけの名文が並んでるのか期待したのに、片っ端から有名どころのお名前並べるのが趣味なだけ。

 相手を説得したいなら、織田信長の名言を使うんじゃねぇ。

 相手を説得したいなら、武者小路実篤の名言を使うんじゃねぇ。

 相手を説得したいなら、マルコムエックスの名言を使うんじゃねぇ。

 相手を説得したいなら、チャップリンの名言を使うんじゃねぇ。

 相手を説得したいなら、尾田栄一郎の名言を使うんじゃねぇ。

 相手を説得したいなら、今、その相手の前に立ってるやつの名言で喋りな。

 借り物じゃねぇ、説得したい相手の前に立ってるそいつの名言で喋りな。

 誰かが積み上げたものの上に乗る前に、お前が積み上げてきたものの上に乗って喋りな。

 七光りじゃ、お前の顔は影になっちまう。

 お前自身が輝いて、お前の言葉で喋りな。

 え、何もない。

 へ、何も持っていない。

 は、何もやってこなかった。

 あぁ。

 派閥を作るのに忙しくて、自分の言葉を磨かなかったのか。

 なるほどな。

 俺はね。

 好きだよ、この業界が。

 大好きだよ、この世界が。

 なんでだと思う。

 簡単だよ。

 できないヤツからは、ちゃんと人権が剥奪されるからだよ。

 その両脚で立とうとしなかったヤツには、リスペクトが集まらねぇからだよ。

 実力と才能がないのにプライドだけは高い凡人みてぇなゴミが自分の無能さを水増ししようと必死になっても、何者にもなれねぇからだよ。

 終わりなき旅なんてねぇ。

 今日が旅の終わりでもいいって生き方をするんだよ。

 握ったマイクにドラマなんかねぇ。

 リアルしか語れない口が俺の顔にはついてるんだよ。

 誰かを救うヒーローになりに来たんじゃねぇ。

 昨日までの俺を惨殺するためにやってきたヒール様だぜ。

 文句あるか馬鹿野郎。

 低い煙に身を任せて肺を汚して、夜明け待つために荒れ果てた喉、飛ばした唾とオーディエンス。ファームチケットの血飛沫がライトに映えれば、今日も歯を食いしばるハスラーにすべてが捧げられる。

 殴り書きの遺書。

 殴り書きの契約書。

 殴り書きの令状。

 殴り書きだって血判状。

 殴り殴られたいつかの餓鬼の師匠は。

 殴り書きで生み出された未来の俺だった。

 それでいいっしょ。

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