第26話 チマとポタの本音

山菜取りを終え、館に帰りあの子たちと久しぶりに遊びました。前にご主人様が町で買ってきてくださった。ボールをあの子たちはえらくきにいったようで。いろいろな遊び方を日々模索しているようです。それにしても、あの洞窟での決闘以降あの子たちが今まで以上に私と一緒に居たがるようになりました。ですがいまいち私にはその理由が分かりません。




 今日は特に広い場所がないので、ボールを蹴って回す遊びをすることになりました。しかしチセ殿は、必死になにかしている様子なのに、私たちは遊んでいていいのかという疑問が尽きません




「ウーお姉ちゃん、ボールいったよ」




「ああ、ごめんなさい。行きますよポタ」




 私はいつの間に足元にあったボールを蹴る。しかし頭で別のことを考えていたせいか、あらぬ方向へと飛んで行ってしまった。幸い林の中に入らなかったので、すぐに回収することが出来た。




「どうしたのお姉ちゃん」




「ごめんなさい、まだまだ本調子ではないようですね」




「大丈夫?」




「なんのまだまだあなたたちには負けませんよ」




 私は改めてボールを蹴る、今度はちゃんとポタのいる方へと飛んでいった。それをポタが足で受け止める。そのおもいっきりの動作を見て安心したのか、再び楽しそうに二人はボールを蹴っていた。




 ある程度遊んだ後、ご主人様から呼ばれ、全員で山菜の下処理をしました。ここでもチセ殿から教えてもらった知識を私に見せたい様でかなり張り切っていましたが、子供の頃によく親の手伝いをしていたので、すでにその大半を知っていましたが。二人があまりに楽しそうだったので、黙っていることにしました。




それにしても今日はやけにわたしにべったりな気がします。いつもなら興味があるものに自然と引き寄せられるような感じで、四六時中私と一緒なんてことは、今のご主人様になってからあまりなかったような気がします。しかし今はその限りではありません。それはまるで昔のあの子たちみたいな、




「ねえウーお姉ちゃん」




「どうしたの二人とも」






「今日一緒寝てもいい?」




 夕飯が終わってすぐ、お風呂に入ろうとしている私に、二人が尋ねてきました。まあこれくらいのことならよくあることなので、首を縦に振ると、二人は大喜びするのではなく、なぜか安堵のため息をついた。




「では私はお風呂に入ってきますので、いい子にしていてくださいね」




「「うん」」




 そう言って脱衣所に向かう。その扉が閉まるまで二人はずっと私のことを見つめていた。




 久しぶりに入るお風呂はやはり格別で、体の芯まで温まるためについ長風呂をしてしまいました。そのため私が大広間に戻った時にはもうすでに三人分の布団が敷かれていました。




「ウーお姉ちゃんおかえり」




「お布団用意したよ」




「ありがとう二人とも」




 久しぶりに働いたので、実はこの段階でかなり眠たかったので、布団に入るとすぐに全身の力が抜けていきました。もうこのまま瞳を閉じて意識を手放せば、あっという間に眠りに就けそうだが、そうできなかった。下から服を引っ張られていることに気が付き、そちらに視線を向けると、ついさっきまで両隣の布団で眠っていた。チマとポタの二人が私のもとへと潜り込んでいた。




「どうしたの二人とも」




「あのねウーお姉ちゃん…」




 私の服を掴んでいたのはやはりこの子たちだったが、なぜか震えていた。きっと怖い夢でも見たのだろう。私は二人を胸元まで引き寄せるとそのままぎゅっと抱き締めた。




「大丈夫よ、私はここにいますよ」




「そうじゃないの、ウーお姉ちゃんあのね、チマ達ね」




「ずっと怖かったの。あの角の生えた人たちにさらわれて、ウーお姉ちゃんたちとはぐれて、怖かったけど、それ以上にご主人様と傷だらけになったウーお姉ちゃんが来てくれた時」




「もしかしてウーお姉ちゃんが死ぬんじゃないかって、すっごく不安になったの、それでもご主人様がウーお姉ちゃんを何とかしてくれるって言うから何とか、頑張ったけど」




「けど、だけどねでもすっごく怖かったの。だからねお願いもうあんな無茶はしないで」




「ウーお姉ちゃんがいなくなったら、どうしていいかわかんない」




「チマ… ポタ…」




 ご主人様から二人の活躍は聞いてはいましたが、まさかそんな思いを抱えているとはこれは流石のご主人様でも予測できていなかったようですが、あの状況なら仕方ないと言えるでしょう。でも今はそのことよりも、二人を安心させてあげることが、最重要案件だと判断した。




「二人とも、心配させてしまってごめんなさい。でも今私はこうして無事にいるので、それで許してもらえませんか」




「「嫌だ」」




「嫌だって、それを言われては」




 どうすればいいのか大変困る。




「ぎゅってして」




「一晩中」




「分かりました」




 私はそのまま二人の肩まで布団をかけると両腕で二人を抱きしめる。子供独特の温もりが胸いっぱいに広がる。




「ウーお姉ちゃん、もうあんな無茶はしないでね」




「チマ達もいっぱい頑張るから」




 二人は子供なのだから、まだまだ大人に頼りきりでもいい気がするが、今の私達には決してそんな余裕があるわけではない。だからまだ幼いとは言え、できることはやっていく必要があるのかもしれない。それでも今は不安にさせたぶん、思う存分甘えさせてあげることにした。幸いなことに丁寧に二人を撫でてあげるとあっという間に眠りに就いた。二人も暖かさに包まれて、私もあっという間に眠りに就いた




 そして翌朝廊下でご主人様とあった際




「ねえウー」




「どうしましたか?」




「いつのまに保育士なんてスキル身に着けたの」




「えっ、私そんなスキル持ってたんですか?」




「さあ」




 などというちょっと変な会話をいたしました。




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