第17話 トクシンの秘密
その日の夕食は久しぶりに全員そろって食べることが出来た。しかしまだまだ介助が必要なウーは少し食べづらそうだが、それでもチマとポタの二人が採ってきた山菜をおいしそうに食べていた。その様子を見て今度は肉を取ってくると息巻いていたが、二人には危険すぎるので僕に厳重監視をするようにウーから言われてしまった。だが実際野菜よりもお肉の方がケガをした部位を治すためにいいのではないかと素人の頭では思っていた。
だが現状ここにいるメンバーで山の獣を狩るのはかなり無理がありそうなので川魚あたりで妥協してもらうことにした。
その時の僕は食事があまりに楽しすぎていたため忘れそうになっていたが、今日一日トクシンさんの姿を見ていないような気がした。チサは僕たちと一緒に食事を取らざるを得ないためここにいるので、必然的に彼は一人で食事をしなければならなくなってしまい、なんだか申し訳ない。食事が終わった後にこれまでのことも重ねてお礼を言いに行こうと彼を探していると、僕の予想とは反して向こうからやってきた。
トクシンさんは声を出すこともせず、廊下の向こう側から手招きをした。僕は彼に導かれるままどんどん館の奥へと進んでいく。そして狭い扉をくぐった部屋で彼は足を止めた。
「えっとこの度は僕の仲間を助けて下さりありがとうございました」
トクシンさんは床に座ると僕にも同様にするよう促した。
「えっとウーさんとおっしゃいましたよね彼女。本来ならここにたどりつけなかったかもしれないのに、奇跡的な生命力をお持ちのようで、怪我の治りもかなり早い。なのであと数週間もすれば退院できそうですよ」
「そうですか・・・・」
僕はほっと胸をなでおろす。実のところ僕ら4人の中で一番僕が今回の事態を重く受け止め、なおかつ責任を感じていたということもありずっと緊張し続けていた。それが今ほんの少し楽になった気がする。
「それでですね彼女、ずっとあなたのことを話していましたよ」
「・・・・えっとどんなふうに」
「知りたいですか?」
「難しいですね」
「アハハ」
治療のためにウーとトクシンさんが二人きりになることは時々あったが、その時僕は基本的に採取やチマとポタの相手で忙しかったため、そこでどんなことが語られたのかまったくわからない、でも何となく想像がつく。
「彼女半分子供たちのことを話して、もう半分はあなたのことを話していました。前の主人を亡くしてそれからあなたに拾われた自分達がいかに恵まれているかと、そしてあなたの夢に命をかける覚悟があると。彼女にそれほどまで言わせるあなたの夢とはいったいどのようなものなのですか」
そう聞かれた僕はこれまでしてきた短い旅の話を彼に聞かせた。決していいことばかりではない話だが彼は終始面白そうに聞いていた。
「なるほどなるほど、そんなことが」
「一応ウーにはあまり無理しないようにってお願いしたんだけど、今後どうなるかまだ分かりません」
「そうですか、ならこれはあなたにも徳がある話のようですね」
いったい何のことか皆目見当がつかないが、よくよく考えてみれば僕がここに呼び出された目的についての話はまだしてなかったような気がする。
「その話というのは具体的にどういう」
「話をする前に、少々回りくどいかもしれませんが、私自身について話させていただきますね」
私自身というトクシンさんの言葉を聞いて僕は瞬時に彼に対して人物鑑定スキルを使った。年齢種族等々の情報には特におかしな点は見られなかったが、スキルの欄に特殊なものを見つけた。
保有スキル 医術、薬術、調合術、毒耐性、解毒術、そして『毒喰らい』
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