4/8:映画『インフィニティ・プール』

 今日は映画インフィニティ・プールを観た。


 監督はキモいクリーチャーを作らせたらナンバーワンのデヴィッド・クローネンバーグの息子、ブランドン・クローネンバーグ。

 変態性って遺伝するんだ……。褒めています。


 バイオテクノロジーと解雇主義のフェティッシュ全開のデビュー作、女暗殺者と人格トーレスを併せた前作と来て、だんだんとストーリーがメイン寄りになって来てはいる気がする。

 グロキモさは健在。褒めています。



 主人公は凡庸な作家。出版社の父を持つ妻のお陰でデビューできたけど売上も振るわずスランプで次回作も出ない。身に詰まされますな。


 彼がバカンスに訪れたのは、多額の金を払って作ったクローンを身代わりにすれば死罪になる罪状すらも許される島だった。

 自身のクローンの死を見た主人公は、同じ境遇のセレブたちと血と性と暴力に溺れていく。



 監督は身体性を強調した画が特徴的。普通はセクシーなはずのヌードやベッドシーンも全然テンションが上がらないどころか、肉体が持つ汚さや滑稽さを全面に表してくる。

 射精も放尿も同じ身体の機能でしかなくて、浪漫とか社会的文脈を剥ぎ取った、検査病棟でに丸裸になって検査を受けているような惨めさがある。


 サブリミナル映像を多用したゴアでアートな映像と対照的にそれがすごく目立つ。エキセントリックでアウトサイダーなことをしているはずのセレブたちが物凄く矮小で卑俗な存在に観えるんだ。

 どうせ肉体の檻に囚われた人間の哀れなお遊びだよと言わんばかりに。



 社会に認められない悪いことをやっちゃうぜという反抗期が遅れてきて、とっくに通過すべき悪ふざけを高尚な反抗のように行う大人へと冷笑的な目線をすごく感じた。


 平気でひとを殺した彼らが、とても普通の人々に見える会話をする場面もいくつかあって、それも「みんな裏で何してようが社会では普通にやっていくもんでしょ。わざわざ他人に見せつけるなんて幼稚なことしないよ」と突きつけるよう。

 普通の人々も恐ろしいものを隠していると見るべきか、そんな疑念すらも幼稚な陰謀論だと嘲笑っていると見るべきか。



 非凡に憧れる凡庸さのような、王道のテーマを映像とSF的要素で再解釈するのが上手い監督だと改めて思った。

 デビュー作のアンチヴァイラルは勿論、家族に裏の顔を隠す二重生活の暗殺者の孤独と精神の分離を、標的に身近な人物の人格をトーレスして身体を乗っ取り殺人を行う近未来SFに仕立てたポゼッサーも面白かったな。

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