創作論とかわからんけど構成がわかると楽

 Twitterで創作論の話をするとカルマが下がるぞというのを最近見かけた。

 でも、周りが創作論を話してるのを見たことがない。友だちがいねえからか。哀しいね。


 一応本は何冊か出たりこれからも出たりするんだけど、創作論が未だにわからない。

 小説教室みたいな講座を受けたこともないし、経本を少し読んでも「ひとそれぞれじゃねえか〜?」と思ってやめてしまった。


 ああいう本って技巧の話が多くて、まず型をわかってないとどうにも活かせないんじゃないかと思う。


 その意味だと、役に立ったのは好きな映画や小説に対してプロが書いてるレビュー。映画評論とか文学解説とか。元々好きなものをプロが分析してくれれば、その型を真似て書きやすいから楽。



 中でも一番いいなと思ったのは、映画監督兼脚本家・榎本憲男の脚本術。


 それによるとハリウッドの映画は起承転結の四幕ではなく、三幕で構成されてるそうだ。

 起承転結ってわからないからありがたい。承がわからん。何を承れって言うんだよ。



 三幕構成の基本は野球のホームベースを想像するといいらしい。

 自分は野球を見たことがない。二刀流の大谷翔平はバットを二本使うんだと思ってた。だから、wikiで「野球」の項目を見た知識で話す。


 野球はホームベースから走って、一塁二塁三塁と走り、またホームベースに戻ってくるという。体力がすごい。



 三幕構成のうち、主人公が日常から非日常の物語へ出塁するのが一幕、物語の中で奔走する二幕、日常へ再び戻るのが三幕だそうだ。


 大切なのは主人公が一幕で出発するための目的だとか。

 そして、二幕で最初の目的よりも本当に自分が求めていた目的に気づき、三幕で結局同じところに戻ってきたけど得たものはあったよねという感じ。

 確かに往年のハリウッド映画ってそういうのが多い気がする。ローマの休日とかカサブランカとか。



 この構成、バトルものを長編で書くときにめちゃくちゃ使いやすい。

 主人公が何かのクエストを受けて出てギルドに戻ってくるやつ。これを繰り返しまくると長編にできるのだ。


 あと、少女漫画でよく言う、主人公は最初に好きになる王子様タイプの白イケメンより、第一印象が最悪だった黒イケメンとくっつきやすいってのも近い。

 高嶺の花の白イケメンに近づこうと努力するうちに、本当は身近にいた黒イケメンの大切さに気づいて戻ってくるみたいな。目的の変化と日常への帰還ですね。


 ホラーではこれを悪用すればいいのだ。真の目的を得て成長した主人公は日常に帰還できず地獄に突き落とされたまま。哀しいね。



 あと、これを知って読むとジャンプ漫画で劇場版になったり、「アニメ化されたら1クールの後これを映画にしてほしいよなー!」って話題になるパートは結構当てはまる。

 鬼滅の無限列車編もそうだし、よく映画的だと言われるチェンソーマンのレゼ編は完全にこの三幕構成。

 あと、ジャンプラのいい読切とか第一話がすごく面白い漫画とか。



 三幕構成で何か例に出したいと思ったのだけど、例え話のために映画一本観せるのは大変だし、時期的にもちょうどいいのがあった。


 上記のチェンソーマンの作者の元でアシスタントの経歴がある賀来ゆうじの今月からアニメ化された漫画、地獄楽。

 この一話がすごく三幕構成。無料試し読みできる部分だから話していいはず。



 舞台は江戸。

 心を持たない冷酷な暗殺者として巷を騒がした忍者がついに捕縛された。著名な処刑人一族の女は彼の斬首を任されるが、この忍者、特殊な訓練と忍術のせいか火刑でも八つ裂きでも殺せない。これが一幕。


 忍者は「抵抗する気はないし殺してほしいくらいだ」という。彼の目的は死ぬこと。処刑人の目的は殺すこと。合致してるけど状況がそうさせない。これが二幕。

 書き忘れたけど二幕目には葛藤とか苦悩が大事らしいです。


 処刑人は何度も忍者の処刑に失敗するうちに、殺せないのは彼が無意識に死にたくないから抵抗してるんじゃないかと気づく。

 実は、忍者が捕縛されたのは愛妻のために殺しの仕事を足抜けしようとしたところを陥れられたからだった。


 彼が偽っていた「死にたい」という目的は、「妻のために生きたい」に変化する。

 殺さなきゃいけない処刑人と、死にたくない死罪人。ふたりの目的は相反するものになった。

 葛藤の話ができた! 伏線回収!


 忍者の本心を知った処刑人はあるお触れ書きを持ってくる。

 謎の島に行き、幕府が求める不老不死の霊薬を持ち帰れば死罪人も無罪放免にするという任務だ。

 彼女は危険な任務を遂行する罪人を探していた。

 死罪から解かれたい忍者と、そのための罪人を求める処刑人。

 お互いの本当の目的が合致した。三幕目、ホームベースに帰還!


 状況自体は死罪人と処刑人で何も変わってない。

 でも、自分の願いに気づいた主人公が戻ってきた現状は希望があるものになっている。


 一話の構成がめちゃくちゃいいので試し読みしてほしい。



 でも、だんだん真面目な異能バトルになっていくのでファイアパンチやチェンソーマンを期待するとちょっと違うと思う。ハンター×ハンターとか呪術廻戦が好きなら合うんじゃないかな。自分は異能バトルしてない頃のが面白い気がしました……。

 衛善殿が好きです。


 何の話しに来たんだ。地獄楽のダイマ?

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