第232話
◆
目的は昨日学校で用意した受験勉強のための資料などを渡すためで、
マンションへ着くと
考えれば、同じく岸元さんが酷い目に遭った原因の二之宮さんとも友好的な関係を築いているし本人が反省しているのなら過去を気にしない考え方をしているのかもしれないし、それは見習いたい考え方だと思う。
わたしに置き換えると
それはそれとして鷺ノ宮君は昨年末に会った時よりも表情が陰っていて、岸元さんとのお付き合いについて迷いがある様に察せられる。こればっかりは本人の考え方だからわたしがどうこう言えた義理ではないけど、できたら少しでも晴れて欲しいと思う。
鷺ノ宮君が出発し、それに付き添って岸元さんも一緒に出ていったので、わたしと二之宮さんと鷺ノ宮君のお姉さんの
たしかに、わたしから見ても那奈さんへ恩返しをしたいという本当の目的が透けて見えるし、那奈さんもそれを感じて思うところがあるのでしょうけど、合格できそうで挙げた大学が都内でも有名大学のラインなので、考えを変えるのは進学してからでも良いと長期戦で考えているのかもしれない。
進路についての話が終わって雑談をしていたら、スマホにマンションの管理会社から電話の着信があったので断りを入れて応答させてもらった。
電話の内容はわたし達が借りているマンションで隣の部屋の失火で火事が起きてしまったため、すぐに戻って燃えてしまったものの確認をして欲しいということだった。
ありがたいことに那奈さん達はわたしとみゆきが当面住む場所として居候させてくれると申し出てくれて、厚意に甘えさせていただくことにした。
一度マンションへ戻りみゆきと合流し、消防の方と一緒に部屋の状況を確認して火事を発生させたお隣側の部屋はかなりひどく燃えてしまっていたものの、反対側の部屋は無事だったものもあり貴重品を中心に持てるだけ持って後の事は明日以降に対応ということにした。
「初めまして、高梨百合恵の友人で同居人の
「いいのですよ。困った時はお互い様です。それに、見ての通りで空き部屋がありますからお気になさらないでください」
「改めまして、わたしの友人というだけなのに赤堀まで居候させていただいてありがとうございます」
「先生も大変だったのですから気を楽にしてください。
私こそ
もちろん火事は良くなかったですけど・・・」
◆赤堀みゆき 視点◆
マンションのお隣が火事を起こし私達が住む部屋も半分くらい燃えてしまって住めなくなっていたところに、百合恵の学校の伝手で一時的に居候させてくれると申し出てくれている方がいると言われ、そのご厚意に甘えさせてもらうことにした。
最初はバタバタしているところでの話だったので最低限の情報しかなかったけれども、荷物を持って向かう先を聞いた時には驚いた・・・少し前に居候させてもらっていたマンションだったからだ。
目的のマンションへ向かいながら百合恵から話を聞くと、
『反省しているから許す』までは私でも納得できる感情ではあるけど、そこから更に手を差し伸べてあげるというのはなかなかできることじゃないと思う。しかも持ち家を貸すというのは転居するまでずっと関係が続くということで、嫌なことを思い出すきっかけが付き纏うということでもあるのでお金の問題を別に置いてもなかなかできる決断ではないと思う。
冬樹は精神的に弱ってお医者さんにかかっていたけど、そんなことなど感じさせない強さを感じられる。
「それにしても、またここの部屋に居候させてもらう事になるとは思ってもなかったわ」
これからお世話になるマンションへ着き、家主の鷺ノ宮那奈さん達に挨拶をし、その際に『お互いフランクにして堅苦しい言葉遣いをしない様にしましょう』と申し合わせたところで思わず口にした。
「赤堀さんは
那奈さんが尋ねて来たので少し考えてから答えを口にした。
「ええ、百合恵をきっかけに冬樹と知り合い、それから親しくしてもらっていて、その頃ちょうど問題が起きて私が住むところがなくなって困っていた時に少しお世話になっていたの」
「そうだったのですか。それにしても神坂さんは本当に優しい方ですよね。
私達も本来なら気に掛けてもらえるような間柄ではないのに、凪沙のためにセキュリティがしっかりしている住まいを探していると知ってここのお家を手数料とかかからない様にお貸しくださいましたし、損得の前に関わり合いになりたくないと思うのですが、そう言った
◆二之宮凪沙 視点◆
高梨先生の住んでいるマンションが火事に遭い、那奈さんの申し出で急場の住まいとしてこのマンションの空いている部屋をお貸しすることになった。もちろん私としても高梨先生には返しきれない御恩があるので、それを少しでもお返しできるならと賛成した。
そして、高梨先生は離婚されてからご友人とルームシェアをされていたということで、そのご友人も一緒に居候することになった。
高梨先生のご友人というので高梨先生の様な方かと想像していたけど、想像していたよりも砕けた性格のようで最初の挨拶の時に堅苦しい言葉遣いをしないようにと提案され、私と那奈さんが了承すると本当にフランクな話し方になり、馴れ馴れしくも思える言い回しなのだけれど不思議と嫌な気分にはならなかった。
それと共通の話題が少ないというのもあるのだけれど冬樹の事をよく話され・・・高梨先生のことよりも・・・しかもそれは愉しそうで、赤堀さんが意識しているのかどうかはわからないけど、冬樹への強い好意を感じさせられるものだ・・・少し前の私だったら嫉妬に狂っていたかもしれないくらい。
赤堀さんは高梨先生と同世代の様だし、そんな年の差があるのに好意を持たれる冬樹はすごいと思う。この気持ちは思慕でなく尊敬・・・冬樹に対しては善き友人になりたいという思いはあっても、もう付き合いたいという気持ちは湧いてこない。私では
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