第204話
◆
週明けで教室に入ると
「おはようございます、明良さんはどうされたのですか?」
「それなんだけど、みはるんに相談というかお願いがあってね・・・」
「とりあえずお話を聞かせてもらえますか?」
「うん・・・この講義の終わった後に
「それで、玲香さんの代わりに私が明良さんと佐々木先輩と会う約束の同席者になって欲しいということですか?」
「うん・・・もちろん、みはるんにも都合があるだろうし、そうでなくても巻き込んじゃって迷惑かけているから・・・」
「ごめん、美晴さん!でも、できたらお願いしたいんだ・・・心細くて・・・」
それまで玲香さんと私のやり取りを見ていた明良さんが急に頭を下げて、声も力が抜けるように弱くなっていき気の毒になるくらい悲壮感が漂わせていた。
「わかりました。今日は用事もありませんし、玲香さんの代打を務めさせてもらいます」
「ありがとう!美晴さんが困ったことがあったら何でもさせてもらうから!」
「みはるん、ごめん。でもありがとう、アタシも返しきれない借りが既にあるけどみはるんが困った時にはちゃんと手助けさせてもらうからね」
「お二人とも、そんなに気にしないでください。そもそも、玲香さんと違って気が利いたことの一つも言えないですし、期待しないでくださいね」
「いや、ぼくは一緒に居てくれるだけで助かるから。本当に感謝だよ」
講義の時間の直前になって、玲香さんと明良さんは教室を出ていった。
講義が終り、教室を出るとすぐ側に明良さんが待っていて、私の姿を見るとまるで飼い主を見付けた犬の様に表情が明るくなり駆け寄ってきた・・・大型犬に駆け寄られたことはないけど、こんな感じなのではないかと想像すると可笑しくなった。
佐々木先輩とは大学の近くのファミレスで待ち合わせていて、事前に連絡をしていた様で私が同伴していても驚かれた様子はなかった。
私たちも席に着き、いざ話をするとなっても佐々木先輩も明良さんも緊張して声も発せない状況なのが明らかで、気の利いたことを言って空気を弛緩できないかと思ったものの、残念ながらそういう事は苦手で考え倦ねていたところで、スマホが通話着信し、相手が
「すみません、緊急そうな電話がかかってきたので少し席をはず・・・」
言いながら席を立とうとしたら明良さんが私のワンピースを
「・・・さない方が、良さそうなのでこの場で失礼しますね」
ふたりから『助かった』という声なき声を感じながら応答した。
「はい、岸元です」
『鷺ノ宮です、今、お電話大丈夫でしょうか?』
「大丈夫ですよ、わざわざお電話をいただいたという事は緊急の要件があったのではないですか?」
『はい、実は
「ええ?凪沙さんが行方不明になったのですか?」
『はい、病院で看護師さんが凪沙が居なくなったことに気付いて、すぐに探してくれていたみたいなのですけど見当たらなくて・・・
病室に元から着ていた服はあるので入院着のままみたいではあるのですが、外へ出ていってしまっているのではないかと・・・』
「わかりました。知り合いに探してもらえないか呼び掛けてみますね」
『すみません、お気遣いいただいて・・・でも、お言葉に甘えて協力していただけたら・・・』
「良いのですよ。困った時はお互い様ですから、あと
『はい、もちろんすぐに送らせていただきます』
「それでは、一旦電話を切りますね」
『よろしくお願いします』
那奈さんとの通話を終えて意識をテーブルへ戻すと、心配そうに見つめてくる明良さんと、先程までと違って真剣な表情の佐々木先輩が鋭い眼差しで私を見ていた。
「岸元ちゃん、誰か知り合いが行方不明になったって感じに聞こえたけど、どうなの?」
「はい、その通りです」
「なら、探すのを俺にも協力させてくれないか?」
「それはありがたいですけど・・・」
「遠慮はいらねーよ。俺のワガママに付き合ってくれてる岸元ちゃんに借りを返しておきたいし、何より行方不明なのって女の子だろ?
そんなのを放っておけねーよ。俺の伝手に声を掛けまくって探してもらうからさ」
「ぼくも放っておけないかな。佐々木先輩みたいに伝手とかないけど、手伝えることは手伝わせて欲しいな」
「ふたりともありがとうございます」
そうして、すぐに那奈さんから二之宮さんの写真と着ていると思われる入院着の写真が送られてきて佐々木先輩と明良さんにも共有したら、すぐに探しに出てくれた。
私は美波や
◆二之宮凪沙 視点◆
看護師さんに指示された検査室用の待合室に来たものの、前の人が長引いてしまっているのか呼びに来てもらえないので椅子に座って待つことにした。
昨夜は色々考えすぎて全然寝られず眠気が酷いけど、検査だけだからなんとかなるだろうと思う。
なかなか検査の呼び出しがかからないと思いつつ、待合室の暖房が寝不足の私にはたまらなく心地よく眠りを誘ってくる・・・
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