第160話

神坂冬樹かみさかふゆき 視点◆


クラスへ復帰して2日目も初日から大きく変わり映えすることなく、ハルや美波みなみ梅田うめださんと固まってことが多く、そこへ新谷しんたに君と大山おおやまさんが混ざってくるような感じだった。


大山さんは夏休みの直前に僕の冤罪が晴れた時に真っ先に謝罪をして仲良くして欲しいと声を掛けてくれていたのに有耶無耶にしてしまい歩み寄らなかった僕に対して、それでもなお歩み寄ってくれているのでこれからはしっかり歩み寄っていきたいと思う。



意外なのはハルが梅田さんに対してとても面倒見が良いことだ。いくら生徒会長として転校生へのフォローを求められているのだとしても過剰な対応のように思えるし、そもそも幼稚園や小学校の時から僕や美波とずっと一緒だったこともあって人見知りがちなところがあり、梅田さんへの接し方がこれまでの例にない珍しい状況だったりする。


梅田さんへ迷惑をかけているという感じではないから悪いことではないけれど不思議な感覚になる。




◆神坂春華はるか 視点◆


昨日『香織かおりちゃんも一度は学食へ行ってみた方が良いのでは?』と学食へ行くことを提案したところ、香織ちゃんは行きたいと言って賛成してくれたけど、フユたちからは断られたので、結局香織ちゃんとあたしのふたりで学食へ行くことにした。



香織ちゃんは声優の愛島唄あいしまうただと言うのにその事を鼻に掛ける様な事もなく色々な事を質問してきてくれて、早くあたし達と馴染みたいと思ってくれているのかと思えて嬉しくなる。


その中でもフユのことをやたらとよく言ってくれるのは双子として嬉しく思うのだけど、香織ちゃんはお仕事でフユより魅力的な人はいくらでも見ているように思うのにそこは不思議に思う。あたしにとっては自慢の相方だし、良く思ってくれているのが嬉しく、香織ちゃんにもっと知ってもらいたいと思い色々と話をして、香織ちゃんもあたしの話を興味深く聞いてくれて盛り上がった。




「・・・そんな感じであたしが信じないで騒いだせいでお姉もお母さんもお父さんもフユのことを責めて、それであたし達を見限ってフユは家から出ていってしまったの・・・」




「・・・その時にフユが住んでいたマンションに泊まりに行ったら・・・」




「・・・そんな状況で、関係は少しずつ修復してきているけど今もフユとは別々に暮らしているんだ」




◆梅田香織 視点◆


今日は春華さんとふたりで学食へ行き秀優しゅうゆう高校の学食を初体験することに・・・わたくしは量よりも健康重視の野菜が多い定食を選び、春華さんは肉を中心に量も多い定食を選んでおかずをシェアしながらいただいた。値段と量と味からすると良心的と思える内容で、たまにはこうやって学食に来るのも悪くないと感じました。



せっかく春華さんとふたりきりなので色々な話を伺い、特に冬樹さんについて質問をしたら嬉しそうに教えてくださった。


少しだけ聞いていた冤罪に巻き込まれた事件についても詳しく聞いたら腹立たしく思いました。。


もちろん一番腹立たしいのは冬樹さんを陥れる原因を作ったという女子生徒ですが、冬樹さんを信じずに孤立させることになった春華さんや夏菜かなさんに美波さん、それに学校全体に対しても腹立たしく、そんな中で冬樹さんを支えた高梨たかなし先生には敬意と感謝の気持ちが生まれました。


転校前の説明の時から高梨先生には良い印象を持っていましたが、春華さんのお話を聞いてますます心象が良くなりました。



ただ、そう言った経緯があるからこそ交際するまで秒読みと思われていた美波さんとお付き合いをしていないどころか、この先もそこまで修復はしなそうというのは好機の様に思え、その点だけは美波さんの失策に感謝をしたいと思います。




その春華さんの話の中で気になったのが美波さんのお姉さんで、その方は5歳年上で大学進学とともに実家を出て一人暮らしを始められたとのことですけど、その割には冬樹さんとの距離が近いような話しぶりなのですよね。


質問をしても、春華さんの説明ではなんとも要領を得ないですし、でも嘘をついているようでもないですし謎が深まります。

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