第147話
◆
以前は1週間以上掛けて九州を福岡から鹿児島まで縦断したり北海道を広範囲で巡ったりした事もあったらしいけど、進学校として勉学に力を入れるべく修学旅行は日程を抑えて欲しいという要望があったとかで縮小していったらしい。去年のお姉の時も同じ旅程だったけど、
グループ決めは一学期に行っていたのであたしのグループの女子はその時から仲良くやっていたすーちゃんとよっちゃんの3人だ。ホテルの部屋も自由行動もグループが基本なので大事な組み合わせだけど、すーちゃんとは学期始めの一件以来ギクシャクしていて、あたしの不登校が明けてから関係が修復しつつあるけど一学期の頃のようにはいかず、たどたどしいところがあって間に挟まるよっちゃんにも気を遣わせてしまって申し訳なく思っている。
あたしが転校生の対応のために修学旅行明けにクラスが変わることをふたりにだけ伝えていて、よっちゃんは残念だと態度に出してくれているけどすーちゃんはわからない・・・このままだとクラスが変わったら交流が全くなくなってしまいそうで嫌だから、この修学旅行でちゃんと仲直りをしたいと思っている。
そんな修学旅行がいよいよ始まった。
◆神坂
今日から2年の修学旅行が始まり1学年まるまる居なくなっていて学校の雰囲気もどことなく静かになっている。
僕と
美波も同じ様な考えで参加しないと決めたらしい。
ただでさえ1学年不在で静かな授業中にトイレへ行き、用を済ませて教室へ戻ろうとしたところで声を掛けられた。
「すみません。職員室へはどうやって行けばよろしいでしょうか?」
声を掛けてきたのはうちの学校のものではない制服を着た女子だった。パッと見た感じは派手な印象を与えるものの落ち着いた雰囲気でもあり、更に華があり役者かモデルと言われても納得できる容姿で、美晴さんという素敵な恋人がいる僕でも思わず目を奪われてしまうほどだ。
「職員室ですか。ここからだと口頭で説明するのが難しいので案内しますね。僕についてきてください」
「ありがとうございます。
でも、あなたは教室へ戻らないといけないのではないですか?」
「お気遣いありがとうございます。
でも、僕はちょっと事情があって大丈夫なんですよ」
「そうなのですか。では、お言葉に甘えて案内していただきますね」
職員室まで移動しながら彼女は
「ここが職員室ですけど、どなたを訪ねるのですか?」
「重ね重ねありがとうございます。
「高梨先生ですね、じゃあこちらへ。
失礼します」
高梨先生のデスクを見るとパソコンで作業をしている姿が見えたのでそのまま梅田さんを連れて先生のところまで移動し声を掛けた。
「高梨先生、転校生の梅田さんをお連れしました」
「え?あっ、ふっ、神坂君?
どうして!?
・・・あ、梅田さんを連れてきてくれたのね。ありがとう」
「いえ、当然のことです」
「ごめんなさい、梅田さん。
わたしが本日対応させてもらいます高梨です。
それじゃ神坂君、あとは大丈夫ですので教室へ戻ってください」
「はい、わかりました。それでは失礼します」
◆高梨
2年生の修学旅行の初日の今日、翌週から転校してくる梅田さんが手続きに来ることになっていて、本来なら担任の
その手続きの準備をしていたら予定よりも30分くらい早く冬樹君に連れられて到着したため焦ってしまって恥ずかしいところを見せてしまったように思う。
梅田さんは芸能活動をしていて元いた学校でその事が起因で騒ぎがあり、理事同士で繋がりがあるうちの学校で受け入れる事になったという背景は知っていたけど、見た目が美人というだけでなくオーラとでも言う様な醸し出す雰囲気が常人離れしているように感じる。どういった活動をしているのかは聞いていないけど、騒ぎになったくらいだし知っている人は知っているのかも知れない。
「・・・以上でわたしからの説明は全てですが、何か質問はありますか?」
「ひとつ良いでしょうか?」
「はい、どうぞ」
「わたくしを高梨先生のところまで案内してくださった男子生徒のお名前をお伺いしても良いでしょうか?」
「彼ですか?神坂君ですよ」
「できましたら、下のお名前と学年も・・・」
冬樹君、職員室まで案内した僅かな時間で見初められたのかしら?
たしかに冬樹君は見た目だけでもカッコいいし、達観した精神性と知性から滲み出る高校生離れした雰囲気があるから梅田さんのような芸能活動している
「フルネームは神坂冬樹君で、学年は2年生です。
流石にこれ以上の事はわたしからは言えませんので、あとは自分で聞いてくださいね」
「はい、わかりました。ありがとうございます」
梅田さんが帰ってから、何人かの先生に梅田さんの事を知らないか尋ねてみたけど知っている先生はいなくて、ネットで検索してみてもヒットしなかったので芸名で活動してて本名は知られていないのかもしれないと思った。
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