第145話
◆
「ところで、ここのところメイクや髪型が変わっていますけど、種明かしはしてもらえますか?
最近その事に触れても
帰宅した直後に美晴さんの部屋を覗いた時の勢いでセッ●スしてしまったので、美晴さんとふたりでお風呂に入り汗を流している・・・そんな状況の中で今までちゃんと訊けずにいたことを尋ねてみた。
「そうよね、理由がわからない変化は不安にさせちゃうよね。冬樹くんに褒めてもらったのが嬉しくてそこで思考が止まってた。ごめんね。
「そうでしたか。たしかに
「そうなの。驚くほど広くて、あの時から一緒に行動することが多くなったのだけど、今でもまだ初対面の人によく会うし、聞くとまだ同じ大学だけでも会っていない知り合いがたくさんいるんだって言うの」
「それはすごいですね。
そう言えば、津島さんとはお詫びでうちに来た時からお会いしていませんけど、まだ落ち着いた格好をしているんですか?」
「うん。まだあの時と同じ感じの格好だね。髪も黒いままだし落ち着いた服を着ていることがほとんど。
深く反省しているみたいで、何度言っても以前の様な格好にしようとしないんだよね・・・前の感じの方が玲香さんが好きな格好だと思うのだけど・・・」
「う~ん。僕も全然気にしていませんし、イヤじゃないなら以前の様な格好に戻された方が良いと言ってあげてください。
やっぱり好きな格好をする方が良いと思いますし・・・」
「そうだよね。次に顔を合わせる時に冬樹くんも言ってるよって促してみるね」
「ぜひ、そうしてください。
それと、美晴さんが使っていた
「そ、それは!
・・・同じくらいの大きさのじゃ全然気持ちよくなかったから・・・そんなこと言うなんて意地悪っ」
「すみません、でも・・・だって、あんなの求められても僕のはそこまで大きくないですし・・・」
「あれはただの道具だからっ!
愛してる人の方が良いに決まってるの!!」
「わ、わかりましたから・・・今までの分も含めて美晴さんが満足できるように頑張りますから」
「もうっ、冬樹くんのいじわるっ」
そうしてお風呂場でも美晴さんに満足してもらうように頑張った・・・みゆきさんには申し訳ないけど、やっぱり居候は居ない方が良いと思った。
◆
「今更だけど、百合恵は本当に良かったの?」
「なにがかしら?」
「いや、何がって・・・私は
「別にみゆきならわたしの意思を無視してどうこうしようとはしないでしょう。
わたしが知っているみゆきはそういう
それにあなたは恋がよくわかっていないだけで、おそらく同性愛者ではないわ。
実際に冬樹君を襲って妊娠しただなんて騒動を起こしたくらいだし」
「それを言われると耳が痛いわね。
たしかに言われてみると昔からずっと百合恵のことが好きなのは確かだけど、その気持ちが具体的にどういうものなのかは自分でもよくわからないわね」
「そうでしょう?
なんならわたしとキスしてみる?」
「あなたって人は・・・いいわ、キスしてやろうじゃないの!」
「え?ほんとに?」
「百合恵が誘ったのよ」
内心ではものすごく焦っている。百合恵の澄ました表情がどことなく憎たらしく感じて一矢報いたい気持ちが湧き上がって挑発に乗ったフリをしてみた。
もちろん百合恵が詫びを入れて撤回すると踏んでのことだ。
「仕方ないわね。わたしが言ったことだし・・・」
「んッ!?」
まるで『ちょっとミスをしたから修正するか』くらいの気安さで百合恵は自分の唇を私の唇に重ねてきて、更に舌を口腔内へ押し入れてきて私の頭の中は真っ白になった。
ほんの数秒のはずなのに何時間にも感じた百合恵との口付けは、私が何もできないまま硬直していたら百合恵の方から離れていきその時間が終わった。
「あ、あなたっ!なんてことするの!」
「だって、キスしてやろうじゃないのって言うから」
「だからって、ほんとにするなんて!」
「ごめんなさいね。
でも、やっぱりみゆきはわたしの事を恋愛対象としては見ていないわね。
それがはっきりしただけでも良かったのじゃないかしら?」
そう言っていたずらが成功したかの様な笑みを浮かべる百合恵の表情は久しぶりに見るものだった。
そして百合恵が言うようにわたしは百合恵のことを恋愛対象としては見ていないのだと思う。キスをされた時に思い浮かべたのは私が失意の勢いから初めてを奪ったあの少年の顔だった・・・
◆
那奈さんを通じてわかりそうな冬樹についても、どうしてもと言う状況でもなければ聞かない方が良いと思い聞いていない。
そういう状況にあって現状を知らせたいと思ったのが
連絡先が解らず学校へは近寄りたくなかったので、申し訳ないと思いつつもご自宅へ押しかけることにした。
高梨先生の住むマンションへ着きインターホンを鳴らすと応答したのは知らない女性だった。
『どちらさまでしょうか?』
「
『高梨?』
「はい、高梨百合恵先生です」
『ああ、
「現在のお住まいはわかりますでしょうか?」
『知らないわね。学校にでも聞いたら?』
「そうでしたか。すみません、お邪魔しました」
つい最近までここに住んでいたのは間違いないので、この1ヶ月位で高梨先生は離婚してしまわれたのだと判断できる・・・しかもインターホン越しに応答した女性の感じからすると、追い出された可能性まで見えてくる。
たしかに学校へ行けば現在の住所がわかったり、本人にお会いできる可能性もあるだろうけど、できたら近付きたくはないので一旦保留にしようと思う。
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