第104話
◆
7月に妻
百合恵の態度は悶着以前と比べても目に見えて変化はない。
しかし、それまではいわゆる危険日のあたりでは子作りに励んでいたが、悶着の時に百合恵からそれも拒否したいと言われていた事もあり、百合恵から言ってくることもない・・・当たり前といえば当たり前かもしれないが。
そして、こちらから誘うにしても宣言通りしないという強い意志が感じられ翻意を願うことすら躊躇わせられる。
職場で同僚や同期に百合恵の事を相談していたことが変に伝わったのか『モラハラ野郎』や『DV夫』などの陰口も言われるようになっている。中には直接相談した女性にも『モラさん』などと言われていたりするなど、職場での居心地も悪いものになっていた。
9月に入り敬老の日が近付いたある日、姉貴から敬老の日に合わせて親父とお袋にお祝いをするから来ないかという誘いのメッセージがあったので、自宅最寄り駅から歩いて帰る最中に電話した。
百合恵との関係が良化していないのに連れて行くわけにも行かないし、ひとりで行きたくないので断ったらいつもの調子で親孝行したいときには親はなしだとかことわざを持ち出して説教を始めたので話を打ち切って電話を切った。
「すみません」
声を掛けられた方を見ると制服を着た女子学生だった。
「
その言葉で声を掛けてきた少女の制服が百合恵の勤める学校の生徒のものだと理解した。
「そうですが、なんの御用でしょうか?」
「実は折り入ってお話したいことがありまして・・・」
その少女の話をまとめると、百合恵は5月頃からとある男子生徒と親しくなっていて、7月に数日行方が知れなかった時もその男子生徒が一人暮らししている家に泊まっていたというのだ。その少女は明言をしなかったものの男女の交わりもあったのではないかと推測するものもあった。
証拠らしい証拠はないものの、メッセージアプリでの部活のグループのやりとりを見させてもらった雰囲気ではただの教師と生徒の関係と言うには疑わしい部分もあり、浮気をしていたのではないかという疑念が湧き、遡って考えると夫婦関係が悪化した7月の更に2ヶ月前からという時間がとても怪しく思えてならなかった。
◆
先日、
しかし、根拠はないものの何とも引っかかりを覚えたので日を改めて追い掛けてみたら、わざわざ不便な乗り換えをして少し遠目の駅で降り、追うと少し回り道をしながらも最終的には冬樹と美晴さんが住むマンションへ入っていった。
何者かに追跡されているとでも思って尾行を巻くような動きをしてまで誤魔化そうとしたという事実に強烈な違和感を持った。
学校の裏サイトにアップされていた高梨先生の旦那さんの写真を頼りに最寄り駅で張っていたら遭遇することができたので、高梨先生に不審な点があることをお話した。その話をしていた際には何となく得心が行くといった表情にもなったので旦那さんにも心当たりがあったのかも知れない。
そもそも
ともかく、旦那さんには
◆高梨百合恵 視点◆
敬老の日を含んだ3連休の初日の土曜日、これと言った予定がないので平日にできていない掃除をし、昼過ぎになって一通りの部屋の掃除が終わったところで買い物へ行こうと外出する旨を悠一さんへ告げたら棘のある雰囲気で返事をされた。
「
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