第55話
◆
朝はバタバタしていて気付かなかったのだけど、姉さんから
午前の授業の間の休み時間は授業が終わってからすぐに席を離れることで、
特に美波は
昼休みになり、法律研究部の部室へ俺、高梨先生、姉さん、ハル、美波、二之宮さんが集まり、全員が揃ったところで姉さんが話し始めた。
「実は昨日解散した後、私と春華と美波は高梨先生が下校するのを尾行する
塚田先生は高梨先生が学校のすぐ近くのスーパーで買い物をして、そのあと学校近くのマンションへ入って行ったのを見届けてから学校へ戻り、私達はそこで追うのをやめたのだが、そんなことがあった」
「追い掛けている間の塚田先生はキモかったよ。
フユ達には悪いけど、あたしのクラスの担任じゃなくて良かったと思ったもん」
「キモい・・・は言いすぎだと思うけど、自分のクラスの担任のそんな姿は見たくなかったですね」
先生は絶句して何も言えなそうなので俺が受け答えようとしたところで二之宮さんが姉さんに質問をした。
「生徒会長、そのマンションとは校門を出て駅とは反対方向に行って2つ目の十字路を左に入ったところにある高そうなマンションですよね?」
「え?そうだけど、二之宮さんは知っているの?」
「ええ、それは」
そこで俺が言葉を差し込んだ。
「後は俺が説明するよ。
その先生が入っていったマンションは俺が住んでいるマンションで、先生は事情があって少しのあいだ俺の家に滞在している」
「ええ?フユ、そんな近くに住んでいたの?」
「ああ、父さんに出てけって言われたから数日ホテル暮らししながら急いで買ったんだよ。
前の持ち主がすぐに現金化したかったみたいで相場よりかなり安かったし、スムーズに受け渡しができたよ」
「はぇ~、さすがフユだね。投資が得意でたくさんお金を稼いでいるのは知ってたけど、マンションをポンッと買えちゃうくらいまで稼いでいたとは知らなかったよ」
「話をちゃんと聞かなかった私達や出て行けと言ったお父さんが悪かったけど、冬樹がそこまで行動できたのは誤算だったな・・・
それに、どうせ
「ま、姉さんの想像通り仁科の婆ちゃんには親権者代理とかやってもらっていたよ」
「あー、仁科のお婆ちゃんがフユに味方してたのかぁ」
「仁科って、小母さんのご実家よね?」
「そうだよ、美波ちゃん」
「っと、話が逸れてしまっているけど、要は先生は今俺の家で暮らしているわけだけど、学校関係者に知られるとまずいから塚田先生に目を付けられているならどこか別のところへ・・・」
「心配かけてごめんなさい。神坂君が色々してくれて助かっていたのは本当だけど、さすがにこれ以上は迷惑をかけられないから自分の家へ帰るわ」
「でも」
「いいの。そもそも考える時間をもらえたから感謝しているのよ。
むしろ、神坂君を
「じゃあ、あたしがフユの家に行く!」
「おっ、おい、春華ズルいぞ。せめて何日か交代にしろ」
「う~ん、そうだね。お姉も美晴お姉と遊びたいだろうし、それでいいよ」
「ハル、なに勝手に決めているんだよ」
「でも、先生が言うように美晴お姉とふたりきりにするのはまずいでしょ。
それをあたし達がわざわざ問題を解消しに行ってあげるんだから感謝してよ」
「まぁ、そうだな・・・わかったよ。そのあたりはハルと姉さんに任せるよ」
「よっしゃ!じゃあさ、ハル、今日からよろしくね」
「はいはい、よろしくな」
「春華ちゃんだけずるくない?
ねえ、冬樹。お姉ちゃんもいるんだし、わたしも泊まりに行って良い?」
「あーあー、良いよ。もう好きにしろよ」
「じゃあ、春華ちゃんと一緒に行くね」
「あっ、あの!私も神坂君のお家でお泊りしたいです!」
「二之宮さんも?
さすがに二之宮さんとはひとつ屋根の下で寝泊まりする様な付き合いは無いし、遠慮してもらえないかな?」
「そ、そうですよね。ごめんなさい、変なことを言ってしまって」
「いや、いいよ。さすがに、二之宮さんが俺の家で寝泊まりはキャパシティオーバーだからさ」
結局、放課後になったら姉さんと俺のマンションまで来て先生の荷物を回収して学校へ戻り先生はそれを受け取ったら自宅へ帰ることになり、ハルと美波は一旦家へ戻ってから荷物を持って俺の家まで来ることになった。
旦那さんと一緒に居たくないというほど追い詰められていた先生が家へ帰るのは心配だ。
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