第29話
◆
わたしは運転免許を持っていないのでみゆきが持っていてくれてトラックを借りられたのは助かっているのだけど、神坂君とふたりきりにさせてしまうのはなんともモヤモヤしてしまう。
「先生、私達の事に巻き込んでしまってすみませんでした」
「そんなことないわ。生徒の家に居候するということには思うところがあるけど、実際に夫とは冷却期間が必要だし、そのために住むところが欲しかったのだからわたしがお礼を言いたいことよ」
「そう仰っていただけて助かります。正直なところ、
「そうよね。いくら好きな人だからってひとつ屋根の下は怖くなっちゃうわよね」
「恥ずかしながら、そうでした。それと・・・」
岸元さんが歯切れが悪くなり、言葉を待つと神坂君の冤罪事件についてわたしが知っていることを教えてほしいと請われ、客観的に知っていることを話した。
「ありがとうございます。
でも、犯人の生徒たちに対して復讐心を持っていたのはわかりませんでした。
私に対しては昔の冬樹くんとあまり変わらない接し方をしてくれていたので意外でした」
「やっぱり、神坂君はもともと人を恨むような性格じゃなかったのね」
「はい。本当に優しいを体現した様な性格で、いつも穏やかで、それでいて頼もしくカッコいいのが冬樹くんです。
なので、復讐したいとお聞きして少し怖くなりました。
昨日、うちの妹に他の被害に遭った女子生徒達で協力して動画がバラ撒かれないように連携したらどうかと提案してくれて、実際に冬樹くんを陥れた女子生徒と調整までしてくれていたので、前向きに頑張る冬樹くんは変わらないなと思ったのですけど、やっぱりまったく影響がなかったとは言えなそうですね」
「
そんな素敵な男の子と幼なじみだなんて岸元さんがうらやましいわ」
「それは・・・でも、私もつい先日までは妹と相思相愛だと思っていたので、そんなふたりを見ているのが辛くて、本当は家から通えるのに大学の近くに一人暮らしをさせてもらって逃げてたんです」
「たしかに、自分が好きな人がすぐ側で別の女性、それも身内と付き合っているのを見るのはつらくもあるわね」
「はい。私と冬樹くんはほぼ5歳差で、学年でも4つ離れているので、中学や高校の頃は年の差がすごく高い壁に思えて、それもしんどかったです」
岸元さんの話を聞きちょっとしんみりしたけど、わたしも力になってあげたいと思いながら、みゆきと神坂君が戻ってくるのを待った。
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