第27話
◆
要は、先生はお一人ではなかったということだ。そして、隣の美晴姉さんも気付いたらしい。
「す、すみません!先生お一人ではなかったのですよね!今すぐ別の席へ行きます!」
すぐに移動しようとしたら、すっと先生の隣りに座った女性に声を掛けられた。
「待って。私も神坂君に言いたいことがあったからちょうどよかったわ」
「え?失礼ですが、初めましてですよね?
それと、
「そうよ。私は
そして、神坂君の名前は百合恵から聞いていたから知っていたの」
先生の親友というこの女性、見た感じ座っているからはっきりとはわからないけど身長は美晴姉さんよりちょっと高めなくらいで顔つきも若く見えるが、先生の名前を呼び捨てにするところを見ると同級生っぽい。
そんなのは良いのだけど、この赤堀さんからは敵意を感じる・・・先生は何を言ったのだろうか?
「そうなんでしたか。先生には最近大変お世話になっていて、なにやら困っていそうでしたので、恩返しに何かできればと思って声を掛けさせていただいたのです」
「そう、でも百合恵の悩みは高校生にはどうにもできないわ。
当面住むところを探しているのだけど、このあたりで半日探しているのに、それでも見付かってないの」
「そんなことでしたら、すぐに解決できますよ?」
「は?何を言ってるの?住むところよ?あなたに用意できるの?」
「はい、学校から2分くらいのマンションに住んでいるのですけど、空き部屋が3部屋あって・・・いや、ひと部屋は美晴姉さんが住むことになったから2部屋ですね。
僕との同居になりますけど、美晴姉さんも一緒に住むことになって、むしろふたりきりが宜しくないので、先生にも住んでもらえると助かるまであります」
「え?ホントに?
「ちょ、ちょっと神坂君!
「いえ、成り行きがあって今日から同棲と言うか、僕の介護役として同居してもらうことになりまして、ここでご飯を食べたあと必要な物を買い出しに行こうとしていたところなんですよ」
そこから、昨日俺が
「あなた、高校生なのにすごいのねぇ。
それならいくら幼馴染みの大学生だとは言え、年若い男女だけでひとつ屋根の下は良くないから百合恵も同居して監視した方が良いわよ」
「たしかに神坂君と岸元さんだけというのは感心しないけど・・・
だからと言って、教師が生徒の家に居候するなんてダメじゃない?」
「僕は先生が一緒に住んでくれた方が美晴姉さんが抑えてくれると思うので助かるのですけど、そもそも何で一人暮らしをするのですか?
旦那さんが急な出張にでもなったのですか?」
先生は言い渋ったのだけど、赤堀さんが切り出して話を聞くことになり、要約すると旦那さんから許せない暴言をぶつけられしばらく距離を置きたいとのことで、学校の近所でマンスリーマンションを借りようとしていたが、条件に合う物件が見つからなかったという事だった。
さすがに先生が許せないほどの暴言の中身は聞いていないけど、先生を傷付けるなんていうのは許せない。
俺の気持ちとしては今すぐ別れさせたいけど、それがダメなことはわかる。
それはそれとして、先生には変なところへ行って苦労をして欲しくないので美晴姉さんを理由にして説得し、しばらく俺のマンションで暮らしてもらうことにしてもらうことができた。
あと、赤堀さんがずっと敵視してきて居心地が悪かった・・・
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