ひねくれぼっちにラブコメなんて有り得ない!?
小鳥遊咲季真【タカナシ・サイマ】
学校校則編
第1話 孤独とは一人ぼっちのことである
孤独とはひとりぼっちのことである。
辞書を引くとこのように出てくるのだ、間違いない。では、孤独であることはいけないことなのか。そんなことはない。人間誰しも究極を極めればひとりだし、他人とは物理的にも精神的にも自分と乖離した存在であるからにして、自分ではない。つまり、自分とはひとり。ひとりぼっち。孤独である。自分とは孤独であり、生まれながらのひとりきりであり、ひとりぼっちである状態こそが正しい状態であり、振る舞いであると言えよう。故に孤独でない人間、群れている人間は最悪である。少なくとも俺の中の定義では、『よろしくない』に該当する。親友なんてのはいてもひとりいれば十分だし、たくさんいてみんながみんな親友なんてその言葉に嘘偽りしかなさそうな言動は、やはり孤独を紛らわすための愚行であると言わざるを得ない。他人というのは、人間という人間、というのは基本的に全て敵である。俺の孤独を脅かす脅威でしかない。
十四歳という中学にして二年生の学年を迎えて一ヶ月。つまり五月。様々な好奇心な、特異だっては、ありふれた友人やら異性やらへの興味関心、好奇心が自分自身にないのかといえばそれは嘘になるが、しかし孤独を愛する、他人との関係より自分自身を大切にする自分である。ゆえに友などいらない。まあ、どうしてもっていうならひとりぐらいならいてもいいかな? とは思わないでもないけど。まあ、でもめんどくさそうだからひとりぼっちでいいや。ぼっち最高。孤独こそ孤高。
そんなとある日の帰りのホームルームまでの隙間時間。隣近所の席の人とお話タイムを繰り広げることが多いこの時間、もちろんぼっちの俺にその相手はいない。誰とも話さず、静かに読書。ただ時を待つ。……ふぅ、いい時間だ。誰とも話さず、本に書かれた言葉を自分に向けて自己と対話するかのように読み耽る。流れ、流れてく洗練された言葉はさすが書籍化作家の一言。デビュー作ということで、本屋のポップと帯の広告を見て、裏のあらすじを読んで、なんとなくいいかもしれないと思って買って読んでみたが、これは当たりだな。数少ないお小遣いから捻出したかいがあった。お小遣いから出すとなると、購入をなかなかためらいがちになるが、それだけに思い入れも強く、記憶にも残りやすい。また一つ脳内名作ライブラリーに所蔵されたな、うん。
しばらくして担任がドアをガラガラと開けてやってきて、帰りのホームルームを始めた。そしてそれは特段特別なこともなく、つつが無く終わり、起立礼さよならとなった。
帰りのホームルームが終わると、今度は担任が朝に預かっていた私用のスマートフォンや携帯電話を返却する時間となる。教壇の上にカゴが置かれ、その中にドサッとスマホなどが入れられているから生徒たちは思い思い、各々で見つけて手に入れるのである。
この時、一斉にわっと集まりたくさんの手が伸びて混沌状態になりそうなのだが、しかし、なんとなく周りを見ながら、察しながらで順番に取っていくので、礼儀正しいというか、律儀というか。まあ、俺は察して察しまくって、一番最後なんですけどね。ぽつんと残ったひとりぼっちのやつを回収する。今日も今日とて最後である。
「
最後の自分のやつを手にしたとき、担任の大垣先生が声を掛けてきた。こうやって先生が話しかけてきたときは決まってろくなことがない。大抵悪い話か、良くない話か、自分にとって都合がつかない話か、まあ、その他諸々良くないはなしである。ちなみに先生は俺の遠い親戚である。
「ええ、そうですけど」
「そうか、じゃあ、あとでな」
なんですか、
先生が教室を出ていくのを尻目に、おれは自席へと戻り、自分のリュックサックに手を伸ばした。スマホを突っ込んで、リュックを肩に掛けると俺もそそくさと教室を出た。スマホをすぐに確認しなかったのは、俺がぼっちだからである。LAINEもメールも他人を必要とするからな。親から何かメッセージが来ている可能性はあるけど、たまご買ってきてとかそんな程度だろう。ならば、ごめーん確認してなかったとか、通知がうまく来ていなかったみたいとか言って誤魔化せばいい。ほんと、最新のアンドロイドなのに、結局は暇つぶしつき子供ケータイだぜ。
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