曰く付きの街たちがどぼん、と溶けたようだった。

-N-

曰く付きの街たちがどぼん、と溶けたようだった。



 曰く付きの街たちがどぼん、と溶けたようだった。

 私たちの終着地、花園のガス室。

 白くて、黄色くて、穏やかな死を迎える場所。街であった。

 そこへ、体育座りのまま、あるいは、純粋無垢な死体のような列車が、何も立てない静けさにてやってきた。

「この街はひどく澄んでいるね」

「まるで白装束を纏っているみたい」

 車両より窓を眺めていた娘達が口にした。

「お母さんもこの中に入るの?」

「ええそうよ」母は続けて「人はね、ここで仮眠をとって、そしてもう一度、世界に接続し直すの」

「そうなんだ」

それきり娘達は何も言わなくなった。母の接続性は薄れかけていた。頭の中には白百合の花が咲き誇り、アメリカンクラシック・サウンドが流れはじめていた。



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