第8話:夜会2回目
ここはゴルテア侯爵邸、複数の騎士がゴルテア侯爵領へ向かうべく玄関口にいた。その中にはシェズも含まれていた
「では我等はこれよりゴルテア侯爵領へ参ります。」
「うむ、頼んだぞ。」
「ははっ!お任せを!」
ゴルテア侯爵家に仕える騎士たちの隊長を勤めるライラ・ゴーデリア【年齢35歳、身長185cm、筋骨隆々、茶色の短髪、色白の肌、碧眼、彫りの深い十字傷のある精悍な顔立ち】がクリフに挨拶を述べた。シェズはというとアシュリーに別れの挨拶をしようとしたが門前払いを食らい、会えず仕舞いであった
「(くそ、アシュリーの奴、別れの挨拶すらなしに追い返しやがって!)」
シェズの心中はアシュリーへの怒りと憎しみに芽生え始めたが、どう足掻いても事態が引っくり返るわけもなく領地行きは免れなかった
「では出発!」
ライラの号令の下、騎士隊はゴルテア侯爵領へ向かうべく出発した。シェズはゴルテア侯爵邸が見えなくなるまで睨み付けた。アシュリーはというと見送りをせず自分の部屋にて騎士隊がいなくなるを待ちわび、執事から王都から出たと知らせを聞き、内心ホッとしたのである
「これで良かったのよ、これで。」
シェズがゴルテア侯爵領へ向かった事はジュードの報告によって知ったアルクエイドはアシュリー同様、ホッとしていた
「厄介なお邪魔虫がいなくなったのは幸いね。」
「旦那様、引き続き監視を続けますか?」
「そうしてくれ。途中でいなくなっては面倒だからな。」
「畏まりました。」
「失礼します。」
そこへ屋敷に仕えるもう1人の執事が1通の手紙を手に持ったままアルクエイドの下へ訪れた
「如何した?」
「はっ、ゴルテア侯爵閣下から御手紙にございます。」
「御苦労、ジュード。」
「ははっ。」
執事から手紙を受け取ったジュードは俺の下へ届けた。俺は手紙を広げ、内容を拝読するとウチに仕える騎士(シェズ)を領地警備を名目に遠ざけた事、次に行われる夜会のエスコート役の依頼である
「旦那様、侯爵閣下からは何と?」
「ああ、シェズとやらが領地警備に駆り出したそうだ。後は次の夜会でアシュリー嬢のエスコート役を頼まれた。」
「おお、それは幸先が良いですな。アシュリー侯爵令嬢とも良好な関係を築いておられます。もしかしたら当家とゴルテア侯爵家との婚姻も。」
「いや、まだ安心はできん。一寸先は闇だ、どこで落とし穴があるか分からないからな。」
「旦那様の仰る通りにございます。それでご依頼のお返事は?」
「勿論、了承するとな。アシュリー嬢とも親密な関係を築く事ができたしな。」
「畏まりました。」
それから数日が経ち、宮殿にて夜会が開かれた。アルクエイドはエスコート役としてアシュリーと共に参加した。初参加の時は緊張していたアシュリーも2回目ともなればそれほど緊張はしていなかった
「アシュリー嬢、今日は大丈夫そうですか?」
「はい、最初は緊張しましたが今はそれほどは緊張していません。」
「それは良かった、だが油断は禁物。エスコート役としてアシュリー嬢を御支えしましょう。」
「ありがとうございます、閣下。」
アシュリーもアルクエイドの事を厚く信頼しており、今回の夜会もアシュリー自身が父に頼んでアルクエイドをエスコート役にして貰ったのは内緒である
「これはこれは我が友、アルクエイド殿、それにアシュリー嬢。」
「ごきげんよう、ウルスラ殿。」
「ごきげんよう、モンテネグロ伯爵閣下。」
「ごきげんよう、ロザリオ伯爵閣下。」
「ごきげんよう、モンテネグロ夫人。アシュリー嬢、この御方はウルスラ殿の御夫人です。」
「はい、御初に御目にかかります。私はゴルテア侯爵家令嬢、アシュリー・ゴルテアと申します。以後、お見知り置きのほどを。」
「これは御丁寧な挨拶、畏れ入ります。私はウルスラ・モンテネグロ伯爵が妻のナビエ・モンテネグロと申します。」
アルクエイドとアシュリーに声をかけてきたのはウルスラ・モンテネグロ伯爵、そしてウルスラの妻、ナビエ・モンテネグロ伯爵夫人【年齢27歳、身長165cm、赤髪ロング、碧眼、細身、美乳、彫りの深い端整な顔立ちの美人】である
「モンテネグロ伯爵夫人、御子息の御誕生、おめでとうございます。」
「ありがとうございます、ロザリオ伯爵閣下。」
「あの閣下、御子息とは?」
「あぁ、実は先日の夜会に御夫人は身重のため御欠席されたのです。」
「そうだったのですか。御夫人、御子息御誕生おめでとうございます。」
「ありがとうございます。」
アシュリーとナビエ伯爵夫人、女同士で談笑をする傍らでウルスラは例の噂を確かめるべくアルクエイドに尋ねた
「それよりも聞いたよ、貴殿が娼館に行かなくなったそうだね。」
「えぇ。」
「どういう風の吹き回しだい?女遊びは卒業したのかい?」
「まあ、そんなところだ。」
アルクエイドの口から【女遊びは卒業】という発言にウルスラは驚くと共に社交界でのアルクエイドの現状を話し始めた
「社交界ではその話で持ちきりだよ。貴殿が女遊びをしなくなった事で何かの予兆ではないのかと妙な勘繰りをする輩がいっぱいいてね。」
「別に他意はございません。商談を行う場所を他の場所へ変えただけの事。」
「・・・・もしかして、アシュリー嬢との婚姻が関係しているのかい?」
「・・・・それもあるな。」
「やはり、そうか。貴殿とアシュリー嬢が仲睦まじくお出掛けしているのを目撃した貴族の方々が一杯いてね。私の方にもアレコレ聞く始末だよ。」
「ウルスラ殿にはご迷惑をおかけしたな。」
「いいえ、単に野次馬根性で聞きに来る輩ばかりなので適当に流してますよ。」
「ははは、ウルスラ殿らしい。」
一方、アシュリーとナビエ伯爵夫人はというと、話の話題はアルクエイドとアシュリーの婚姻についてである
「アシュリー嬢はロザリオ伯爵閣下の事をどう思っていますの?」
「は、はい。最初は婚姻を望んでおりませんでしたが今はそうではありません。」
「ふふふ、アシュリー嬢はロザリオ伯爵閣下の事が御好きなのですね。」
ナビエ伯爵夫人がそう言うとアシュリーは頬を赤く染め、俯いた。初々しい反応を見せるアシュリーにナビエ伯爵夫人がある事を教えた
「アシュリー嬢、ロザリオ伯爵閣下が娼館に行かなくなった事を御存知ですか?」
「えっ、そうなのですか!」
「えぇ、社交界ではその話題で持ちきりですわ。勿論、アシュリー嬢がロザリオ伯爵閣下と仲睦まじくお出掛けしている事も話題になっていますわ。」
「ぞ、存じませんでした。」
「ロザリオ伯爵閣下はガルグマク王国有数の資産家、ロザリオ伯爵家も由緒正しい御家柄、話題にならないわけがございません。」
「そ、そうなのですか。」
「アシュリー嬢がロザリオ伯爵閣下を変えたのではないかと夫と私は思っていますわ。」
「私が?」
「えぇ、ロザリオ伯爵閣下は先の婚約者の一件以来、結婚を避け、ずっと独身生活を送って参りました。アシュリー嬢と出会ってからはあの御方は一歩、前へ進む事ができたと私は思いますわ。」
アシュリーは未だに信じられなかった。自分がアルクエイドを変えたというと実感がなかったのである。寧ろ自分がアルクエイドと出会った事で変わったと思っていたのである
「それでアシュリー嬢はロザリオ伯爵閣下といずれは婚姻を結ぶのですか?」
「・・・・はい。」
アシュリーは頬を赤く染めながらそう答えた。それを聞いたナビエ伯爵夫人は「ふふふ」とほほ笑んだ。するとそこへアルクエイドとウルスラが駆け付けた
「ナビエ、アシュリー嬢。」
「お待たせして申し訳ない。」
「いいえ、アシュリー嬢と有意義なお話ができましたわ。」
「はい、ナビエ夫人と女同士の話に花を咲かせておりましたわ。」
「そうか、それは良かった。」
こうして夜会は何事もなく無事に終わりを告げるのであった
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