　どう見ても犬なのに、みんなはこれを犬ではないと言う。

　不思議に思い、みんなに訊いてみた。

「どうして、これが犬ではないと思うの？」

「だって、彼がそう言うから」

「だって、彼女がそう言うから」

「だって、両親がそう言うから」

「だって、孫がそう言うから」

「だって、先生が……」

　少しずつ噂のもとをたどり、ついに私は出所を突きとめた。

　どう見ても犬のそれが、噂の出所だったのだ。

　私はそれに、直接訊いてみる。

「君は、なんで自分を犬ではないと思うの？」

　すると、それはこう答えた。

「だって、あなたがそう言うから」

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